■自著を語る■福岡伸一「生物と無生物のあいだ」=【食べるってどういう事?】 |
メイン
2008年07月11日
「顔の見える関係」を超えて「顔の見えない信頼関係」を ~「食の問題も超市場論」の実現事例
「インターネットに見る農の可能性」で meguさんが紹介してくれた、山口県の(有)船方総合農場の事例は、
以前『るいネット』 (リンク)の投稿で示された切口の具体事例だと思います。
その意味で、新しい「農」の可能性を感じさせてくれるものでした。
mimiさん >顔の見える関係がやはり理想なのかも知れませんね~♪。
なので今回は 『るいネット』から、その投稿を紹介しようと思います。 😀
これは、「顔の見える関係」をもう一歩超え、「顔のみえない信頼関係」を現代社会に築いていくヒントになるものだと思います。
食の問題も超市場論
>幻想価値を土台にした市場の評価軸を根底から超える、新たな評価軸を創る事。人々の意識を幻想共認から事実共認へと移行させていく仕組みを創る事。それが結果的に安全性が確保される方法へと繋がっていく(リンク)
近年の食の質に対する関心の高まりに対応して、店先に並ぶ食品への成分表示や生産者表示も増えてきたようだ。しかし、それだけで安全な食の確保ができるとはどうも感じられない。
『「各個人レベルが求める安全性」からは、何も出てこない。』(リンク)にあるように、難しい専門用語や数字の並ぶ成分表示を見ても容易に判断できず、できたとしても本当にそれが事実かどうかは検証しようがない。生産者表示も、特に都市住民には殆ど記憶に残らない“見知らぬ人”に過ぎない。生産者に対しては一定の責任圧力にはなるとは思うが、買う側はこれでOKという確信は持てない。
続きに行く前に、応援のクリック お願いします。いつもありがとう☆
そこには、現在の私益確保第一を根本原理として高度にシステム化された市場の中では疑い出せば切りがない、という問題がある。そこから、より直接的な信頼関係を重視した「顔の見える農業」や「地産地消」という発想も出てくるのだが、やはり何か足りない。それは、現実には既に巨大市場に組み込まれている食の世界を根本から変えられる感じがしないからではないだろうか。
> 潜在的な新しい可能性が顕在化して新しい現実と成るためには、古い殻を内側からこじ開け、私権の現実の中を突き抜けてゆく必要がある。(リンク)
食というのは、「美味しさ」といった感覚や農のイメージから、素朴な実感に依拠した解決策に向かいがちだが、実は環境問題と同様、感覚や対面を超えた観念の位相で捉えなければならない課題であり、そのためには、食に対する期待の中身も、その評価軸も評価システムも、顔が見える関係を超えて機能すべく観念化されることが必要で、それが事実共認というものなのではないだろうか。
その意味では、成分表示や生産者表示はあながち外れてはいない。足りないものはおそらく、それが今のところ生産者発の仕組みでしかない、という点なのだろう。食の期待や評価を形成する場が、生産者、消費者という立場を越えて(或いは食という領域も超えて)成立することで初めて、「顔の見えない信頼」が成立する のではないだろうか。
度重なる食にまつわる不祥事から、消費者の食⇒農に対する関心が高まり、「安心したい」という想いから“少しでも安全なもの”を求める動きが現れました。
その想いに応える形で、スーパー・百貨店では「顔の見える野菜」や「地産地消」という言葉を目にするようになったのですが、「事実」かどうか確証がない以上、この新しい動きも 私益追求しか興味がない生産者や 巨大市場を支える為の 幻想価値になりかねない。
(有)船方総合農場の取り組みからは、「古い殻を内側からこじ開け、私権の現実の中を突き抜けてゆく」 2つの可能性が感じられます
1つは、これまでの生産者発どまりの仕組みを、「生産者、消費者という立場を越えて(或いは食という領域も超えて)成立」させている点です。
>消費者の方に生産の現場を見ていただき、体験してもらうという交流事業を先に立ち上げ、消費者の方からの「信頼」と「評価」を得て
【船方農場グループ経営理念】からは、食の生産と消費を超えて、皆が活力を持って生きれる場所=社会そのものをつくる取り組み というのが伝わってきます。
1. 農場を私物化することなく、農業基盤のない青年でも、農村で生き残れる手段を提供する場であり続けること。(創業の志)
1. 農業への思い、夢を実現しようと努力するなかで、自分を発見する場となってもらいたい。(継承者へ伝えたい価値観)
1. グループの法人は、他のどのグループ企業がなくなっても存在できないことを認識した上で、最終的な経営判断では、農場という生産の現場を守るという使命を忘れないこと。(継承者へ伝えたい価値観)
経営理念という形で、「顔が見える関係を超えて機能すべく観念化」している点もポイントだと思います。
もう1つは、お金の意味を変質させた点です。
>農業への取り組みに共感を得た消費者により、「みるくたうん」は一億円以上の資本金を、一般公募によって調達することができた
>「信頼」と「評価」を得てから、消費者に直接販売する部門をつくっていった
これまでお金は、何かモノを買ったり、サービスを受けたりする対価としてのお金の意味(役割)しかなかった。あくまで価値量=価格を表すモノサシとして機能してきた。(リンク)
共感を得た消費者からの出資は、これまでの取引関係から、信認関係(期待と応合の関係)への転換を感じさせるものです。
「安心」「安全」を求めるだけの消費者の枠を越え、生産者との距離が限りなくゼロに近くし、お金を用いて「食に対する期待の中身も、その評価軸も評価システムも」構築していく仕組みを作ったと言えます。
こうした(有)船方総合農場の活動を知ることで、 「それが結果的に安全性が確保される方法へと繋がっていく」という意味を具体的にイメージすることが出来ました。
「顔のみえない信頼関係」を今に築く、新しい「農」のかたち だと思います。
投稿者 pochi : 2008年07月11日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2008/07/598.html/trackback