2022年9月8日

2022年09月08日

「腸が作る健康の秘訣」第1回 腸を知るための土の仕組みとは・・・

「人は森であり、腹に「土」を内包しているー」
人にとって最も身近な自然環境は「腸内環境」であり、そこは人が根を下ろす「土」にあたる。土壌に暮らす微生物が、食べ物と共に腸内に移住したものが腸内最近の起源であり、人は今でも「食べる」ことを通して、外的な環境と接続しているのだ。日頃の食べ物が腸内の土作りの材料になり、消化や腸内細菌による発酵を通じ栄養豊かな土となる。それはまるで、森の落ち葉や動物の死骸から腐植土が作られるシステムと同じである。

上記の書き出しで始まるこの著書を拠り所にして今回のシリーズを進めていきます。

第1回は腸内と土はなぜ同じシステムなのかを著書から紹介してどういう原理で腸内の健康は維持されているのか、その仕組とは何かを考えてみたいと思います。

まず土の話からです。

森に足を踏み入れると、足元には苔やキノコが生え、落ち葉がびっしり敷き詰められています。小動物の糞や死骸も混ざっています。落ち葉を剥ぐってみると、小さな土壌動物が息づいています。ミミズ、ヤスデ、ダンゴムシ、さらに小さなヒメミミズやダニ、線虫もいます。彼らの役割は、主に落ち葉などの大きな有機物を粉々に分解することです。代表であるミミズの腸内には、落ち葉を分解して栄養に変える優秀な腸内細菌がいて、糞にして豊かな「土の素」を作ります。

1gに100億~1000億個―微生物だらけの表土

ミミズが糞として作った「土の素」をさらに分解するのは、目には見えないもっと小さな存在。土壌に暮らす微生物です。微生物には細菌、放線菌、菌類、ウィルス、土壌藻類、原生動物類(アメーバーや鞭毛虫など)がいます。微生物には粉々になった土の素を分解・発酵させることで、植物に吸収可能な栄養とします。微生物がいなければ、土は作られず、植物は生きられません。最終的にできた栄養豊富な生成物を腐食といいます。森で落ち葉をめくると出てくる黒褐色の部分です。「腐った植物」というのは汚名で、むしろ発酵による美しい錬金術の産物です。

微生物は、フルボ酸などの有機酸を産生します。この酸はとても重要で、土壌のphを最適化し、土壌微生物の活性から植物を元気にします。この腐植とミネラルなどの無機鉱物が混ざり合ってできるのが、土です。腐食を豊富に含む土を腐植土といいますが、たった1ミリの腐植土ができるまでにおよそ10年もの歳月がかかります。黒褐色の土は森が誕生して以来、多様な生命が生きては死に、微生物が発酵を繰り返して積み重ねた生命現象なのです。

地球上で最も微生物が活発なのは、こうした代謝が起きる土の表面(表土)です。

驚くことに、たった1gの土には100億から1000億個、6000~5万種ほどの細菌が暮らしているとされています。こうして維持された陸地の生態系は水を通じて、河川や海の生態系にも影響を与えます。全ての生態系はネットワークを形成し、相互依存関係にあるのです。人もその一部なのです。
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以上が今回紹介した土のシステムの部分です。土とは微生物の場であり、微生物が様々な食物連鎖のまさに土壌になっているのです。次回はその仕組が人の中でどのように作られているかを紹介していきますが、押さえておきたいのは土の以下の部分です。

>腐敗土は発酵による美しい錬金術の産物です。
微生物は、フルボ酸などの有機酸を産生します。この酸はとても重要で、土壌のphを最適化し、土壌微生物の活性から植物を元気にします。微生物が発酵を繰り返して積み重ねた生命現象なのです。

 

投稿者 tano : 2022年09月08日  

2022年09月08日

【これからの林業を考える】シリーズ1~日本の木材価格が世界で最も安くなる構造と山主の活力を削ぐ構造~

※画像はこちらからお借りしました。

1本の丸太が市場に出るまでに、50~100年の年月がかかります。

木材を供給する「山主」は、50年もの間、季節ごとに下記の作業を繰り返し行います。

①地拵え(ぢごしらえ)→植林するための環境の整備
②植林・植栽 →苗を人力で運搬し、急斜面で植林
③下草刈り→植林した苗木が成長できるように数年間の間、雑草の伐採
④除伐・枝打ち→節にならないように枝打ち
⑤間伐→他の木の成長を妨げる木の伐採
⑥主伐・皆伐→市場に流通させる木材の伐採


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その他にも、鹿などの動物が苗木を食べてしまうため、柵などを設けて、獣害対策を行うなど、山主は手塩にかけて木の成長を見守っていきます。
しかし、これだけの仕事を何十年も続けているのに対して、日本の木材は驚くべき価格で売られています。

 

◯日本の丸太はタバコより安い?

