【共認社会の新しい農法とは?】(11)~人間の役割は、養分を「使える」状態にして陸地に戻すこと~ |
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2010年05月18日
【共認時代に求められる農法とは!?】(12)~現実の壁は誤った科学技術と自由貿易~
このシリーズの前回のエントリーにおいて、
このシリーズでは、物質循環の原理から次代の農法を追求してきました。一定の可能性提示には至ったと思われますが、それを実現するためには越えなければならない「現実の壁」がいくつか存在することも見過ごせません。
ということが提起されました。これを受けて今回は「これから物質循環に則った農業を実現する上での壁は何か?」を追求します。実はこの問題は、そっくり「これまで、農地を含む生態系が破壊されてきたのは何故か?」という問題と、答えが重なってくるのです。
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■「採算が取れない」という理由で農地が放棄されている
近年、世界の農地が放棄され、劣化し、また生態系が破壊されています。その原因は、現在の市場システムの中では農作物が過剰生産・過剰供給され、農業は「採算が取れない」からです。なぜ、採算が取れないのか?「地球生態学で暮らそう」の著者・槌田さんは、①科学技術と②自由貿易という2つの観点から論じています。ここでも、この見方に沿って、なぜ採算が取れなくなるのかを考えてみたいと思います。
■物質循環から逸脱した科学技術による砂漠化
科学技術は、農作物の生産性を著しく向上させました。作物は過剰生産されて、廉価販売されるため、科学技術の使いにくい農地は採算が取れなくなります。そして価格競争に負ければ、農地は放棄されてしまいます。
科学技術に頼る農業の典型例が、アメリカの巨大円形農場。井戸を掘り、これを中心に散水機を回転移動させて作る、半径500mの大農場です。アメリカが世界一の農業大国たるゆえんでもあります(1ヘクタールあたりの穀物収穫量は世界平均の3.1トンのほぼ倍の5.9トン)。
しかし、地下水に含まれる塩分が農地に残るため、生産量は徐々に減っていきます。そこで、塩分を地下に追いやるために、さらに水を汲み上げて供給するので、生産費用は増え続けます。結局、採算が取れなくなり、この農地は放棄されることになります。
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(画像はウィキペディアより)
物質循環を逸脱してまでも、科学技術を駆使して農作物を過剰生産するのは、アメリカの市場システムでの価格競争に勝ち残るために他なりません。物質循環はそっちのけで、効率的な生産が優先されるのです。結果、世界の砂漠化は進行していきます。
■自由貿易による砂漠化
現代経済学は認めていませんが、自由貿易は世界的な砂漠化の原因になっています。自由貿易が主張された背景には、アメリカやヨーロッパの穀物の輸出戦略があります。過剰生産により余剰農産物を抱えると、価格が下がって農民の失業が増えるので、欧米は補助金を投入して他国に輸出することにしました。その際に「自由貿易」が主張されたのですが、これは売る側だけに「自由」があり、買う側に「買う・買わない」「減らす」といった選択の「自由」はありません。日本は小麦・大豆・とうもろこしでは完全にアメリカの「自由貿易」の主張を受け入れ、これが日本における農地の放棄(ひいては自給率の低下)に繋がりました。
さらに、日本への穀物輸出が飽和すると、アジア・熱帯諸国が次の販売目標とされます。これらの国々も小麦を食べる習慣はなかったので、アメリカ・ヨーロッパ諸国は、彼らに小麦を食べることを教え、輸入を受け入れさせました。これにより、原産の穀物を育てていた農民は失業することになり、農地は放棄されます。結果、途上国の砂漠化が進行するのです。
また、彼らはスラム(貧困街)に住み着くことになり、工業を興そうとも工業力はなく、貧困層は貧困層のままです。むしろ、自由貿易以前は自給的に農業生産を行って食っていけたのに、自由貿易(→「発展途上国」化)により「貧困層」が作られたのではないでしょうか。
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■「自由貿易」の詭弁性・欺瞞性
以上、自由貿易が世界の農地を破壊していることを述べましたが、そもそもこの自由貿易という概念自体、詭弁の塊であることを指摘したいと思います。
①買う側に自由はない
先述しましたが、この「自由貿易」は売る側の自由はあるが、買う側の自由はありません。つまり「押し売り」を公式ルール化したようなもので、欧米先進国の身勝手なワガママそのものです。そもそも、「自由」という言葉は往々にして、強者が特権を謳歌する際に使われるので(例えば、マスコミの言う言論の自由、消費者の消費の自由・・)、欺瞞性が強い観念です。
②「自由貿易は戦争を防いでいる」という詭弁
よく、自由貿易の正当性の根拠に、「保護貿易は第二次大戦の原因となった」ことから「自由貿易は世界の平和に貢献している」と言われますが、本当でしょうか?確かに、保護貿易により作物の輸出入が不活発になり、植民地を持たざる国(ドイツなど)が戦争に踏み切ったという歴史はあります。しかし、その前提にあるのは、「植民地主義」、略奪の正当化です。既述しましたが、「自由貿易」はもっともらしい理由をつけて、欧米先進国が余った食料を途上国に売りつけ、お金を巻き上げている収奪構造にあり、「植民地主義」の支配構造となんら変わりないのです。しかしその歪んだ前提については一切触れない、これが詭弁です。
③「安い値段で食を提供しているから途上国の幸せに寄与している」という詭弁
これも、前段に述べたように、自由貿易が失業者→貧困層を増やした以上、「安い値段」といってもその「安いお金」自体手に入れられないので、成り立ちません。そもそも、お金がなければ食べ物すら手に入らない状況、食を外国に依存している状況じたいが、貧困層・飢餓人口を増やしているとしたら、幸せに寄与しているどころか不幸の元凶です。だから、これも詭弁です。
■現実の壁は、旧い思い込み(観念)と制度
以上、誤った科学技術と自由貿易が、農業で採算が取れずに農地の放棄を増やしている原因であり、これから物質循環に則った農業を実現する上での壁であることを述べました。科学技術信仰にせよ、自由貿易にせよ、その根本にあるのは、効率性や儲け第一という、近代市場社会特有のパラダイムです。さらに今回、後半で自由貿易の詭弁性の指摘に熱を入れたのは、現在の壁となっているものは、誰でも単純に考えて「おかしい」と分かる、ダマシの観念だということをはっきりさせたかったからです。
しかし、時代は共認時代に転換しています。人々は儲け第一よりも、自然の摂理に則り、持続可能な農業を求めています。また、そのような農法を実現する上での壁が、事実ではなく詭弁に基づいたものである以上、そこに切り込んで、事実認識に人々の共認を塗り替えていくことが、極めて重要な課題となります。そのためにも、自然の摂理(事実)を追求していくことが必要なんです!
さて、現実の壁について述べたので、次回はいよいよ、「その壁を乗り越えるにはどうすればいい?」について追求していきます!お楽しみに!
投稿者 staff : 2010年05月18日 TweetList
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コメント
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お世話になります。とても良い記事ですね。
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