『食糧問題』シリーズ4:世界食糧危機を煽っている「国連」とは?その狙いは何なのか? |
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2022年01月07日
【世界の食と農】第4回 オランダ~世界トップレベルの生産力にのし上がったオランダの「強い農業」。~
前回までの投稿では、アメリカに焦点を当てて、近代的な大規模農業による世界の食糧支配と、一方で、大衆発の「小さな農業」で農を取り巻く潮流が転換していることを見てきました。
今回の投稿では、国を変えて「オランダ」を見ていきたいと思います。オランダは、チューリップのイメージが強いと思いますが、世界最先端レベルの栽培技術を持っています。農業分野も同様に、1990年代後半から最先端技術に国策として力を入れ、今や世界輸出2位の「強い農業」まで成長しています。今回は、この強さの背景に掘り下げていきたいと思います。
■オランダの農業改革
オランダの歴史として特徴的なのは、アメリカや日本・中国のように、近代工業国家とは一線を画したことです。第一次大戦や二次大戦にも直接参加せず、軍事国家化には踏み入れず、また戦後以降の近代市場の波に飲まれることもありませんでした。どちらかと言えば、国内で地道に農業などの産業を成長させてきました。
しかし、EU加盟と同時に、国家間の関税はかからない影響を受け、スペインやポルトガルから安価な野菜が大量に輸入されるようになりました。その結果、オランダの農業は壊滅的な被害を受けたのです。そこで国家レベルで、農業生産を改革する方向へと舵を切り、それが現在の強い農業の基盤となる「施設園芸型の大規模農業」に活路を見出すことに至りました。
従来のような大規模農地に大量生産して安価に売りさばく姿ではなく、高性能な技術を駆使して良質なものを生産様式を確立しました。これが、他国の農業スタイルとは一線を画す、オランダの最大の強みです。
画像は、こちらからお借りしました。
■20年で輸出大国へと成長
オランダが本格的に力を入れ、成果が出始めたのが2000年頃。約20年で、世界輸出大国2位にまで成長しました。
オランダの最先端農業は、分かりやすく言えば、あらゆる設備が整ったビニールハウスのようなイメージです。自然採光のコントロール、水の循環システム、Co2やたい肥などをコンピュータで完全に制御しています。自然エネルギーと、最先端技術をうまく融合した「新しい農」のかたちだと言えます。
画像は、こちらからお借りしました。
オランダ農業で最も優れているのは、非常に高い生産性です。
・面積あたりの収量が、非常に高い ⇒ 日本の8倍
・面積当たりの人員が、非常に少ない ⇒ 日本の1/5
・農家あたりの生産面積が、非常に大きい ⇒ 日本の18倍
これによって、日本では「儲からない」と言われる農業ですが、オランダでは「補助金なしで、十分に事業として成立する経営基盤をつくりきった」ことが凄いところです。
最先端技術も駆使していますから、「農業経営者になりたい若者」も少なくないことは、容易に想像できますね。産業としてしっかりとした足腰ができつつあります。
なぜ、ここまで生産力の差が出るのか?
それは、オランダでは、従来型のように田んぼ・畑で野菜をつくる農家のようなかたちではなく、「企業の農業参入」が飛躍的に増えていることが背景にあります。これはむしろ、補助金頼み・国家頼みではなく、まっとうな生産圧力と志が貫徹されている企業だからこそ、これまでとは全く異なる新産業構造を生み出すことができたのだと考えられます。
画像は、こちらからお借りしました。
■日本の異業種参入も増加傾向
場所は変わって日本ですが、実は同様に、企業参入の潮流が生まれ始めています。約20年前までの企業参入は、土木重機を活用した建設業などの参入が多くありました。しかし昨今は、全く農業と関係のなかったICT企業やベンチャー企業が参入しています。オランダと同様に、従来の生産様式から改革し、品質と経営を両立していこうという新しい流れが生まれつつあります。
日本では、まだ萌芽に留まっていますが、オランダの農業戦略を真似ながら、新しい農のかたちを生み出していくことも重要な課題だと言えます。
投稿者 hasi-hir : 2022年01月07日 TweetList
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コメント
投稿者 chinitch kawatera : 2022年1月19日 10:46
真似ができたら大したものですね。
我が国では、人手不足はあるが頭脳不足の話はありませんね。