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2008年07月10日

■自著を語る■福岡伸一「生物と無生物のあいだ」=【食べるってどういう事?】

【食べるってどういう事?】・・・こんな単純な疑問を野菜やお米を作りながらずっと考えている、まるいちです。
自給率の算出には「カロリー」=「熱量」を使っていますが、食べるって事は車にガソリンを入れるように人体に「熱量」の素を供給する、動いたり生体反応をするためにはエネルギーが必要で、その為に食べる、と言ったような単純な事なんでしょうか?
【食べる】って事は、人間を機械や化学反応の塊りのようにモデル化しても見えてこないように思います。
それで、この事について言及している本と作者の言を紹介します。
JACom ■自著を語る■  福岡伸一 青山学院大学化学・生命化学科教授

 生物と無生物のあいだ (講談社、2007年5月20日、777円)
 福岡伸一 青山学院大学化学・生命科学科教授 
 この本の出発点は、なぜ、私が生命という現象に興味を持つに至ったのかというところから始まります。私は昆虫少年でした。蝶や甲虫を追い、その美しさや精妙さに魅了されました。
 その延長で、私は京都大学の農学部に入学しました。大学に入りたての頃、生物学の時間に教師が問うた言葉を思い出します。人は瞬時に、生物と無生物を見分けるけれど、それは生物の何を見ているのでしょうか。そもそも、生命とは何か、皆さんは定義できますか?
◆生命は「機械」か?
 私はかなりわくわくして続きに期待したが、結局、その講義では明確な答えは示されなかった。生命が持ついくつかの特徴――たとえば、細胞からなる、DNAを持つ、呼吸によってエネルギーを作る――、などを列挙するうちに夏休みが来て日程は終わってしまったのです。ファーブルや今西錦司のようなナチュラリストを夢見ていた私も、大学に入るともはや純朴な昆虫少年でいることは許されませんでした。ちょうど分子生物学の大波が押し寄せてきたときです。生命の秘密はミクロの世界にこそある。私もまた時代の熱に逆らうことはできませんでした。
 遺伝子を中心教義とする分子生物学から見ると、生命は端的に次のように定義されます。生命とは自己複製を行う分子機械である、と。つまり、生命体とはミクロなパーツからなる精巧なプラモデル、すなわち分子機械に過ぎないとなるわけです。デカルトが考えた機械的生命観の究極的な姿です。生命体が分子機械であるならば、それを巧みに操作することによって生命体を作り変え、改良・改変、あるいは修復することが可能なはずだ。遺伝子組み換えや臓器移植・生命操作を是とする考え方の通奏低音には、この機械論的生命観があります。あるいは、狂牛病のような新しいタイプの病気も、効率性だけから食物連鎖を組み換えて、草食動物に肉食を強いたことに端を発しています。
 果たして、この考え方は正しいのでしょうか。生命は単なる分子機械なのでしょうか。私たちが海辺で、貝と石を見て、生物と無生物のあいだを見分けるのは、それが自己複製する分子機械かどうかを判別しているのでしょうか。
◆食べることの意味問う
 私は一人のユダヤ人科学者を思い出します。彼は、DNA構造の発見を知ることなく、自ら命を絶ってこの世を去りました。その名はルドルフ・シェーンハイマー。彼は、生命が「動的な平衡状態」にあることを最初に示した科学者でした。私たちが食べた分子は、瞬く間に全身に散らばり、一時、緩くそこにとどまり、次の瞬間には身体から抜け出て行くことを証明したのです。つまり私たち生命体の身体はプラモデルのような静的なパーツから成り立っている分子機械ではなく、パーツ自体のダイナミックな流れの中に成り立っている。そのことを最初に示した科学者でした。私は先ごろ、シェーンハイマーの発見を手がかりに、私たちが食べ続けることの意味と生命のあり方を、狂牛病禍が問いかけた問題と対置しながら論考してみました(『もう牛を食べても安心か』文春新書)。この「動的平衡」論をもとに、生物を無生物から区別するものは何かを、私たちの生命観の変遷とともに考察したのが本書です。動的平衡論に基づく有機的な生命観という、古くて新しいパラダイムのルネサンス(復興)を論じたものです。
 現時点でわたくしが考えるところの”生命とは何か”について、可能な限りのベストを尽くして書きました。生命と日々対峙されている農業を営む方々にこそ是非読んでいただきたいと思います。