※画像はこちらからお借りしました。

山主が何年も山の手入れを行っているのに対して、日本の「柱1本分(3m)のスギ丸太は530円」なのが現実です。
現在のタバコの価格が550円ですから、いかに日本の丸太が安いかが実感できると思います。

山主が20mの木を50年かけて育てても、原木の価格は「1本あたり約3500円」にしかならないのです。
それなのに、山主は人を雇いながら上記の仕事を50年間も山を育て続けているのです。

 

◯日本の林業は儲からない?

日本の木材価格のピークは1980年で、そこから木材の価格は下落の一途をたどり、2017年時点でヒノキの価格は4分の1、スギの価格は3分の1にまで下落しています。
ほとんどの山主は赤字経営を余儀なくされていると言われています。


※画像はこちらからお借りしました。

その背景には、日本の伝統的な真壁の建築が減り、柱を見せない大壁の建築が増えたことで、「美しい木材」ではなく、「安くて寸法精度の高い木材=外国産材」が消費者に求められるようになったことが要因として上げられます。

 

◯山主は利益が上がらない日本の林業

日本の木材の輸出の6割は丸太材といわれています。
その輸出先は国、韓国、台湾であり、品質が低く安い木材が梱包材用の木材として輸出されています。

中国の木材バイヤーからは「日本における木材の魅力は価格、世界一安い」と言われるほど、日本の木材は世界では価格が安いと言われています。
「日本のスギの原木価格が11500円/㎥」なのに対して、「アメリカのベイマツは30100円/㎥」です。


※画像はこちらからお借りしました。

しかし、木材価格は原木が製材になるまでの過程で逆転します。

「日本の木材は高い」という印象が持たれることが多くありますが、日本の原木が高いのではなく、製材コストが高いために、エンドユーザーに届くまでに価格が何倍にも膨れ上がっているというのが現実なのです。

 

◯購入者優位の構造が木材の価格を押し下げる


※画像はこちらからお借りしました。

「日本の木材は品質が高い」というイメージを持たれることが多いと思いますが、製材業者から見ると日本の木は品質にバラツキがあるため製材コストが外産材と比較すると高くつくため、原木は安く仕入れたいという心理がはたらきやすくなります。

そのため、製材業者のなかには「事前に業者に根回し」を行い、競りで原木価格がつり上がらないように調整を行っていることもあると言われています。

一方で山主は原木が売れなかった場合、運搬料や手数料などの経費が掛かるため、安く買い叩かれても売らざるをえない購入者優位の状況も重なり、山主は安い価格で手塩にかけて育てた原木を低価格で販売することになります。

そして、さらに木材の価格下落に拍車を掛けているのは、国による補助金です。

 

◯原木価格の低下に拍車を掛ける国の補助金

現在の日本における林業が成立している背景には、国からの大量の補助金があります。


※画像はこちらからお借りしました。

日本は戦後の復興のために大量の木材を伐採したため、日本中の山がはげ山になりました。
そこで国は国家政策として、日本中の山に建築に使用できる木の植林を推し進めました。

そして、戦後植林した大量の木は現在伐採の時期=供給の時期を迎えており、国としては山々の木を市場に供給する必要があります。

しかし、市場は「安くて寸法精度の高い外国産製材」に支配されています。
(日本は空気売りと呼ばれる、必要寸法に満たない木を売る風潮が当たり前のように行われてきていた。)

そのため、木材を供給する先がなく、木材の価格が下落し、儲からない構造がさらに強固になっていきます。

そこで、国は木材の供給を促すために、林業に対して補助金を投じます。
しかし、これらの補助金は山主ではなく、伐採業者に注がれているため、山主にはほとんどメリットがありません。

山主は木材の価格が下落しているため、少しでも利益をあげようと、大量の木材を伐採し、木材を売ろうとします。
そして、問屋や製材業者は上記の供給量が多くなる構造を知っているため、買い取り価格をあげようとしません。
(ただし、原木が530円なのに対して、製材した木材はエンドユーザーには4.5倍近くの値段で取引されるため、製剤業者は利益を上げることができます。)

結果、供給過多の状態が続くため、伐採業者や製材業者は利益を上げられても、山主の利益は上がらない構造=原木価格が下落する構造が形成されていきます。

 

◯世界からは安さが求められ、品質は求められていない

上述したように、日本の木材は品質ではなく、価格が求められています。
そして、国内では製材コストが嵩むため、日本の木材は敬遠されてしまいます。


※画像はこちらからお借りしました。

何年も手入れしても低価格で取引され、外国の梱包材やバイオマス燃料にしか利用されない構造は山の手入れを行う山主の活力を削ぐ構造にあります。

国土の7割が森林に覆われる日本の林業を再生するには、新たな流通システム、供給システムの構築が必要になります。

今後は、日本における林業の歴史から、林業の状況、可能性を探っていきたいと思います。

 

【参考】
・絶望の林業(新泉社 田中淳夫著)
小菅村の山を守る、「山師」の仕事とは?
山師の仕事
わかやま林業移住
木の製品は高いのに、丸太は安い!?値段のギャップは意外なところにあり!
日本の木材は世界一安い!?
安い外材ってホント?木材価格の真相を探る

投稿者 tiba-t : 2022年09月08日