| メイン |

2022年06月30日

【ロシア発で世界の食糧が変わる】2 ロシアのウクライナ侵攻に見る世界の農業意識の転換~世界は、ロシアから近代農業からの脱却を迫られている~

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、世界経済に影響を与えていますが、「世界の食糧事情」に対して認識転換につながる可能性を秘めています。

今回は、ロシアの動きが世界に対してどのような影響を与えていくのかを考えていきたいと思います。

 

◯世界の食糧危機を引き起こし、自給意識を高めていく
ウクライナは「欧州のパンかご」と呼ばれるほど小麦の輸出を行っており、ロシアも同様に「世界有数の小麦輸出国」です。

両国を合わせると世界の30%の小麦輸出を行っており、その輸出先であるEUやアフリカ、中近東は両国からの輸入に頼っているため、国内の食糧供給に大きな影響を与えています。

ロシア・ウクライナ侵攻によって、各国がロシアの輸入を拒否し、食糧の貿易が停滞。
主要な輸入国であるアフリカは大飢饉の発生の恐れがあると言われるほど、ウクライナ侵攻に伴った世界の食糧状況への影響は小さくありません。

※画像はこちらからお借りしました。

さらに、農業の生産場面においても、ロシアが主要に担う肥料の急騰が起こっています。

各国、これまで食料政策、農業生産ともに輸入に頼っていたため、「自ら食糧を作っていかなければ」という自給意識を高めることになっていくかもしれません。

 

◯化石燃料の高騰により、世界の有機農業への意識は高まっていく
ロシアは欧州に対して、化石燃料を供給しています。
農業を行うにしても、機械を動かすための石油を必要とするため、ロシアの供給制限に伴う石油価格の高騰は農業生産に大きな打撃となります。

さらに、近代農業において必要不可欠な「化学肥料」は化石燃料を原料としており、かつ肥料の原料となる「窒素・リン・カリ」の輸出はロシアがトップシェアを占めています。

ロシアの経済制裁に伴い各国は新たな原料の調達に四苦八苦していますが、化学肥料の調達難により、肥料価格の高騰は免れない状況です。

ロシアのウクライナ侵攻に伴った肥料価格の高騰は、世界の農業生産における基盤に対して大きな影響を与えており、化学肥料を基盤とした近代農業からの脱却が必要になります。

日本においても、農林水産省が「みどりの食糧システム」という有機農業への転換を推し進めており、今回の危機を発端として世界でも化学肥料に頼らない有機農業への転換する潮流が加速していくと予想されます。

 

◯ウクライナはなぜ世界に食糧を輸出できないのか
ロシアは世界から輸入を拒否されているため流通が滞っているとして、ウクライナが食糧を輸出できないのはなぜでしょうか?

ウクライナは世界に対して食糧を輸出する際に使用しているのは、国際河川と呼ばれる「大河・ドナウ(ダニューブ)河」を利用して運搬しています。

 

しかし、ウクライナ侵攻に伴い、ロシアから攻撃されるおそれがあるため、保険料の高騰などの理由により、船舶による運搬ができない状況に陷っています。

現在、陸路を利用した代替路をウクライナは模索しているようですが、周辺国との調整が必要な状況にあり、実現は難しい状況です。

世界へ輸出できない状況が続き、4500万tにまで在庫料が膨れ上がると言われています。
世界からすると供給されるはずだった穀物が輸入できなくなり、食糧危機が引き起こされるおそれがあります。

つまり、世界の食糧事情、食を成立させるシステムは「流通」に頼っており、それが滞ってしまうと成立しえない、脆弱なシステムだといえます。
このことは「世界の農業システムのあり方」そのものを見直す動きに繋がっていく可能性を秘めています。

ロシアはウクライナの供給システムを停止させることで、結果的にその脆弱性を世界に示していると考えられます。

 

◯世界の農業システムが根本から見直されていく
ロシアは世界における近代農業の存在基盤に対して、大きな影響力を持っていることがみえてきました。
そして、ロシアのウクライナ侵攻は世界の食糧政策、農業生産、システムの課題を示しています。

当のロシアは近代農業への転換によってその影響を大きくしてきましたが、今回の侵攻に伴い、世界に対して「近代農業からの脱却⇒有機農業(自然の摂理に則った農業)」という動きを加速させています。

ロシアは今回の侵攻により、世界の農業システムそのものを転換させようとしているのかもしれません。

今後は近代農業によって世界への影響力を高めたロシアが、なぜ世界を近代農業から脱却させようとしているのかを、世界の農業による支配構造の変化も分析しながら、ロシアの意識・目論見をもう一段深く掴んでいきたいと思います。

 

<参考ページ>
ロシアのウクライナ侵攻の世界経済・欧州経済への影響

深刻なウクライナ穀物の輸出停止! 代替輸送の本命は「ドナウ河」かもしれない

戦争が与える食への影響 – ロシアのウクライナ侵攻で世界の食卓はどうなる?

ロシアとウクライナは穀物輸出の好敵手同士

 

投稿者 tiba-t : 2022年06月30日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2022/06/5966.html/trackback

コメントしてください