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2013年04月11日

農を身近に★あぐり通信vol.3:農業とTPP~TPPは実は農業だけの問題ではない~

1.TPPとは?
TPPとは、日本・米国を中心とした環太平洋地域による経済連携協定(EPA)の意味です。
アメリカ国務省の高官が、日本はTPPに参加すれば、輸出拡大だけではなく日本の国内の構造改革につながり、成長を促すことになるとメリットを強調しました。
TPPのメリット
・関税の撤廃により貿易の自由化が進み日本製品の輸出額が増大する
・整備・貿易障壁の撤廃により、大手製造業企業にとっては企業内貿易が効率化し、利益が増
える
・鎖国状態から脱しグローバル化を加速させることにより、GDPが10年間で2.7兆円増加すると  見られている
TPPのデメリット
 ・海外の安価な商品が流入することによってデフレを引き起こす可能性がある
 ・関税の撤廃により米国などから安い農作物(特に米)が流入し、日本の農業に大きなダメー  ジを与える
 ・食品添加物・遺伝子組み換え食品・残留農薬などの規制緩和により、食の安全が脅かされる
 ・医療保険の自由化・混合診療の解禁により、国保制度の圧迫や医療格差が広がると危惧され  ている
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2.農業におけるTPP
日本がTPPに加盟し、多くの農産物の関税が撤廃された場合、国外産の安い農産物が市場に入ることで国産農産物が売りにくくなると懸念されています。これがよくマスコミが報道しているTPPの内容です。そして個別5品目として政府が関税撤廃の対象としない「聖域」にしようとしている品目(コメ、乳製品、麦類、砂糖、牛肉)など。いずれも高関税で保護してきた項目です。これらの関税がなくなった場合、農水省は「コメの国内生産は約4割、牛肉は8割、乳製品と小麦、砂糖の国内生産はほぼ消滅する」と予想しています。
3.TPPの重要事項
TPPには農業問題の他に以下のような条項があります。
・投資家保護条項(ISD条項:Investor-State Dispute Settlement)
日本に投資したアメリカ企業が日本の政策変更により損害を被った場合に、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できるというもの。国際投資紛争仲裁センターはアメリカがコントロールしているので提訴の結果はアメリカ側に有利になる仕組みです。
・ラチェット条項(Ratchet条項)
貿易などの条件を一旦合意したら、後でどのようなことが発生してもその条件は変更できないというルール。つまり、一度決めた開放水準は後で不都合・問題があったとしても逆戻り出来ないという恐怖の条項です。例えば、牛肉などの農産物で、狂牛病や遺伝子操作作物で、健康被害が発生したとしても、それをもって輸入の禁止や交易条件、国内でのアメリカ産のものの規制はできないということです。
・NVC条項(Non-Violation Complaint条項)
非違反提訴のこと。米国企業が日本で期待した利益を得られなかった場合に、日本がTPPに違反していなくても、アメリカ政府が米国企業の代わって国際機関に対して日本を提訴できるというもの。違反が無くて、日本で期待した利益を得られなかった場合にも提訴できるというのが、恐ろしい部分で 例えば、公的な健康保険分野などで参入などがうまくいかないと、提訴されて、国民健康保険などの公的保険制度が不適切として改変を求められるということにもなりうるものです。
・スナップバック(Snap-back)条項
アメリカ側が相手国の違反やアメリカが深刻な影響ありと判断するときは関税撤廃を反故にできるというもの。例えば、自動車分野で日本が協定違反した場合、または、アメリカ製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすとアメリカが判断した場合、アメリカでの自動車輸入関税撤廃をアメリカが無効にできるということです。関税の撤廃も、アメリカ企業に深刻な影響を与えるとアメリカ側が判断した場合はいつでも反故に出来るというアメリカ本位の勝手な条項です。
・未来の最恵国待遇(Future most-favored-nation treatment)
将来、日本が他の国にアメリカよりも条件の良い最恵国待遇を与えたときは、自動的にその最恵国待遇はアメリカにも付与・適用され、何の交渉も不要でアメリカは最も条件の良い最恵国待遇を手に入れられる仕組みです。
以上TPPの主な条項を一部ピックアップしてみましたが、内容はどれもアメリカ優位で日本にとっては不平等条約にしか見えない条項です。
4.TPPの真の狙い
マスコミが取り上げているTPPは農業の側面だけで、前述した重要条項には全く触れられていません。これは日本のマスコミがアメリカに利用されており、TPP=農業というアメリカのごまかしで裏では重要条項を通すことが狙いです。また“聖域は守ると”発言した安倍総理ですが、JAのトップと自民党とがつながっており、地方の農家から支持されている自民党が選挙の票集めのためにTPPの農業ネタを使ってアピールしている構図があります。TPPとは一言でいうとアメリカが売りたいものを売れるよう日本を変えることなのです。

投稿者 ARI-HIRO : 2013年04月11日 List   

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