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2015年01月01日

微生物と植物の協働関係を進化史から探る-3 ~植物の地上進出!・・・ある生物との共生によって実現!~

明けましておめでとうございます。
昨年、当ブログでは、多くのシリーズ記事を書き綴らさせていただきました。 『農を身近に★あぐり通信』をはじめとして、『自給期待に応える食と医と健康『農業全書に学ぶ』『生物にとって、薬とはなにか?』『自給期待に応える食と医と健康』各シリーズを。そして夏場ごろからは、『都市型直売所の可能性を探る』『農業革命;未知なる乳酸菌』シリーズをはじめとして、『微生物と植物の協働関係を進化史から探る『生命の根源;水を探る』シリーズなど、その時々の私たちの問題意識をもとに綴ってきたものです。 暮れの政権継続の決定をはじめとして、農業を取り巻く環境の好転は、なかなか期待できない社会状況ですが、私たちは、お上の不用意な政策などに惑わされることなく、次代の新しい農業のあり方を求めて追求し、実現の道を模索し続けていこうと思っています。 どうぞ本年も、ご愛読よろしくお願いいたします。 名称未設定 1

さて本日は、元日にふさわしく!?・・・「植物の地上進出」という壮大な生物史の中でも一大事、4~5億年前頃、必死に新天地を求め可能性を追求し続けたであろう植物の姿に思いを馳せながら、その大進化の歴史に迫っていきたいと思います。『微生物と植物の協働関係を進化史から探る』シリーズの第3回目です。

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私たちが普段目にする植物は、地上で生きています。しかし、この植物たちは動物と同じ様にもともとは海の中に生息していました。 水と太陽の光を糧に成長する植物にとって、海はその両方を得ることが出来る最良の環境だといえまが、なぜ植物はわざわざ地上進出したのでしょうか? この素朴な疑問に答えを出すために、まず海中での進化過程からみていきます。

 

oo┃海中での植物の進化過程                                             約38億年前に太陽光を用いて、光合成をすることができるシアノバクテリアが誕生 無色の真核生物(核を持つ生物)がシアノバクテリアを取り込み、自らの葉緑体とする「一次共生」を通して、「一次植物」と呼ばれる最初の植物群が生まれた。(緑色植物,紅藻植物,灰色藻植物が知られている) 一次共生によって誕生した一次植物を、さらに別の無色の真核生物が取り込むことで「二次共生」という形が現れ、植物にはより多様な系統が誕生していった。

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01┃地上進出を余儀なくされた環境の変化                  

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これはいくつかの仮説がありますが、妥当性の高い外圧の変化は、大きく以下の4点といって良いと思われます。どれも逆境こそが進化をもたらす』という生命の摂理の視点でも符合する観点です。

  1. 浅瀬の海面に漂う海草が陸に打ち揚げられる。あるいは干潮や海面の急激な後退で、海草が『干上がる』という逆境。
  2. 地殻変動により海底が隆起してしまった逆境。
  3. 海中を支配した植物が繁殖しつくして生存域を失ってしまい、残された場所は地上しかなくなったという逆境。
  4. 氷河期や寒冷地に流れ着くなど、厳しい寒さに置かれたという逆境。

453379124  ←南極に生息する地衣類植物

 

02植物の地上進出は、ある生物との共生なくして実現できなかった  最初の地上進出した種とは、現在様々な仮説があります。コケ類などはその原始的な姿を見ても有力視されているのですが、私たちが上記の逆境と、新天地で適応するその仕組みを検証したところ、最も整合し、納得がいく仮説として注目したのは『地衣類』です。

図1

地衣類とは、簡単に書くと、浅瀬の海面で漂っている藻類と菌が共生した生物です。 「菌との共生」がミソで、菌だけでも、そして藻類だけでも地上で生息することは出来ず、お互いの協働関係で新たな生息域を見出した点が、驚くべき点です。つまり植物側から見ると、「菌」の存在なくして、地上進出を果たすことは出来なかった、ということなんです。 そして、地衣類はなんと、上記のような過酷な環境で、現在もしっかり生息、適応し続けているのです!

 

03┃地衣類とは?                                 。 では、地衣類の特徴をいくつか挙げておきましょう。 ・菌類を除去すると藻類は死滅するし,藻類がいないと菌類も死滅する。菌類と藻類で一つの複合的生命体。 ・南極のヴィクトリアランドの不毛の谷は氷でおおわれた地獄でも、わずかな太陽光があれば繁殖できる。 ・全世界の岩に生息する総量は、13×1013トンと算定されており、バイオマスとしては海に生息する全生物より多い。 ・岩肌をおおい、岩を砕いて土壌に変え、植物の根や菌類の菌糸のネットワークが入り込めるようにする。 このように過酷な環境に適応できる生命力を持つ菌類と自らエネルギーを生み出せる藻類の共生態である地衣類(最強コンビ)が、地球上で最初に上陸した植物の先祖だったのです。そして、その地衣類たちが長い長い時間をかけて、無機的な岩石を酸で溶かし、自身も死骸となり、その後の植物繁栄の礎となる最初の土壌を形成していくことになるのです。

エルンスト・ヘッケルが収集した地衣類→f0161647_18355268

 

04┃「菌」のネットワーク                             。 いかがでしたか? はなはだ簡単ではありますが、植物の地上進出の秘密は、お分かりになりましたでしょうか? 「菌」と呼ばれる微生物との協働関係があったからこそ、植物は地上進出を果たし、そして我々人類はその植物を有難く食料としていただくことで、生存できているわけです。(新年にあたり、あらためてこのような5億年前の大進化に敬意を表し、感謝したいと思います。) 最後にひとつ付け加えさせてもらうと、植物の地上進出を支えた「菌」は、その後土中でネットワークを形成し、今なお植物の生育を目に見えないところで支えていると言われています。

細菌は土壌の中で菌糸を伸ばしているが,それは数十メートル以上の範囲でネットワークを作っている。なぜネットワーク を作るかというと,土壌の栄養分の分布には偏りがあるかららしい。だから,栄養豊富な土壌の菌糸と栄養が足りないとこ ろに生えた菌糸がネットワークを作り,互いに不足した栄養分をやりとりする共同体を作っていたのだ。 そしてこのネットワークを植物が利用している。菌糸ネットワークに樹木は根を接続し,相互的な栄養ネットワークを形成 するようになったのだ。この結果,日当たりの良い場所の木から、日当たりの悪い場所の木へ、栄養の分配ができるようになり,「樹木互助会」の ようなシステムが作られていることが確認されている。 (共生という生き方 -微生物がもたらす進化の潮流http://www.wound-treatment.jp/next/dokusho164.htm)

point12 地球上の植物の90%以上は菌根菌の宿主であり、菌根菌なしには生存できないし,菌根菌もまた特有の宿主植物なしには生存できないのです。 植物と微生物の見事な協働関係がそこにあります。これは「生命の共同体」の原初形態といっても良いのかもしれません。 (農作物栽培の現場でも、この様な土中のネットワークを視野にいれて、肥料や土作りを試行する必要があるのは、言うまでもありません)   年始にあたり、我々人類も、このような生命の摂理、集団適応のあり様を謙虚に学んでいく必要を感じながら、筆をおきたいと思います。

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投稿者 noublog : 2015年01月01日 List   

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