『世界の農と食』シリーズ:イントロ~世界の農は近代的な大規模農業から、どう構造転換していくか?~ |
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2021年12月09日
『農業と政治』シリーズ、はじめます~農協は、農業・農家・消費者に何をもたらしてきたのか
新たなシリーズ【農業と政治】。
文字通り私たち国民の食を守る仕事=農業。この基幹産業の発展あるいは衰退に、政治はどのように関わってきたのか。そして今後、どのような政策が求められていくのか。
本シリーズでは、政策の実働部隊ともいえる「農業協同組合」の成立背景・活動の歴史と実態の解明に照準を当てながら追求を深めていきます。
そもそもの設立目的は農家の保護・発展と人材育成にあると言われますが、昨今は金融業としての色合いが濃くなってきたその姿に対して、厳しい世論を向けられることもしばしば。農協という存在が農業界に与えてきた影響とは。そして現在~未来にどのような期待がかかっているのか、否か。
シリーズ初回となる今回は、江戸時代にあったと言われる農協の前身「先祖株(せんぞかぶ)組合」の成り立ちをご紹介していきます。
●「農協」の祖:大原幽学(1797~1858年)
・江戸末期(天保・嘉永・安政)は混乱の時代。飢饉による食糧不足や厳しい年貢の取り立てに疲弊した農民たちは土地を捨てて逃げ出し、農村は荒廃していく状況にあった。
・このような時代に、農村の立て直しに尽力したのが大原幽学。荒れ果てた長部村(現在の千葉県旭市)を拠点に、合理的な農業経営と和と孝を中心とする生活仕法を合わせた実践道徳「性学」を説き、農村改革に取り組んだ。(簡単に言うと性学とは欲に負けず人間の本性に従って生きる道を見つけ出そうとする学問)
・その代表的なものが【先祖株(せんぞかぶ)組合】の結成。お互いに助け合い、生活を改善していくための村ぐるみの組織で、世界最初の協同組合となった。
組合員に農地の一部を提供してもらい組合の共有財産とし、組合員となった貧農にはその土地を耕作してもらい、そこから上がる利益を積み立て、そのお金を潰れ百姓の復興、組合の運営費、子孫のための積立などに充てていった。
また農業だけではなく日常生活の細部に至るまで規律をつくり心を指導し、村の復興に貢献した。
・幽学の農村改革は領主から表彰を受けるほど成功したが、門人が増え、領地を越えて農民が集まるようになると、幕府の嫌疑を受けるようになる。幽学が禁止した博打は博徒にとっては収入源であり、また労働者を確保する手段でもあったため、博徒との対立も深めていく。
・ついに教導所に博徒が乱入する事件が起こり、これを機に6年に及ぶ奉行所の取り調べが為された。判決は、教導所の取り壊し、組合の解散、幽学は「押込百日」。幽学は刑期を終えて失意のうちに62歳で自刃を遂げる。
<参考>
・世界初の協同組合「先祖株組合」
・大原幽学記念館を訪ねて・・・
こうした経緯から分かるのは、組合設立の背景には、飢饉に見られる自然外圧に加えて強い私権圧力が社会に働いており、それらが相まって村落共同体が崩壊しかねない危機的な状況があったということ。そして設立は民衆発(指導者と労働者)で成され、その後権力闘争に巻き込まれた結果解散を余儀なくされた。
その後の農協は、新たな法制度の下で明治政府、戦後はGHQの介入を経て現在につながる組織を形作っていくことになりますが、江戸末期に見られるこの出自が、後の農協組成、国の政策、農業・農家の発展、活力にどのような影響を与えていくのか。
今後の追求をもって明らかにしていきたいと思います。
今後の追求ポイント、、、
★そもそも江戸時代の農業事情はどうだったのか?(初期~末期にかけての変遷)
★明治時代につくられた農協の主旨は?
★戦後GHQの介入が、農業・農協・農家に与えた影響とは?
★減反政策はなぜ実現されたのか?
★…農協は「必要悪」?
★次代の農協に求められる役割、あるいは農協に代わる機関、そして政策とは?
等々、お楽しみに。
投稿者 negi : 2021年12月09日 TweetList
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