2022年10月27日

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【これからの林業を考える】シリーズ6~ドイツとスウェーデンと日本の林業の違い⇒「地元の人々とつながった山守のような存在」、「自然の摂理に則った林業思想」~

これまでは日本における林業について整理してきました。
次は、世界の林業と日本の林業の違いについて見ていきたいと思います。

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今回は世界でも最先端の林業を実践していると言われている、林業大国のドイツとスウェーデンを中心に見ていきたいと思います。

◆日本における山守の役割を担うドイツの森林官

ドイツの森林面積は、日本の2500万haに対して半分の森林面積しか存在しません。
しかし、同国における木材自給率は100%となっており、日本の輸入率が過半を超えるのに対して、林業が産業として成り立っているといえます。

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まず、ドイツにおける林業には、植林という概念が存在しません。
「天然更新」を基本としており、日本のように人工林をつくり、伐採期がきたら皆伐を行うような林業は行われていません。

ドイツでは18~19世紀に燃料として多くの樹木が伐採されたため、日本と同じように森林が荒廃してしまった歴史があります。
その反省から、ドイツは森林の伐採は成長した樹木だけを収穫する「循環型の林業」を行っています。

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ドイツは、緩やかな土地ということもあり、大型車両が入ることができる林道が整備され、高性能の重機を用いて林業を行っている点がクローズアップされることも多いですが、林業の基本思想自体が日本とは大きく異なっています。

 

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また、日本の林業との大きな違いは、ドイツは「森林官(フォレスター)」と呼ばれる森林を管理する人が存在することです。
森林官は2000haごとに一人配置され、医者の次に子どもたちに人気の職業となっています。

彼らは、森林の整備の指導や助言を行うだけでなく、木材の販売価格の交渉も担い、森林の維持や、その地域の林業がどうしたら産業として成立するのかを日々追求し、地域の森林を支えています。

それゆえに、地元の人々との信頼関係が大切になり、彼らは赴任して最初の5年は地域の人たちとの関係づくりに注力し、地域でも頼りにされる存在です。

現在でも品質の高い木材を提供している吉野にも山守が存在し、品質の高い木材を救急していますが、日本では一部のみです。
ドイツでは森林官は各森林に配置されており、日本の半分しかない森林を大切に育て、産業を維持しています。

 

◆環境を遺す、スウェーデンの林業

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スウェーデンにおける産業で最も収入が多いのは林業です。
国家的に林業に取り組んでいるのかと思いきや、国が行っているのは森林の多様性を維持する「保持林業」が中心です。

日本のようにスギやヒノキの一斉造林を行うのではなく、周辺の樹木環境に合わせて樹木を育成し、環境を保全していっています。

そのため、スウェーデンの森林法では、「環境と生産は等しく重要で、森林は生物多様性を維持しながら持続可能な財の収穫をもたらすように管理すべき国家資源である」と明記されています。

その地域の気候特性や、環境など森林の置かれた状況に応じて、保全林業のあり方も異なります。
スウェーデンでは、地域ごとに植林する樹木、残す樹木、残し方を変えています。

日本の林業との大きな違いは、「地域の特性に合わせた森林環境づくり」、そして「長い年月を掛けて森林を育んでいく」という思想の違いです。

森林を産業として見るのではなく、どうしたら自然の摂理に則った森林をつくっていけるのかを日々追求していることです。

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またドイツと異なり、森林官は存在しませんが、民間の企業が森林の管理から木材の販売まで行っています。
国としては自然の摂理に則った林業を推進しつつ、民間企業の力を使って林業のIT化を進め、高効率な林業を展開しています。

スウェーデンは製材加工も進んでおり、日本における工場規模の4倍ほどの規模の工場が存在し、かつ製材スピード、歩留まり(無駄のない製材)を日々追求し、改良していっています。

森林の多様性を維持するだけでなく、産業として成立させるために「森林の維持管理」から販売までも含めて民間企業が追求して技術を発展させていく、そこが日本の林業との大きな違いだといえます。

 

◆日本の林業と世界の林業

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今回は、ドイツとスウェーデンの林業に焦点を当てて、日本の林業の違いを見てきました。
その大きな違いは「地元の人々とつながった山守のような存在」、そして「自然の摂理に則った林業思想」です。

また思想だけでなく、産業として実現していくための存在(森林官・民間企業)が存在しています。
今後は、海外の事例も比較しながら、いまだに品質の高い林業を行っている吉野をはじめとした、地方の林業を見ていきたいと思います。

 

【参考ページ】
世界の林業国の1つ、ドイツと日本の林業を比較⁉日本よりも少ない森林で日本より多い木材産出量
スウェーデンの林業――持続的、高収益な産業としての林業――
木材販売のための協同~ドイツの林業連合~
森林を守る「ドイツに学ぶ」
ヤマモリジャーナル ドイツと日本 林業事情の違い
スウェーデンの林業-持続的・高収益な産業としての林業-

投稿者 tiba-t : 2022年10月27日