2022年1月28日
2022年01月28日
『農業と政治シリーズ』7回 農協は必要か否か?
これまでシリーズで農協について扱ってきました。農協は高度経済成長が始まる1960年代から変質し始め、政治権力を得て、資金をかき集め1980年代にはその本業は農業から金融・不動産へと大きく変質。2000年前後には農協はその内実が国民に見通され、社会的バッシングを受けていきます。その後変革、変化を唱えてきましたが、未だにその組織の体力、巨大さは維持されています。
このシリーズでは農協って何、農協は是か否かを中心に追求してきました。江戸時代の先祖株組合から明治の農業会を経由して、戦後のGHQ下で誕生した現在の農協に至るまで、その本質は何か、組織の基盤となる善意は何かを探ってきました。
しかし、時代を経て組織が大型化していくに連れ、農協は大企業にもまさる日本最大の巨大組織、巨額の利益を上げる収益機関に成っていきます。農協の中枢機関である全農は8000人の職員で年間4兆3千億円の取り扱いをしており、全農の下には下部組織としてJA(農協)を従えており、都道府県、市町村に支部があり、全国で1000万人以上の組合員を抱える巨大組織がネットワークとして広がっています。
農協は農協内部や農協関係者、個人農業者にとってはなくてはならないものになってきましたが、農業それ自体にとっては決して良い方向に動いてきたとは言えません。このシリーズの目的である農協って何、農協は是か否かについてシリーズ中間で一旦まとめて、以後の展開に入りたいと思います。
「農協は利益・権力団体である。農業の発展、国民の安全にとって必要か否かについて・・・必要ないのではないか」という立場で一旦検証してみます。
■本来の農協に求められている役割はなにか?改めて全農のHPを見ると下記のように書かれています。
「全農の役割は、生産者の営農とくらしを支援し、農業と地域の活性化を図るとともに、安全・安心な農畜産物を消費者に安定的に供給すること」
求められる役割とはまさにそうだと思いますが、実態は先の記事に書いたように農業人口の低下、米の生産制限、減反、外国輸入圧力への迎合、日本の食の変化の追従、先導といった、農業の発展に棹さすことができず、農業のジリ貧状態を容認、或いは作り出してきました。
農協の役割は本音では以下のようなことかもしれません。
「全農の役割は組織の維持、拡大、利益の追求にあり、会員数を維持、拡大するために専業農家だけでなく兼業農家含めて保護する役割を果たし、農業という道具を通じて国(=国民)から補助金という収入を得る主体になる」
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一方でここ数年、企業が農業を始める事象が多数出てきており、農業そのものとってようやくオランダやドイツといった企業農業が我が国でも始まり、大きな可能性となっています。しかし、それら企業農業は農協とはまったく無関係の位置にあり、また農協側も企業を活用したり育成したりする立場をとっていません。これは農協が農業全体より弱者=個人農家の為にあることを証しており、さらに個人農家自身にとってみてもやる気のある農業家もない農家も同等に扱われ、農業の質、量を上げることに対して支援しているとは言えません。
巨大企業で権力体質と書くと悪いところばかりが目立ってきますが、別の視点で書くならば農協がなくても農業はやっていけるのか、日本の農業は発展していけるのかという部分で改めて考えてみてはどうかと思います。
農協の役割とは
- 農業技術の指導、拡大
- 農業生産物の仲買、販売、流通
- 土地の買収、斡旋
- 地域共同体の発展、活性化
- 農業事業者への融資
- 農業機械の貸し出し、維持保全
- 国内農業の保護、自給率の上昇
- 肥料、農薬の輸入買付、販売、種の輸入買付、販売
- 加工食品の工場の一元化、販売
- 農生産品の直接販売
- ブランド商品の開発、販促
等、思いつくだけでもたくさん出てきます。
これら、今この時代に農協がなければ成立しないのか?
それを一つずつ見ていき、必要か否かを検証していく事であぶり出していきます。 続きは1週間後に・・
投稿者 tano : 2022年01月28日 Tweet