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2019年08月29日
農をめぐる、世界の闘い11~先端を行くラテンアメリカⅠ.破壊される郷土食の伝統
前回、【砂漠化する先進国の食事】で触れた、”遺伝子組み換えまみれで栄養スカスカのクズ”と化した、トウモロコシ。
これがまた大量に、日本に輸入されることになってしまった。
…かつて、米国・多国籍企業の「お得意先」であった、ラテンアメリカ。
しかし現在、彼らは敵の戦略を見抜き、将来世代のために、失われつつあった郷土食の伝統を取り戻そうとしている。
以下、転載(タネと内臓 著:吉田太郎)
栄養学の専門家、サンパウロ公衆医科大学の【カルロス・モンティロ教授】は、サンパウロ州の貧しい村やスラムで小児科医として働くことからそのキャリアを始めた。1970年代当時、人々は飢え、体重が不足し多くが貧血だった。けれども、いま教授が主にかかわっているのは栄養失調ではなく肥満問題だ。1970年代中頃にはブラジルでは肥満者が男性は3%以下、女性は8%以下しかいなかったのが、現在では成人の18%が肥満で、慢性病や糖尿病のように食と関連した病気も激増している。
なぜなのか。教授は人々の食生活を何年もかけて解析した。そして、1987~2003年にかけての各家庭の食費データから奇妙なことに気づく。栄養学者たちのアドバイスにしたがって、肥満の原因とされる砂糖や大豆油の消費量が減っているのに肥満が増えていた。コメやマメ、キャッサバ、生鮮野菜、ミルク、卵の消費が減る一方、インスタント麺、ソーセージ、パンやクッキー等のシリアル製品、ソーダの消費量が増えていた。パーム油やコーンシロップ、人工甘味料から製造されるこうした食べ物を教授は「超加工食品」と呼ぶ。そして、それを食べることが肥満の原因だと指摘する。伝統的な栄養学でも脂肪、砂糖、塩分過多となるために加工食品は不健康とされているし、汎米保険機構のリポートも十四か国のデータから、超加工食品の消費量と肥満とが関連があると指摘する。けれども、教授によれば「超加工食品」の被害はこれにとどまらない。問題は、こうした超加工食品の原材料となる農産物は家族農家が生産する農産物ではなく、企業型農業が生産するトウモロコシやダイズから作られていることにある。
「多国籍企業が支配するフードシステムにローカルなフードが置き換えられています」と教授は言う。
加工食品の売り上げが米国やカナダで頭打ちとなる中、多国籍企業はラテンアメリカに重点をシフトする。超加工食品は、食品科学者たちが欲望を刺激するよう工夫がこらされているため、麻薬のように伝統的な家庭料理を蝕み、健康を害するだけでなく、ローカル経済や地域環境、豊かな郷土食の伝統を破壊していく。
投稿者 noublog : 2019年08月29日 TweetList
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