農から始まる地域の再生~新しい生産集合体をどうつくるか?③ 農村共同体解体の背後には農協の存在が大きく関わっている!! |
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2012年06月09日
【コラム】農業は週休4日でやるので充分→余力の創出が採算性、生産性を上昇させるという発想とその『本質』
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「JAが供給する種子を試したことはないが、10アール当たり6万円もの種子代を払って発芽率60%などのラベルの種子を見るとその保証される発芽率の低さに困惑する。こんな低品質な種子でもおそらく農家は農協にクレームをつけない。」
「就農直後、17年前のことであるが、金柑をJAに持ち込んだとき、「売ってあげる」と言われ、ギク!としたことを今でも覚えている。「売らせていただきます、ではないんですか?」という言葉を喉の奥に飲み込んだ。」
「自然の摂理を無視するために、多大なコストがかかる」
「農!黄金のスモールビジネス」(築地書館発行)杉山経昌著より。
こんにちは。
今日は、るいネットにあった記事「農業は週休4日でやるので充分→余力の創出が採算性、生産性を上昇させるという発想」をもう少し詳しく紹介します。この記事で紹介されているのが、冒頭の本の著者である杉山さんです。
農業の経営採算だけでなく、次代の捉え方や発想がとてもすごくてユニークで共感できます。
ちなみに週休4日とは、年間で平均した数字です。
本当にそれで採算が合うの?という疑問が湧くかもしれません。疑問が湧いた方は続きへ
いつもありがとうございます。
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☆☆☆徹底的な経営採算分析→事実としての数字をもとに思考する
「農!黄金のスモールビジネス」の著者である杉山さんは元外資系の半導体メーカーの営業部長で200人以上の営業マンを統括していたそうです。そのとき培った経験や知識をそのまま農業に適用されたのです。
以下、引用はるいネットからです。
もちろん繁忙期には業務が集中しますが、閑散期をゆっくりと休むことそしてなにより小規模なことが実は自然の摂理にも合っているし、なにより採算性もよくなると提唱されている方がおられます。この方は「農!黄金のスモールビジネス」(築地書館発行)の著者の杉山経昌さんです。
年間売り上げ500万規模の農業をされていますが、夫婦2人で食っていくのに充分。車だって大型テレビだって充分買える。それは食費等の生活費がほぼゼロでおさまることもありますが、なによりこの採算性を維持させているのが年間で平均すると週休4日となる労働量にある。
休日は趣味を充実させることもありますが、なにより工夫や追求の時間がいくらでも取れる。そうして週3日の労働に反映させることで、どんどん生活がスリムになっていく。
例えば、農作業機を改良してみたり、作物ごとの採算計算を綿密に行えたり。販売は直売所で充分いける。
著者はぶどうの生産と果樹園経営をされていますが、数ある作物からこの品種を選んだのは作物ごとの徹底的な採算シュミレーションの結果だそうです。
著者が農業を始めるにあたり、びっくりした点は例えば米であれば1反あたりどれだけ収穫できるかという指標しかない。結果、肥料や農薬、手入れなどが無尽蔵に行われている。
著者はその指標よりも1時間あたりどれだけ収穫できるかを指標としました。
具体的には自分の労働単価を1時間3000円(8時間24000円)と決める。
①売上から原価をひいて経費をひく。②そこからかかった時間かける労働単価をひく。
これがゼロならばとんとん。マイナスになれば赤字という計算です。
この数字から逆算すれば、「これ以上働いたら、赤字になる」という判断ができます。無理に働いて売上がのびればいいが、大して変わらないのであればそれ以上しないという判断もできます。
①と②を比較して割合を出せば100%ならとんとん。100%を下回ると赤字ということになります。逆を言えば例えば120%あるいは130%を指標とすれば20%、30%の利益蓄積があるということになります。
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☆☆☆20世紀型価値観=過剰消費、過剰労働を見直す⇒余力を作り出すことで生産性が上がる
そして労働しない時間はたっぷりと土壌を休めさせられるので、環境にもやさしい。結果農薬や肥料の投入量も減り、原価が減って利益が上がっていく。作物の質も上がり、単価が上昇していく。
