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2022年06月03日

シリーズ『種』9:「F1種子は安全である」として短絡的に安心して良いのか?

ここまで見てきたように、生物には1個体の一生の中で、新たな形質を獲得したり、それを次世代に受け継いでいく仕組みを持っていることがわかってきました。

 

本シリーズ最初の記事で紹介した、無農薬・無肥料の栽培方法を確立した関野さんのおっしゃるように、種取りをすることによって、その環境に適応した種が作られていくのだと思います。

 

ところが現在、一般に市販されている種のほとんどはF1種子であり、また世界中で生産される穀物の多くがGM作物(遺伝子組換え)となっています。これらの種子は、種取りをするのではなく、作付けの度に毎回種苗会社から種を購入します。

一般的に、遺伝子組換え種子については、その安全性の面で様々な視点から議論がされているところであり、現在日本では生産することはできません(ただし、飼料用として大量に輸入していますが)。しかし、F1種子については、安全であるという見方が一般的のようです。(参考:F1の種は本当に危険なのか?背景から読み解く

 

しかし、種取りをせず、毎回購入するF1種は、「生物は環境に適応していく」という自然の摂理に反しているように思います。本当に、単純に安全であると言って、安心できるものなのか?本記事では、F1種子の弊害についてまとめてみます。

菌根菌

 

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■化学肥料と化学農薬の使用が前提条件

F1種子は、基本的に種取りをせず、作付けごとに種苗会社から種を買います。ですので、その環境に種が適応していくという力が非常に弱くなると考えられます。その土壌での菌根菌をはじめとするネットワークへの適応も弱く、化学肥料が無ければ、うまく肥料を吸い上げられない可能性が考えられます。

また、F1種は、たくさんの肥料を使っても倒伏したり病気にならないよう耐肥性をもつように作られていて、なおかつ化学肥料を多く投入すれば作物はよく成長し、短期的には収量も増えるのでるので、化学肥料の使用量も多くなりがちになります。ですが、一方で雑草もよく繁茂し害虫も増えるため、必然的に農薬や除草剤の使用量も増える傾向にあります。

以上のように、F1種は、必然的に農薬や化学肥料に頼らざるをえなくなるという構造があります。

また、F1種子の親となる純系種が、どのように栽培されているかと言えば、やはり化学肥料や農薬を使用している可能性が高いと思われます。その場合、肥料・農薬を使用した環境に適応した、遺伝子状態になっている可能性が高いでしょう。獲得形質遺伝の観点からも、やはり、肥料・農薬の使用が前提となっているのです。

 

■植物と土中微生物の共生ネットワークを壊し、土を殺す

当ブログの『コラム:植物と土中微生物の共生ネットワークを壊し、地力低下を招く原因は「肥料」である』でも書いたのですが、植物は、土の中の微生物と共生関係にあります。植物は、光合成で得た糖の約半分を、根から土へ放出(液体カーボン)し、土中の微生物を育て、反対に土中微生物から光合成では得られない微量要素(ミネラル分)を提供してもらっています。

肥料を施すことによって、植物が根から放出する液体カーボンが減り、この共生ネットワークが壊されてしまうのです。そして、その結果、土中には炭素量がへり、鉱物ばかりの砂のように固くなり、死んだ土になります。

F1種は、化学肥料の施用を前提としているため、植物と土の中の微生物の共生ネットワークを壊す構造にあり、結果的に植物が育ちにくい死んだ土へと導いていく構造にあります。

 

■化学肥料で育てられた野菜の人体への影響

イギリスの保健省や、米国農務省などの発表によれば、野菜に含まれているミネラル分(銅、鉄、カリウム、カルシウムなど)は、戦前に比べ15~74%も減少しているそうです。ミネラル不足は、免疫システム機能の低下を招き、それがガンその他の疾患が急増している原因であるとも言われています。

野菜に含まれるミネラル分が不足する原因は、上記の土中微生物との共生ットワークが乏しいために、ミネラル分を吸収できないためと考えられています。

また、腸内の細菌の働きが健康に大きく影響を及ぼすことが、近年認識されるようになってきたが、農薬(除草剤に使われるグリホサートなど)の残留を食べることによって、腸内細菌に悪影響を及ぼすことも報告されています。

化学肥料と農薬使用を前提とする、F1種を使うことは、間接的にではあるが、人体への影響も大きいと言えるでしょう。

(食物と健康との関係性については、本シリーズで詳しく取り扱えていなませんが、非常に重要な論点かと思いますので、別の機会に掘り下げて追及してみたいと思います。)

■雄性不稔種子が人間の精子減少に関わっている?

植物の雄しべと雌しべは、同じ花の中にある場合が多くあります。F1種を作る際は、異品種を交雑させるわけですから、同じ花の中の雄しべと雌しべで交配しないよう、雄しべだけを取り除く「除雄」という作業を行います。

この除雄作業がめちゃめちゃ手間がかかるので、最初から雄蕊をもたない株を作る技術があるのです。これを雄性不稔株といいます。雄性不稔株は、自然界でたまたま見つかった奇形の株を、交配させて増やして行く事で作られています。

雄性不稔は、ミトコンドリアの異常であることが近年発見ました。

ここ数十年の間に、男性の精子数が急激に減っているという事実があります。デンマークの科学者ニールス・スカケベック(Niels Skakkebaek)教授が、WHOの会議において、「過去50年にわたって精子の数が半減している」という報告を以前に出しています。

このミトコンドリアDNA異常の雄性不稔食物をとり続けていることも大きな一因ではないか?と示唆している人もいます。(ただし、化学的には根拠は示されておらず、まだ憶測の域をでません)。

 

■生産の根幹を種苗会社に独占される=自給自足できない危険性

F1種も、その親となる純系種も、さらには使用を前提としている肥料も農薬も、生産者はそのすべてを種苗会社(主にはバイオメジャー)から購入します。

本ブログでも以前に書いていますが、食そのものをバイオメジャーによって支配されることになるのです。

詳しくは、自殺する種子「ターミネーター・テクノロジー」とモンサント社の種苗支配をご参照ください。

実際、日本国内の野菜の種子は、30~40年前まですべて国産でしたが、今では90%以上を外国産が占めています。

 

 

以上のように、F1種子そのものは安全であるとされていますが、決して短絡的に安全であると安心できるものではないと考えられます。

 

 

【参考】

コラム:植物と土中微生物の共生ネットワークを壊し、地力低下を招く原因は「肥料」である

【類農園直売所】自然の循環を活かした作物づくり

近頃のおかしな野菜たち ~F1種という野菜は一体どんなものなのか?~

書籍「タネと内臓」吉田太郎著

書籍「土が変わるとお腹も変わる」吉田太郎著

投稿者 o-yasu : 2022年06月03日 List   

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