『稼ぐ農』シリーズ7~集団化したリンゴ農家、産業を変革する新しい農のカタチ |
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2022年05月19日
【コラム】タネの多様性を守り続ける、ミャンマーの草の根ネットワーク
日本の9割以上の種子(タネ)は、その土地で収穫されたものではなく、種苗メーカーの手によって品種改良された1代限りの種子が広まっています。その土地に根差した農作物が世の中から無くなってしまうこと、そして、改良された品種による人体への影響が分からないことなどには、危機感を感じます。
そのような世の中に変わりつつある中で、草の根的に種子の多様性を地域で継承し続けている国が、ミャンマーです。集団原理に根差した、理にかなった種子交換システムが、町や村を超えて行われている。
画像は、こちらからお借りしました。
■ミャンマーのタネを守る草の根ネットワーク
ポイントは2つあります。
1点目は、農作物の流通に合わせて、様々なタネを混在させる仕組みを作っていること。例えば、A・B・Cという地域があった場合、Aという土地には、Bという土地のタネを受け渡す。そして、Bという地域には、Cという地域のタネを渡すような仕組みが作られており、ある程度、タネがミックスするような基盤がある。
これは、人間で言えば、ある地域にとどまった血縁だけでは、民族としての進化が停滞するような発想と同様で、新しい血を入れることによって、地域の農業を強くしていこうという考え方がある。
この仕組みにより、農作物の多様性が保たれる。つまり、自然外圧に適応しようとする品種を無限に生み出すことができ、持続的な農業が可能となる。
画像は、こちらからお借りしました。
もう1点は、生命のシンボルとして、種子が扱われていること。各地域で豊作を祈る「祭り」が執り行われ、その際に、近隣の町も挙げて、大々的な種子の交換が行われているのだ。この祭りの場では、女性が主役となり、多数の種子を持ち寄り、農家・家庭に売って回っているのだ。そして、この祭りが終わった後には、一気に種子の植え付けが行われていく。
このような儀式は、かつての祭りの際に行われていた乱交にも近い精神性を感じる。小さな単位での種子市場ではなく、町の総力を挙げてた種子のシャッフル・継承は、強い種を残す、多様な種を残すという意味で、大きな意味を持っているように思う。
画像は、こちらからお借りしました。
以上、農作物の種子(タネ)の多様性を保つ仕組みは、上記のような大きな集団レベル・町レベルで作りだしていく重要な課題だということがよく分かる。おそらく、農業という生産課題だけを切り離して考えるのでは不十分で、共同体としての基盤をどのように再生していくのか?という集団再生・文化創出とともに構築していく必要がある課題だと言える。
つまり、集団として子孫を残し育てていくのと同様なくらい重要な課題として位置づけていく必要がある。
投稿者 hasi-hir : 2022年05月19日 TweetList
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