2008年11月5日

2008年11月05日

図で見る 世界の穀物事情 世界は食料危機を克服できるのか? Food Crisis Map 08(2)

図で見る 世界の穀物事情 世界は食料危機を克服できるのか? Food Crisis Map 08(1)の続きです。
各国の食糧事情が良くわかります。
JAcoml
の「農業協同組合新聞創刊80周年記念特集 食料安保への挑戦 」の中の記事「図で見る 世界の穀物事情 世界は食料危機を克服できるのか? Food Crisis Map 08」からの引用です。

主要国の農業生産動向
●アメリカ
記録的収益の穀物農家、畜産農家は飼料高騰で苦境に
 アメリカは穀物・大豆両方の最大の生産国かつ輸出国である。とくにその輸出量は他の輸出国をはるかに凌駕しており、世界の3分の1(トウモロコシは2分の1)を占めている。主な輸出先は中国、日本、メキシコ、台湾であり、これら4か国で穀物輸出の約2分の1、大豆輸出の約7割を占める。ただし、生産量に対する輸出の割合は2~3割台であり、主たる供給先は飼料向けをはじめとする国内消費である。
 この輸出は、恵まれた土地資源と大規模農業経営、そして補助金によって支えられている。とくに第二次大戦以降は、余剰生産能力のはけ口として、対外食糧援助や輸出補助金によって世界に市場を拡大した。70年代以降は農家の生産費を直接支払い等の補助金により補填しながら、穀物価格を国際競争力のある低水準に維持している。こうした政策は安価な飼料の供給により国内の畜産にも好影響を与えてきた。
 しかし、05年以降、バイオ燃料の振興策により需給構造は一変している。バイオエタノール原料向けのトウモロコシ需要が急拡大し、07年にはアメリカのトウモロコシ輸出量を上回り、かつ世界における穀物消費量増加への寄与度は4割に達した。トウモロコシへの作付転換により他の作物の需給も引き締められた。くわえて、アメリカには穀物の主要な先物取引所があり、そこでの投機資金の流入も相まって世界的な食料価格の高騰につながった。穀物生産農家は記録的な利益を上げる一方、畜産経営は飼料の高騰により厳しい状況にある。(平澤)
●EU
穀物価格高騰に対応して関税と生産調整を停止
 EUは、07年にルーマニアとブルガリアが加わって加盟国は27カ国となり、域内の人口は4.9億人になっている。EU各国の農業構造は立地条件や歴史的経緯などのため多様であり、イギリス(57ha)、フランス(47ha)などは経営規模が大きいが、イタリア(7ha)やポーランド(6ha)などは比較的小規模である。
 EUは、域内の人口を支えるため共通農業政策(CAP)のもと価格支持、関税、直接支払いなどの手厚い農業保護を行なっている。1970年代以降、CAPによる価格支持によってEUの穀物生産量は増大したが、それが生産過剰と財政悪化をもたらしたため、92年のマクシャリー改革によって価格支持水準の引き下げと直接支払い導入を行ない、その後、EUの穀物の生産量はやや減少し輸出量も減少した。しかし、EUの食料自給率は高く、穀物自給率は、イギリス99%、フランス173%、ドイツ101%である。
 07年の穀物生産量は、小麦1億2100万トン、大麦5800万トン、トウモロコシ5100万トンであり、EUは小麦、大麦を輸出し、トウモロコシは一部輸入に依存している。ナタネ(油糧種子)の生産量は増加しており、07年の生産量は1800万トンで、その一部はバイオディーゼルの原料となっている。
 近年の穀物価格高騰に対応して、EUは、(1)穀物の輸入関税の一時停止、(2)生産調整の停止、(3)バイオディーゼル原料生産に対する補助金の廃止、などの措置をとっている。(清水)
●ブラジル
穀物メジャーの参入で輸出伸ばす
 食料の安定供給が改めて世界の課題となるなかで、農産物の増産余力を持つ国としてブラジルが注目されている。ブラジルはコーヒー、たばこなど伝統的商業作物の輸出大国だったが、2000年以降、大豆、食肉など基礎的食料の生産・輸出を急増させ、05年には農産物輸出で世界のトップ5に入り、また農産物の純輸出額ではすでに02年に世界のトップに立った。
 農業の対外開放に伴い米欧の穀物メジャーが参入し、それまで資金不足で増産が難しかった農家に資金を貸し付けるとともに国際市場への輸出ルートを提供したことで大豆等の生産が急激に伸びた。同時に、ブラジル中部に広がる未開拓のセラード地域の開発が、日本の協力と農業の技術進歩の成果で進んだことも増産の要因となった。
 大豆の最大の輸出先は、まさに穀物メジャーの市場開拓により輸入を急増させた中国であり、年間約1000万トンとなる。穀物メジャーはまた大豆をブラジル国内で搾油し、大豆油・大豆粕として輸出する志向も強い。また2006/07年の世界的な小麦不作で欧州の飼料不足が発生し、トウモロコシに大量の輸出需要が生まれた。今後は米国で行われているような大豆との輪作体系が普及し、トウモロコシの輸出も拡大する可能性がある。
ブラジルにはセラード地域はじめ米国の農地面積の8割にもあたる未開発の農耕可能地が残っており、今後、世界最大の農産物輸出国に向けてさらに伸びる潜在力がある。日本企業にとってブラジルへの取り組みが重要性を増している。(阮 蔚)
●アルゼンチン
同盟国ブラジルにも食料の禁輸措置
 アルゼンチンの主要穀物等の収穫面積は、トウモロコシ、小麦では過去20年間ほぼ一定であるのに対し、大豆は1996年頃を起点にして遺伝子組み換え種子の普及(98%)をてこに急拡大した。単収水準は、生産技術要因にパンパ地域の肥沃さも加わって高い。担い手は、近年大規模化、会社化している。
 大豆・大豆油の主要輸出先は中国であり、生産増は中国が自給をあきらめ純輸入国に転じたことに呼応している。また、穀物メジャーは、生産、大豆油搾油、輸出の各局面でアルゼンチンの穀物等に大きく関与している。
 小麦は、91年発効の関税同盟MERCOSULの無税特権が利用され、輸出量の約6割が隣国ブラジル向けとなっている。ブラジルから見ると小麦輸入のほぼ全量をアルゼンチンに依存している。
 アルゼンチンは穀物等の輸出制限を、輸出税と輸出登録制度の運用で行っている。近年の世界的な穀物価格高騰に際し、アルゼンチン政府は2008年3月、過剰輸出回避等を目的に大豆の輸出税を41%へ引き上げた。これによって農民スト等で国内が混乱し、7月には元の税率に戻された。
 輸出登録はトウモロコシ(06年11月)、小麦(07年3月)で原則停止となり、08年1月に再開されたが、小麦は4月以降ほとんど輸出されていない。輸出規制は、関税同盟国のブラジル向けにも適用され、自由貿易協定(FTA)が食料安全保障に無力であることの一証左となった。(藤野)

