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2022年10月13日
【これからの林業を考える】シリーズ5~明治・大正の「スピード林業」が、現在の産業衰退の大きな原因
■明治維新から戦前までの林業
明治維新になった途端に西洋の文化が流れ込み、高層建築物の足場や杭、電柱、鉄道の枕木、貨物の梱包などで木材の需要は急増し、幕府の締め付けもなくなった全国の森林で大量伐採が横行し、日本の森林は再び荒廃の危機にさらされました。
明治政府は明治30年(1897年)に「森林法」を制定して森林の伐採を規制しました。さらに、無立木状態の荒廃地に関しては、明治32年(1899年)から大正10年(1921年)までの「国有林野特別経営事業」にて国有林野を払い下げた費用で、植栽を積極的に行って森林整備に努めました。また公有林においては、大正9年(1920年)年からの「公有林野官行造林事業」において、政府が市町村と分収林契約を結ぶ事によって森林整備を実施しました。
森林法はドイツの森林整備を参考にし、林業の近代化が進展しました。その後、第一次世界大戦、日清戦争、日露戦争などの戦争などで木材の需要がさらに拡大しましたが、その近代的林業が土台となり、全盛期を迎えることになりました。
その一方で、当ブログでは、この明治・大正の近代的林業が、現在の林業の衰退を招いていることにもなっていると分析します。そこで今回の投稿では、現代の原因となっているポイントを整理し、今後の突破すべき課題を明らかにしたいと思います。
■スピードを重視した林業
当時、特に都市部では山は荒廃し、はげ山状態でした。この状態をなんとか解決しようと、「早く育つ植栽計画」が追求されています。その結果、現代にもつながるような「杉・ヒノキ」を中心とした植栽が主流となります。
杉・ヒノキは、成長が早い、まっすぐ育つことから、材木利用や山林保全にはもってこいの樹種でした。その結果、とりわけ都市部中心の山林のほとんどが、これらの樹種で占められています。
そして、わずか数年~10年で、みるみるうちに緑に覆われ、そして30~50年で材木として利用できる山林へと育っていったに違いありません。明治・大正、あるいは昭和・戦後は、上記のような林業では全く問題はなかった、あるいは、奇跡のように産業再生を遂げたと思われたのではないでしょうか。
■杉・ヒノキが中心になり、日本の林業の今はどうなったか?
しかし一方で、現代にまで続く林業の衰退の原因をつくったことにもつながっています。
①材木としての強度が「弱い」、使い方が限定される
杉・ひのきは、非常に柔らかく強度が低い樹種です。それに加えて、スピードを重視したがゆえに、早期育成を重視しており、より一層、木の内部密度が低く「スカスカ」の樹木が育っています。
結果、現代の建物では、構造部材として使いにくく、また、内装材においても床にも使いにくい、使い方が限定されることになっています。
②「単一」の樹種による、レパートリーの少ない樹木
上記ともほぼ繋がりますが、明治・大正以降、植栽する樹種が杉・ヒノキにかなり限定されています。本来ならば、堅い樹木から柔らかい樹木、あるいは、香りが強い樹木、抗菌作用が強い樹木、雨がかりや水にも強い樹木など、様々な樹木を植栽することが必要だったでしょう。
「弱い材木」しかない。これが、産業としての脆弱性を招いてしまっている大きな原因と考えます。そして、海外の林業の盛んな国に押され、これほど山林が多いにも関わらず、海外輸入が大勢を占め、国内の林業が衰退していくことになっている。つまり、求められるニーズに対して、応えられない構造を作り出してしまっていると考えられます。
③国土保全・環境保全としても、単一・スピード林業でよいのか?
山林の土砂災害を抑えるためには、樹木の根が横に広がり、土や岩石を包み込むようなかたちが理想できでしょう。杉・ヒノキは、縦に伸びる樹木であるため、根も縦に伸びながら成長していきます。その結果、山林の土をがっちりと包み込むことができないため、特に、斜面の勾配が厳しいエリアでは土砂災害を抑えることできなくなります。
このような国土保全・環境保全の観点からも、どのような植樹戦略をとるのかという視点が非常に重要となります。
以上、今回の投稿では、近代の林業計画と、現在につながる原因について見てきました。次の投稿では、こういった日本の林業の突破口を探っていくため、海外の林業について分析していきたいと思います。
■参考
・「林業の歴史を振り返ろう、日本の森林整備を巡る歴史紹介」(https://www.ydec.co.jp/magazine/magazine_forestry/2015)
・「明治150年森林政策の歩み」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/archives/index.html)
・「明治期の国有林野事業について」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/archives/ringyou/kokuyurin.html)
投稿者 hasi-hir : 2022年10月13日 TweetList
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