2022年6月2日

2022年06月02日

『稼ぐ農』シリーズ10 経営する力って何?

さて、いよいよ稼ぐ農も最終回です。これまでの追求で見えてきたのが農業で稼ぐとは組織作りであり、経営する力であるということのようです。農業を生業として産業の中で勝ち続けていくには様々な力が必要であることは明らかですが、中でも経営する力、商売をする力が重要になります。

ただ、経営と言ってもいろんな視点があり、今回はそれを大きく4つに分けて考えてみたいと思います。

 

  • 常に挑戦者であれ!

これまで様々な農業の成功者、稼いでいる人たちの事例を見てきましたが、彼らはいずれも生き生きと眼の前の課題に対峙しています。自ら新しい可能性を切り開き、トライしていく。そこにはサラリーマンのようなぶら下がりや使われるだけの労働者という意識は微塵もありません。経営をするということは未知の課題の連続でもあり、新しいことへの挑戦の連続だと思います。また、それを楽しめる事も経営者としての重要な素養の一つです。

『稼ぐ農』シリーズ1~稼ぐ力の基盤は何か?

『稼ぐ農』シリーズ3~「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」から観る稼ぐ力

『稼ぐ農』シリーズ6~自分たちでつくって、運んで、売る。が創りだす価値

 

  • 足元の地道な課題こそ稼ぐ原点

農業が突き詰めればいかに効率よく品質の高い生産を上げていくかに尽きるのですが、そのためには細かい日常の課題を丁寧にこなしていくことが必要です。どうやって効率を上げるか、ミスを減らすか、どうやって経費を減らすか、どうやってチームワークを作るか、そういった日々の課題が毎日積み重なっていきます。それら足元の地道な課題ですが、経営する上ではアイデアと同時にそれを実現していくための仕組み、工夫を継続していくことが大切になっていきます。多くの農業企業や個人の農家でさえ、ここの壁を抱えており、決して軽く扱えない課題です。

そこに目を付けたのが阿部梨園の阿部さん。阿部梨園の知恵袋は300のそういった工夫が詰まっており、HP、書籍、講演で多くの同業者の共感を得ています。https://tips.abe-nashien.com/

『稼ぐ農』シリーズ2~現場の緻密な追求と評価こそ「稼ぐ農」の基盤になる~

 

  • 数字で見える化する

農業経営はどんぶり勘定と言われています。どれだけの人工を投じてどれだけ生産したか、それを細かく管理して見える化している企業は意外と少ないと思います。

さらにどこに無駄な経費がかかっているか、どの部門やチームが効率が悪いか、また生産効率をよくするにはどういった工夫をするか、販売単価はどこまでが適正かなど、先月から同数字が変わったか、すべての課題を数字化し、常にみんなで共有していく。環境に影響される農業だから数字では表せないという感覚を捨て、全て数字化して客観的に評価していく。自然相手だからこそ逆に数字化していく、だから手に負えない自然に何とか対峙できる。今月はどれだけ稼いだかがみんなにわかる、そういった仕組みが農業の経営にこそ不可欠です。

 

  • 全員経営が農業には向いている

農業にふさわしい経営者とはなんだろうか?企業が農業を担う時に一番壁になるのが、雇用と従業員という枠組みです。
賃金、時間外労働、退職、教育と様々な人にまつわる課題が横たわっています。
また、社長ー部長―課長ー係長―・・・農業の企業にはそぐわない。

しかし、誰かが会社担い、リードしていかなければ立ち行かないのも事実です。高い意識で組織を作り、リードしていく人は必要不可欠ですが、それだけでは回りません。日々の生産は経営者も従業員も立場を超えて自ら担い、動き、生産から販売まで担う。自ら担うからこそ、様々なアイデアも挑戦も生まれていく。農業はどこまでいってもプレイングマネージャーです。農業を企業でやっている会社はどのように働く仲間を継続させ、さらに同志にしていくかが難しく、いろんな方法で取り組んでおられます。

例えば全員が経営者になり、全員で経営課題と現業課題を担う仕組みをとっているのがシリーズ6で紹介した類農園です。またシリーズ2で紹介したサラダボウルも同様に雇用―労働といった壁を「カイゼン」というシステムで突破していこうとされています。

