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2022年09月08日
【これからの林業を考える】シリーズ1~日本の木材価格が世界で最も安くなる構造と山主の活力を削ぐ構造~
※画像はこちらからお借りしました。
1本の丸太が市場に出るまでに、50~100年の年月がかかります。
木材を供給する「山主」は、50年もの間、季節ごとに下記の作業を繰り返し行います。
①地拵え(ぢごしらえ)→植林するための環境の整備
②植林・植栽 →苗を人力で運搬し、急斜面で植林
③下草刈り→植林した苗木が成長できるように数年間の間、雑草の伐採
④除伐・枝打ち→節にならないように枝打ち
⑤間伐→他の木の成長を妨げる木の伐採
⑥主伐・皆伐→市場に流通させる木材の伐採
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その他にも、鹿などの動物が苗木を食べてしまうため、柵などを設けて、獣害対策を行うなど、山主は手塩にかけて木の成長を見守っていきます。
しかし、これだけの仕事を何十年も続けているのに対して、日本の木材は驚くべき価格で売られています。
◯日本の丸太はタバコより安い?
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山主が何年も山の手入れを行っているのに対して、日本の「柱1本分(3m)のスギ丸太は530円」なのが現実です。
現在のタバコの価格が550円ですから、いかに日本の丸太が安いかが実感できると思います。
山主が20mの木を50年かけて育てても、原木の価格は「1本あたり約3500円」にしかならないのです。
それなのに、山主は人を雇いながら上記の仕事を50年間も山を育て続けているのです。
◯日本の林業は儲からない?
日本の木材価格のピークは1980年で、そこから木材の価格は下落の一途をたどり、2017年時点でヒノキの価格は4分の1、スギの価格は3分の1にまで下落しています。
ほとんどの山主は赤字経営を余儀なくされていると言われています。
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その背景には、日本の伝統的な真壁の建築が減り、柱を見せない大壁の建築が増えたことで、「美しい木材」ではなく、「安くて寸法精度の高い木材=外国産材」が消費者に求められるようになったことが要因として上げられます。
◯山主は利益が上がらない日本の林業
日本の木材の輸出の6割は丸太材といわれています。
その輸出先は国、韓国、台湾であり、品質が低く安い木材が梱包材用の木材として輸出されています。
中国の木材バイヤーからは「日本における木材の魅力は価格、世界一安い」と言われるほど、日本の木材は世界では価格が安いと言われています。
「日本のスギの原木価格が11500円/㎥」なのに対して、「アメリカのベイマツは30100円/㎥」です。
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しかし、木材価格は原木が製材になるまでの過程で逆転します。
「日本の木材は高い」という印象が持たれることが多くありますが、日本の原木が高いのではなく、製材コストが高いために、エンドユーザーに届くまでに価格が何倍にも膨れ上がっているというのが現実なのです。
◯購入者優位の構造が木材の価格を押し下げる
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「日本の木材は品質が高い」というイメージを持たれることが多いと思いますが、製材業者から見ると日本の木は品質にバラツキがあるため製材コストが外産材と比較すると高くつくため、原木は安く仕入れたいという心理がはたらきやすくなります。
そのため、製材業者のなかには「事前に業者に根回し」を行い、競りで原木価格がつり上がらないように調整を行っていることもあると言われています。
一方で山主は原木が売れなかった場合、運搬料や手数料などの経費が掛かるため、安く買い叩かれても売らざるをえない購入者優位の状況も重なり、山主は安い価格で手塩にかけて育てた原木を低価格で販売することになります。
そして、さらに木材の価格下落に拍車を掛けているのは、国による補助金です。
◯原木価格の低下に拍車を掛ける国の補助金
現在の日本における林業が成立している背景には、国からの大量の補助金があります。
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日本は戦後の復興のために大量の木材を伐採したため、日本中の山がはげ山になりました。
そこで国は国家政策として、日本中の山に建築に使用できる木の植林を推し進めました。
そして、戦後植林した大量の木は現在伐採の時期=供給の時期を迎えており、国としては山々の木を市場に供給する必要があります。
しかし、市場は「安くて寸法精度の高い外国産製材」に支配されています。
(日本は空気売りと呼ばれる、必要寸法に満たない木を売る風潮が当たり前のように行われてきていた。)
そのため、木材を供給する先がなく、木材の価格が下落し、儲からない構造がさらに強固になっていきます。
そこで、国は木材の供給を促すために、林業に対して補助金を投じます。
しかし、これらの補助金は山主ではなく、伐採業者に注がれているため、山主にはほとんどメリットがありません。
山主は木材の価格が下落しているため、少しでも利益をあげようと、大量の木材を伐採し、木材を売ろうとします。
そして、問屋や製材業者は上記の供給量が多くなる構造を知っているため、買い取り価格をあげようとしません。
(ただし、原木が530円なのに対して、製材した木材はエンドユーザーには4.5倍近くの値段で取引されるため、製剤業者は利益を上げることができます。)
結果、供給過多の状態が続くため、伐採業者や製材業者は利益を上げられても、山主の利益は上がらない構造=原木価格が下落する構造が形成されていきます。
◯世界からは安さが求められ、品質は求められていない
上述したように、日本の木材は品質ではなく、価格が求められています。
そして、国内では製材コストが嵩むため、日本の木材は敬遠されてしまいます。
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何年も手入れしても低価格で取引され、外国の梱包材やバイオマス燃料にしか利用されない構造は山の手入れを行う山主の活力を削ぐ構造にあります。
国土の7割が森林に覆われる日本の林業を再生するには、新たな流通システム、供給システムの構築が必要になります。
今後は、日本における林業の歴史から、林業の状況、可能性を探っていきたいと思います。
【参考】
・絶望の林業(新泉社 田中淳夫著)
・小菅村の山を守る、「山師」の仕事とは?
・山師の仕事
・わかやま林業移住
・木の製品は高いのに、丸太は安い!?値段のギャップは意外なところにあり!
・日本の木材は世界一安い!?
・安い外材ってホント?木材価格の真相を探る
投稿者 tiba-t : 2022年09月08日 TweetList
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