規模を拡大するのは簡単ですが、そうすると採算がどんどん悪くなる。だから、政府が主導している大規模化などのアメリカ型農業への移行には反対。そしてJAは寄生虫なので、利用しない。こうした500万農家がどんどん増えることこそが、日本の農業の未来の可能性だと仰っています。半農半Xとまではいきませんが、確かにこうした農業が増えれば食糧自給率もあがっていきそうです。
著者は小規模化を提唱されていますが、規模拡大→売上増→収入増という認識に対して、規模縮小→経費減→収入増という考え方をされていると感じました。
例えば、売上500万で原価経費が350万だとします。収入は150万です。規模を拡大したとして、もしも拡大規模と経費増の割合が同じであれば売上が1000万になっても経費が700万になり収入は300万。労働時間が同じであれば、収入が倍になったことになりますが、拡大すれば労働時間も増えて、結局利益率は変わらない(むしろ悪化する危険性のほうが高い)。
逆に規模を縮小し、売上が100万減っても、経費が100万(以上)減ればいいじゃないかという発想なのです。市場拡大が当たり前の社会では後ろ向きと受け取られそうですが、結果的に利益はどんどん上昇していく。著者は「これが21世紀型の生産だ」と言われています。
著者の言われていることを一部引用、まとめてみると20世紀型の価値観と21世紀型の価値観には以下のような違いがあります。
・20世紀型価値観
朝から晩まで無理して働く 消費こそ美徳 時間を犠牲に金儲け 上昇志向と大量生産
・21世紀型価値観
ゆとりをもって働く 物を大切に 時間こそ大切 身の丈志向と少量生産
今後、無理と無駄が多い価値観は転換していくのだと言われています。そして創出した余力時間を骨休めだけではなく、改良や追求など有効に使うことで生産性だけでなく充足も大きくなるのです。
それにしても、20世紀型の価値観とはどこから来たのでしょうか。
☆☆☆余力を創り出せて初めて大衆が特権階級による支配=社会問題に立ち向かえる基盤ができる。⇒新たな社会実現基盤としての農業の可能性
20世紀型価値観と言って思いつくものに、例えば民主主義や資本主義があります。
資本力を武器にして、金貸し勢力が王侯・貴族から国家の支配権を奪うために作り出したのが、近代思想とりわけ民主主義である。その後、金貸し勢力はこの資本力と民主主義を武器にして、国家を動かし、自分たちに都合のいい制度・法律を作ってきた。
「金貸しが大衆を利用するための民主主義:大衆には名前だけの民主主義」
現在、官僚やその背後にいる金融資本家など社会を牛耳っている特権階級によって様々な社会問題が起こっています。農業においても、TPP圧力やモンサントの種苗支配などにもその影響は及んでいます。
この本を読んでいて可能性を感じたし、思い出した文章があります。
(引用者注記:金貸し支配によってもたらされた経済破局に対して軟着陸していく過程において)
『従って、食糧も含めて物的生産に必要な国民の労働時間は5時間程度に縮小する。
ここで、仮に農共と企業との交代担当制において、企業では従来どおり8時間働くとすれば、農村共同体での労働時間はわずか2時間となる。いったい、残りの時間は何をするのか?これは、まったく新しいスタイルの生活が始まるということであり、大胆な頭の切り替えが必要になる。』
「潮流予測4 農(漁)村共同体の建設」>
(引用者注記:悪徳エリートや金貸しによる支配に対して)
『運動を立ち上げるには、余力と拠点が要る。更に、運動を成功させるには、理論が必要になるし、広宣活動も必要になるし、情報収集も必要になるが、理論を追求するにも、広宣活動を展開するにも、情報を収集するにも、膨大な余力(時間)が必要になる。そして、もちろん、それらの活動は、何れも専任した方が集中できて高度化してゆくので、専任化した方が有利になる。』
「大衆には、運動を立ち上げる余力が無い→余力を与えられた悪徳エリートが支配する社会」20世紀型価値観とはまさに悪徳エリートたちによってつくられたものであったのだと思います。その価値観からの脱却に、現在の支配状況を突破できる可能性があります。
そうして価値観から脱してみると生産性も上がり、しかも余力も創出できる。自然の摂理にも近い。農業というライフスタイルの可能性がまたひとつ見つかります。
単に経営採算だけの問題ではなく、閉塞した社会を突破する実現基盤とも思えるのです。
今回、余力を生み出すことが現実に実現できているという事例が既にあるということに可能性を感じると同時に改めて農業ってすごいなと感じました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
P.S. 「農!黄金のスモールビジネス」おすすめです。投稿者 hirakawa : 2012年06月09日 TweetList
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