これらの事例を見ると、経営する=稼ぐ=組織を作るという事になると思います。どうやって農業企業の組織を作っていくか、それが稼ぐ事であり、稼ぐこととは自分たちが生きていく全員経営者の共同体を作っていく事と同義だと思います。

そういう意味で(1)に戻りますが、稼ぐ農=集団をつくり社会に開いていく挑戦者であれ!ということだと思います。

『稼ぐ農』シリーズ6~自分たちでつくって、運んで、売る。が創りだす価値

『稼ぐ農』シリーズ2~現場の緻密な追求と評価こそ「稼ぐ農」の基盤になる~

投稿者 tano : 2022年06月02日  

2022年06月02日

【コラム】類学舎「農業研修プログラム」紹介①:おしゃべりばかりして、まじめに課題に向かわない小学生。「楽しみたい」気持ちの背後にある本当の期待は?

全日制の類学舎では、答えのない課題を仲間と追求する「探求」、現実の圧力の中でどうする?を考える「仕事」を毎日のカリキュラムに取り入れ、社会で生き抜く力を磨いています。

その類学舎が、この春から新たに取り入れたカリキュラムが、毎月1回1週間、類農園に泊まり込みで行う「農業研修プログラム」です。

仲間と一緒に生活し課題に立ち向かうことで、農業技術の習得に留まらず、生活習慣や、ものごとの捉え方、周りへの感謝の気持ちを育むなど、人間性の育成もめざしています。

 

今月の最初のチームは高校生2人小学生4人の男子6人。農業研修プログラムも2ラウンド目に入ったので、高校生2人には「チームのまとめ役」を期待しました、期待を受けた高校生は意気込んでいたのですが、、、、

高校生は課題意識が強いので、時間や成果を意識して業務に取り組めますが、小学生は気を抜くとお喋りし始めて手が止まってしまい勝ちです。それに対して高校生は、チームとして成果を出そうと注意をするものの、なかなか思うようにいきません。
「どうしたら小学生がまじめに課題に取り組むようになるの?」
高校生は、いろんな人にアドバイスをもらいに行き、そこで得た答えは次のようなことでした。

「『おしゃべりしないで課題に取り組め』では、うまくいかないよ。小学生がおしゃべりするのは、なぜだと思う?
楽しみたいから。もっと正確に言うと充足したいから。課題意識で取り組む高校生とは違って、小学生は潜在思念に素直なので、充足できるかどうかにとても敏感なんだ。

おしゃべりして成果目標が達成できなかったら、本当は充足できていないんだよ。小学生が充足できているかどうか、小学生が何を考えているのか、もっと親身になって話を聞いてごらん。」

おしゃべりすることは悪いことではなく、むしろ一体感を作るのに必要なことです。どうすればみんなが充足できるのか、みんなは何を求めているのでしょう?
そこで、「農業研修プログラムに参加に際して、どういう期待感やわくわく感を持って参加したのか」をみんなに聞いてみました。
そこで出てきたのは、

・(初回参加でダメだったところを、今回で)もっと成長したい
・もっと仕事に向き合えるようになりたい
・作業を通じて積み重ねや工夫をして、成果を出せる頭の使い方を身に付けたい
・去年の合宿で成長したことを生かせるようになりたい
・プログラムを学んで、もっと人の役に立ちたい
・農業で生きていくのも良いなと思って参加した

というものでした。
「楽しみたい」という気持ちの背後に共通してあるのは、「成長したい」「みんなの役に立ちたい」という想いです。小学生だけでなく、高校生も社会人も本当に求めているものは同じだと思います。
その想いに応えることで、みんなが充足し、仕事の成果も上がります。類学舎生同士だけでなく、類農園の社員・パートさん、ご飯を持ってきてくれる飲食店さん、地域の方々や生産者さんなど、農業研修プログラムに関わる全員が充足し、全員の活力を上げることが新たな目標になりました。


来月は、農業研修プログラムも3ラウンド目に入ります。来月も、子供たちの成長ぶり、あるいは、新たにぶつかった壁など、類学舎生の様子をお伝えしますので、お楽しみに。

投稿者 matusige : 2022年06月02日