【コラム】注連縄を飾るわけとは? |
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2012年12月30日
日本の漁業は危機的状況~漁業に於ける業態革命が始まる!
私が所属する類農園では当ブログの
★農における業態革命~ VOI.1 供給発への認識転換⇒技術開発、農家の組織化、販路の開拓の3点セットが基本構造 ~
★農における業態革命~ VOL.2 農業の業態革命のきっかけ。自給志向が高まってきたのはなんで? ~
でも、農における新たな業態の方向性が示されているように、直販事業を立ち上げていく事になりました。今後の事業展開を考える中で、消費者が必要としている農産物について、野菜や米の他に、日常消費する魚や肉についても、考えていく必要性を感じています。
そこで、今回は日本の魚介類市場はどうなっているのか?を調べてみました。
1.日本はかつて世界一の漁業国だった
下のグラフにあるように、戦後、日本の漁業は沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へと、漁場を外に向かって拡大することで漁獲量を伸ばし、世界一を誇っていました。
1977年には、200海里を排他的経済水域と定める国連海洋条約の採択を受け、日本が得意としてきた遠洋漁業を縮小し、漁獲高は大きく減少しましたが、その後、マイワシやマサバなどが豊漁で、沖合漁業がその減少分を補うかたちで1985年頃までは漁獲高は伸び続けていました。
上記グラフは「日本の水産業の現状と未来」より引用
しかし、1985年以降は、漁獲高は減少し続け、漁業者は現在約20万人と過去40年間で3分の1以下に減り、現在働いている漁業者の約30%が65歳以上の高齢者となっています。また、船などの居住・労働設備も老朽化し、日本の漁業は危機的な状況にあります。
2.なぜ漁獲高が減少したか?
1990年代に入ると、マイワシやマサバなどが、急に不漁となります。魚が極端に減ってしまった原因には、水産資源を適切に管理せず、乱獲を行ったことが大きな原因として指摘されています。
以下、「日本の漁業が壊滅的ってホントなの?」からの引用です。
現場の漁師さんたちも「小さい魚を獲り過ぎるのが漁獲高減少の原因」ということはわかっています。でも、日々の稼ぎをあげるためには獲るしかない。むしろ、より積極的に乱獲した人が生き残る構図になっていることが問題です。
マイワシについては1990年前後の数年間、卵が生存して成長する率が非常に低い状態が続いたことがわかっています。当然、漁獲高も激減しました。その後、1995年ごろには卵の生存率は回復しました。ところが、減少した漁獲高を増やそうと高性能化した漁船で乱獲を続けたために、資源量が回復できない状態が続いているのです。
漁業管理の先進国であるノルウェーでも、かつては乱獲で漁業資源を壊滅させた苦い経験をもっています。でも、現在では魚種ごとの漁獲枠を漁業者に割り当てて、付加価値の高い成熟した魚だけを獲る「個別漁獲枠制度」が進んでいる。再生可能な資源は維持しながら、いわば「利息」だけを獲るという考え方が浸透しているのです。持続的な漁業の発展を維持するためにも、「個別漁獲枠制度」は不可欠だと考えています。
今の日本の漁業は、海を戦場にした「お金のつかみ取り競争」に陥っています。魚を硬貨にたとえると、成長して価値の高い500円玉と、未熟で安い10円玉があると考えてみてください。日本漁業は、早獲り競争の結果500円玉がほとんど無い状態で、10円玉を奪い合っています。10円玉しかなければ、漁師はそれを獲らざるを得ないのです。
一方、ノルウェーなどの資源管理先進国は、十分な親を残した上で控えめな漁獲枠を設定します。そして、その漁獲枠を早い者勝ちで奪い合わずに、予め個人に配分しておくのです。500円玉が十分にある状態で「硬貨は10枚しか獲っちゃダメ」と規制すればどうでしょう。みんな500円玉だけを探して獲るようになる。結果として、漁業は安定して利益を生む産業になるのです。たとえば同じ10枚で金額は100円しかなかった売上高を、5000円にすることが可能になります。これが「個別漁獲枠制度」のメリットです。
上記グラフは「日本の水産業」より引用
3.魚の消費量が減ったのは何で?
一方、日本人の魚の消費量は下のグラフにあるように世界一を誇っていますが、年々消費量は減り続けています。また、水産物輸入額は世界全体の約20%で、世界第1位の水産物輸入国でもあります。
これは、先にも述べましたが、200海里規制による遠洋漁業と沖合漁業の漁獲量の減少により輸入量が増加しており、1985年以降は、円高の影響により外国からの輸入が増えこともその理由です。2000年以降は輸入量が生産量を上回り、最も多いのはえび、まぐろです。
また、かつて商店街の魚屋が販売の中心だった頃は、魚屋は四季折々の多様な魚を柔軟に仕入れ、流通の末端には、様々な魚を柔軟に料理できる消費者がいたことが、漁業者を支えてきた要因でもあります。
魚屋時代は、水産物の流通を規定していたのは漁業者です。水産物の水揚げは、日々変動することを前提として、その変動に対応できるような柔軟な流通システムが構築され、多様な魚を多様なスタイルで消費する魚食文化が背景にはあった、と言えます。
ところが、スーパーマーケットでの販売が主流となった今では、スーパーがどういう魚をいくらで、どれぐらい売るかを予め決めてしまうのです。魚売場は季節感が希薄で、いつでも定番商品は並べられています。スーパーは、店頭価格からさかのぼった原価で、仕入れ担当者が奔走し安定供給を何よりも重視します。また、魚の値段が安く、ほとんどのスーパーは、魚売り場では利益を出していないにもかかわらず、鮮魚コーナーが全てのスーパーにあるのは、客寄せの意味もあるようです。
世界の1日1人あたりの魚介類消費量 魚介類の消費量に占める輸入の割合
上記グラフは「日本の水産業」より引用
4.魚の販売を巡る新しい動き
最近は、冒頭の「農における業態革命」と同様に、魚流通市場でも漁業者自身が新たな販路の開拓を巡り、各地で奔走しているようです。
そのひとつ、私が住む三重県の「三重外湾漁協」では、3年前から三重県各地で魚の移動販売を始めています。各地での移動販売は好調のようで、持って行った魚は2~3時間で全て売り切れてしまうようです。これらの事業が好調な理由として、一般のスーパーに比べ鮮度が高い事。お客さんとの直接のやりとりを通じて、お客さん自身も魚の保存や捌き方、料理の仕方を教わる事ができる。何よりも、漁業者自身が、自ら捕った魚を直接お客さんに買ってもらうことの喜びを感じられることが、何よりも活力を上げているようです。
これら既存の流通市場に頼らず、漁業者自身が自ら販路を開拓し、販路に見合った漁獲高を確保していく生産を続けていくことによって、乱獲の防止にも繋がるし、計画的に漁場を管理する生産のあり方も考えられ、日本の漁業の再生にも繋がっていくのではないでしょうか、既に漁業の分野でも業態革命は始まっているのです
投稿者 staff : 2012年12月30日 TweetList
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