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投稿者 nara1958 : 2008年11月05日  

2008年11月05日

図で見る 世界の穀物事情 世界は食料危機を克服できるのか? Food Crisis Map 08(1)

まるいちです。アメリカ発の金融危機が世界を震撼させていますが、今回は食糧危機の話題です。
このブログでも「食糧危機問題」はたくさん報告されていますが、「図」での説明と世界各国の状況が詳しく記載された記事があったので紹介します。
JAcoml
の「農業協同組合新聞創刊80周年記念特集 食料安保への挑戦 」の中の記事「図で見る 世界の穀物事情 世界は食料危機を克服できるのか? Food Crisis Map 08」からの引用です。

世界の食料は過剰からひっ迫基調へと様変わりし、食料高騰で各地で暴動が起きた。今後も人口増加、新興国の経済発展、気候変動など食料生産と需給には不安定な要因が多い。ここでは(株)農林中金総合研究所の協力で世界の穀物生産と貿易事情を図解してみた。図表からは米国が生産・貿易ともに圧倒的な地位を占め、一方、わが国は米国からの輸入を中心に海外に圧倒的に依存していることが分かる。日本が農業生産力を高め食料安全保障を確立していくことは世界の食料安保への貢献でもある。

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◆貿易量はこんなにわずか!!-大丈夫なのか? 海外依存のニッポン-
 穀物・大豆生産量と国別輸出量の円の大きさを実際の比率で表すと上の図のようになる。世界地図上で輸出量を示した円グラフの大きさで突出している米国も、実際はここで示したようなごく小さなウエートに過ぎない。日本はこの少ない貿易量に大きく依存していることになる。
 なお、本紙では06年にも03年データをもとに主要2国間貿易を図示したが(http://www.jacom.or.jp/tokusyu/toku198/toku198s06101603.html)、それと比較すると、たとえば、ブラジルからドイツへの大豆輸出、米国からエジプトへの小麦輸出などのラインが消え、一方でロシアからエジプトへのラインが出現するなどの変化が見られる。ブラジル、アルゼンチンから中国への大豆輸出ラインはいずれも太くなった。
◆突出する米国の純輸出量
  図1は穀物と大豆の国別の純貿易量だ。米国はすべての品目で輸出量が輸入量を上回り、1億トンと突出した純輸出量であることが分かる。2位のアルゼンチンの2倍以上である。一方、日本は世界最大級の純輸入国だが、中国もトウモロコシは輸出超過だが、大豆輸入の急増で一大輸入国になっていることが示されている。図2は1926年以降の米国のトウモロコシの利用内訳。エタノール仕向が急増し輸出量を抜いている。図3では米国のエタノール利用が近年、世界の穀物消費全体を増やしていることが示されている。
◆いざという時は自国を優先
 食料危機が叫ばれるなか、メキシコではトウモロコシ価格の高騰で主食のトルティーヤが06年8月から07年2月までの半年で70%も高騰し数万人規模のデモや暴動が発生したほか、08年に入ってからはハイチ、フィリピン、インドネシア、バングラデシュなど中米、アジアのほか、エジプト、ソマリア、セネガルなどアフリカ諸国など20か国以上で食料をめぐる抗議運動や暴動が発生。
 暴動の原因は米、麦など各地域の主食価格の高騰だが、その大きな要因となったのが、輸出規制だ。今年8月までに現在は解除している国も含めれば17か国で輸出禁止、輸出税の賦課、輸出枠の設定、輸出許可制などの措置がとられた。自国内での供給確保だけでなく価格安定もめざした措置で「お金があっても買えない」ことが起きることを示した。また、本文でも指摘されているがアルゼンチンも輸出制限しブラジルにも適用。自由貿易協定を結んでいても「いざというときは自国優先」なのである(いずれもデータは農水省)。

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投稿者 nara1958 : 2008年11月05日