| メイン |

2022年10月13日

24節気シリーズ5~大自然の巡りの一部になることで健康になる!

前回までの記事で、日本人は、太陰暦を使って月の動きと同調し、また農業や節句などの行事では24節気を用いて、太陽の動きと同調しながら、その大きなエネルギーと一体で暮らしてきたことがわかりました。人間も大自然や宇宙の一部であり、同じ構造と捉えていたのだと思います。

そのような世界観に同化してうえで、改めて日本人は、24節気をどのように暮らしに取り入れてきたのかを見て行きたいと思います。

今回の記事から3回にわたって、

 

⚫︎大自然の巡りに身体を寄り添わせて体調を整える

⚫︎季節の巡りを楽しむ暮らしや行事

⚫︎自然の摂理に沿った農事

 

の3つの観点から掘り下げます。

1回目の今回は、「大自然の巡りに身体を寄り添わせて体調を整える」について見ていきます。

 

■「健康」の捉え方

 

東洋医学の古典医学書「黄帝内経」は、中国でつくられましたが、日本にも伝わり、現在国宝としても大切に保管されている、医学の指南書です。

その「黄帝内経」には、“人間は自然の気を受けて生きているので、季節の働きに合わせた生活を送ることが大切”と書かれており、各季節の養生法が説かれています。その内容を簡単に紹介してくれている書籍から引用しますと、以下のようになります。

春は発陳といい、冬の間隠れていたものすべてが、芽をだし活動的になり始める時です。心身ともにのびのびと活動的な気持ちで動くことが良く、この春の気に逆らって静かに沈んだ状態でいると病んでしまいます。

夏は蕃秀といい、草木が成長し、万物が茂り、花咲き乱れ、陽気が最高潮に達する時期です。暑くてお体を動かして発汗するようにしましょう。もし陽気を発散しないと体内に熱がこもって病気になってしまいます。

秋は容平といい、万物が実を結ぶ時です。すべてが引き締まり収納される時期で、陽気も体内深くに収納されます。あれもこれもと手を広げ過ぎると陽気を発散して体が弱り、冬に体調を崩します。

冬は平蔵といい、万物が静かに消極的になる時です。決して発散せず、心身ともに活動は控えましょう。発汗したり、酒を飲んで一時的に陽気を多くすると、反動で体を壊します。

村上百代「二十四節気に合わせ心と体を美しく整える」より引用

古来、中国や日本では、宇宙のサイクルから、気の流れや万物の流れを感じ取っていたのでしょう。

その流れに身体を委ね、逆らうことなく過ごすことが、健康法の基本的考え方として捉えられていたようです。

 

■旬のものを食べるということ

 

「上医は未だ病まざるものの病を治し、中医は病まんとするものの病を治し、下医は既に病みたる病を治す」という言葉があります。病は、未だ病まざるものの病=「未病」のうちに整えるというのが、基本的な考え方だったようです。そこで、重視されるのが、「食養生」の考え方。

「食養生」では、旬の食材を食べることで、それぞれの季節に体調を合わせていく意味があります。

いくつか例を紹介します。

・春の山菜

 春は、万物が芽吹き、活動的になります。陽気になり、胃腸も活発になり疲れやすくなります。

 また冬の間に溜まった老廃物を取り除く必要があります。

 山菜の苦みは、余分な熱・気を取り除き、肝の働きを助け、解毒する作用があるとされています。

・夏のうり類

 夏は、万物が活発に活動している時期で、人間も新陳代謝が活発になります。熱や湿気をきちんと八させずに、こもらせてしまうと体調を崩します。きゅうりやスイカなどのうり類は、余分な熱を取り除き、水分を巡らせ代謝させる働きがあります。

・秋の芋やかぼちゃ、果物

 秋は、陽気が減り、陰気が増えていきます。夏に発散した気

力を補い、冬に備えてエネルギーを蓄える時期。乾燥しやすいこの時期には、潤いを補うことも大切。

イモ類やかぼちゃ、果物には、湿を補う効果があります。気や湿を蓄えていく体に変化していきます。

「秋茄子は嫁に食わすな」。一般には、「秋にできるナスは味がよく、もったいないから嫁に食べさせるな」という意味で使われることが多いようです。しかし、本来は「ナスはからだを冷やすので大事な嫁に食べさせるな」という意味が込められていました。

・冬の根菜類

 万物が休眠し、春に備えてエネルギーを蓄えていく時期。にんじんなどの根菜類は、体を温め腎の働きを助け、エネルギーを蓄えます。また、ネギ類、しょうがも体を温めます。

 

 

季節の野菜には、単にミネラルやビタミンといった栄養素だけではなく、その季節の自然界の気や生命力のようなものも一緒に取り入れるという意味合いを捉えていたのではないでしょうか。

人間も大自然や宇宙の一部であり、その自然の巡りや、エネルギーの巡りによって身体も変化していく。自然と身体を調和させてこそ、体調が整っていき、楽しく暮らすことができる。食養生の考え方には、そんな意識を感じます。

 

 

次回のは、季節の巡りを感じながら暮らしを楽しんできた日本の文化に焦点を当ててみます。

 

【参考文献】

「二十四節気に合わせ心と体を美しく整える」 著:村上百代

「薬膳・漢方検定公式テキスト」 監修:薬日本堂

「創健社:健康にやさしい7つの提案」https://sokensha.co.jp/about/think/season/

投稿者 o-yasu : 2022年10月13日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2022/10/6404.html/trackback

コメントしてください