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もう一つ、著者である福岡伸一さんのエッセイを紹介します。
NPO法人エコロジー・カフェ エッセイ 環境と生命の動的な関係

環境と生命の動的な関係寄稿論文:2005年9月8日
福岡伸一(分子生物学者)
 環境の問題を考えるとき、私たちヒトは決して環境と 対峙しているわけではありません。むしろヒトを含めて生命体はすべて環境の一部として大きな平衡系の中にあります。それを実感としてつかむために、ひとつ質問をさせてください。それは、「なぜ私たちは食べつづけなければならないのでしょう?」という問いです。この素朴な疑問に正確に答えるのは意外と難しいのです。私たちの身体は自動車のエンジンのようなものであり、それを動かすためにはエネルギー源が必要だから、という解答はどうでしょうか。間違ってはいませんが、生命現象のもつ別の一面、ある意味ではより一層重要な特徴を見落としています。実際、私たちは、炭水化物などのカロリー源だけでは生きていくことができません。必ず、タンパク質を食べ続けなければならないのです。タンパク質にあって、炭水化物や脂質には含まれていないものはなんでしょうか。それは窒素という元素です。ヒトを含むすべての生物は、カロリー源、つまり炭素と酸素と水素からなる食料の他に、かならず窒素を含む食料、すなわちタンパク質を必要とします。食べ物をカロリーベースだけから捉える考え方は、一面的すぎるのです。では窒素は私たちの身体の中で何を行っているのでしょうか。それは“情報”の構築に使われているのです。
 今からほんの60年ほど前、生命科学上極めて重大な発見がありました。ルドルフ・シェーンハイマーという亡命ユダヤ人科学者が、窒素原子に“目印”を付けるというアイデアを得ました。同位体標識法という方法です。これを使えば窒素原子がどこで何をしているか、ずっと追跡することができるようになります。彼は目印をつけた窒素原子でアミノ酸を作り、実験用ネズミに食べさせてみました。そして時間を追って、それらがどこに行くかを追跡してみたのです。食べた標識アミノ酸は瞬く間に全身に散らばり、その半分以上が、脳、筋肉、消化管、肝臓、膵臓、脾臓、血液などありとあらゆる臓器や組織を構成するタンパク質の一部となっていました。しかし、標識アミノ酸はそこにとどまることなくしばらくすると分解されて体外に排出されていったのです。つまり私たちの細胞を構成しているタンパク質は、アミノ酸のレベルで見ると、絶え間のない分解と再構成を繰り返しているということです。自動車のエンジンにたとえられた私たち生命体は、エンジンのようにパーツが機械的に組み合わさってできているのではなく、エンジンそのものがミクロなレベルで絶え間なく更新されている、そのようなダイナミズムの中にあるのです。アミノ酸は20種類あり、じゅず玉のように連なってタンパク質を構成します。ちょうど、アミノ酸は、A,B,C,D・・といった個々のアルファベット、たんぱく質はそれらの組合せからなる言葉にあたります。アルファベットとしてのアミノ酸は、身体に取り込まれると新しいタンパク質を構成すること、つまり新しい言葉を作り出すのに使われます。複数のたんぱく質は組み合わさって、さらに高次の文章、すわなち“情報”を構築します。一方で、タンパク質は常に分解されています。一定の情報をたもちつつ、更新していくこと。これが生命体の環境への適応を保証するシステムであり、生きていることそのものでもあるのです。私たちはこの流れを維持するために、食べつづけなければならないのです。シェーンハイマーは、この生命の特異的なありように「動的な平衡」という素敵な名前をつけました。
 さて、私たちの食べ物はどこから来るでしょうか。それは他の生命体の一部だったものが食べ物となります。元の持ち主がもっていた情報を、私たちは消化システムによっていったんアルファベットのレベルにまで解体してから、自分自身の文法にしたがって再構築していくわけです。つまり、環境を形作っている分子群は、私たちの体の内部でつかの間、秩序を形成し、また次の瞬間、環境へと戻っていくわけです。つまり、環境は私たち生命体を通り抜けているのです。私が最初に「生命体はすべて環境の一部として大きな平衡系の中にある」といったのは実はこういうことだったのです。
以上。

★生命の原理については、様々な情報が飛び交っていて、いつの間にか生命体を機械や化学反応だけで捉えてしまっているように思います。
 【食べる】と言うキイワードで生命の原理や摂理をもう少し考えてみたいと思っています。
おわり。。。

投稿者 nara1958 : 2008年07月10日 List   

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