食と農の談話室 |
メイン
2009年03月16日
生産と消費を繋ぐ「農」の教育力
食と農を結ぶさまざまな体験の場に子どもを置いて、子どもに、地域を誇りに思う心を育てたい。
子どもに、食と農、いのちのつながりがわかる心を育てたい。
――そんな熱い思いで、いま全国に広がっているのが、田んぼや畑での「農業体験活動」。
農水省では、平成20年度に、全国で139の協力団体とともにモデル事業をすすめ、体験活動の「効果」も検証している。
るいネット農家が「先生役」の「教育ファーム」で地域が元気になるより引用
■「教育ファーム」の成果「カレーライスパン」とは?
まずは、子どもには、地域を変える力があると実感させてくれる兵庫県佐用町の生活研究グループ「ほほえみ会」の取り組みを紹介したい。
会員八名、平均年齢70歳をこえた「ほほえみ会」の代表、井口美子さんは、地元の小学生から「駅ばあちゃん」とよばれている。
佐用町は、兵庫県最西端の中山間地域。町の中央に、道の駅「宿場町ひらふく」がある。鳥取方面に抜けるバイパス国道が走り、昔の「平福」は因幡街道の宿場町としてにぎわった。
「ほほえみ会」は、その「道の駅」で直売所(因幡街道平成福の市)を運営しており、井口さんは道の駅のばあちゃんだから、「駅ばあちゃん」の愛称で親しまれているわけだ。
井口さんたち「ほほえみ会」の「教育ファーム」活動の対象は、地元の利神小学校3年生19名。地域の小学校4校が統合してできた小学校だが、児童数97名の小規模校だ。3年生の体験活動の舞台は、学校の近くの田畑と直売所、さらに廃校になった小学校の給食室を譲り受けた「ほほえみ会」の食品加工所。「ふれあい加工所」だ。
代表の井口さんは、平成10年から利神小学校3年生の「総合学習」のゲストティーチャーとして体験学習にかかわってきた。「学校の教室では先生から基本をしっかり勉強して、ばあちゃんのところにきたら、自分の力をどんどん発揮してや」と話しながら、井口さんは子どもたちを一人前に扱う。
体験させているのは、黒大豆や野菜つくり。そして直売所の商品開発にも3年生のアイデアを借りる。昨年登場して一躍人気をさらっているのはA君の開発した「カレーライスパン」だ。「ほほえみ会」では、平成17年に佐用産コシヒカリを使った米粉パンを開発し、きなこ米粉パンが定番商品になっているのだが、ここへ新たに仲間入りした格好だ。
2年前の夏休み、当時3年生の子どもたちへ、おいしいパンのアイデアを宿題にしたのがきっかけだ。A君は加工所での試作の当日、炊いたご飯とカレーをパンの具として持ち込んで、白いご飯に冷めたカレーをのせて米粉のパン生地で包んだのだ。井口さんもまさかと思ったアイデアだが、焼いてみるといい香りがして、うまい。試作品8個はたちまち子どもたちのおなかの中へ収まった。
カレーパンではない、カレーライスパン。A君が4年生になった昨年4月、満を持して直売所で発売を開始。1個130円、限定30個が、今は限定50個へ。「利神小のカレーライスパン」は10時には売り切れる人気商品になった。開発者のA君は、引っ込み思案で会話も苦手な子どもだったが、カレーライスパンがほめられて自信がついたのか、いまでは教室のリーダー格に変身したという。
平成20年度の栽培体験は、あえて子どもがきらいなピーマンを育てたが、とれた「ジャンボピーマン」を子どもたちはバリバリ食べる。こんなおいしいピーマンなら給食にも出してほしいと子どもたちから要望が出て、給食の食材になった。もちろん残食もない。
子どもたちが畑でかいた汗と、子ども自身のアイデアが、学校の給食を変え、直売所を元気にしている。
■「教育ファーム」は何をめざすのか
こうして各地で取り組まれる「教育ファーム」は何をめざすのか。
(1)教育ファームは「食育」の場である。
「食べる」の前に、生命あるものを「育てる」仕事があることを伝えたい。
人間(ひと)は食べものを育て、その食べものに育てられていることを伝えたい。
言葉で教え込むのでなく、リアルに体で感じ、気付き、発見させること。そのための「本物体験の場」を提供することが「食育」の本道であろう。
(2)教育ファームは「体験学習」の場である。
教育ファームは、生産者(農林漁業者)の指導を受けながら、作物を育てるところから食べるところまで、一貫して体験する機会を提供する取り組みである。
この総合的な体験を通して、自然の力やそれを生かす知恵と工夫を学び、生産の苦労や喜び、食べものの大切さを、実感を持って知る。
(3)教育ファームは「気付き」の場である。
見る・聞く・触る・嗅ぐ・味わう「五感」フル回転の「体験」を通して、3つのよさに気付かせたい。
〔1〕地域のよさ…人・風土・食文化など
〔2〕自然の力を生かす農業のよさ・面白さ
〔3〕自分のよさや可能性…やりとげた喜び
この「気付き」が深いほど、意識と行動の変容・成長につながる。
(4)教育ファームは「変容・結びあい」の場である。
子どもの未来を真ん中におく取り組みで、地域の結びあいを密にし、お互いが変わる。
子どもが変わり、会話が増えて親(家庭)が変わる。家庭と地域の連携が深まって、地域・学校が変わる。
体験にかかわる生産者(農家など)も変わる。やりがいが感じられて、暮らしに張り合いが増す。
そしていま、小学校や中学校に、この教育ファームと志を共にする「追い風」が吹いている
文部科学省の「学習指導要領」が改訂され、全国の小中学校で、この4月から、これまで以上に「体験型学習」が重視される。農業生産者としても、子供たちの教育を通して地域との密接な繋がりを作り出し、地域との協働や生産基盤を整える切っ掛けにしていきたいと思う。
投稿者 takuya : 2009年03月16日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2009/03/811.html/trackback
コメント
投稿者 にほん民族解放戦線^o^ : 2009年9月4日 22:09
>シュメール文明は、自然を克服する文明であった。
確かにそうですね。
同時に、彼らの労働観が影響しているように思います。
勤勉な日本人からは考えにくいのですが、
既にシュメールでは、労働は奴隷(労働者)が行うもになっており、市民にとってはその対価として得られる銀が重要だったようです。
また、王は人気取りのために「今年は耕作しなくていい」といった徳政令を出した記録があります。
投稿者 Quetzalcoatl : 2009年9月22日 23:20
新しい「農」のかたち | 農業の歴史を紐解きながら、循環型社会を考える 4.メソポタミア文明はなぜほろんだのか?
投稿者 wholesale bags : 2014年2月10日 02:19
hermes 900 新しい「農」のかたち | 農業の歴史を紐解きながら、循環型社会を考える 4.メソポタミア文明はなぜほろんだのか?
投稿者 cheap hermes black purse : 2014年2月18日 21:30
中東・ヨーロッパの征服・破壊のパラダイムのはじまり(ギルガメシュ叙事詩より)
以前から興味のあった、NHKスペシャル四大文明:第二集「メソポタミア」を、先日やっと観ることができた。
この番組では、栽培の始まりから「文明の黎明期」≒…