【コラム】嗚呼、素晴らしき煎茶 |
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2013年07月30日
【シリーズ】日本の農業政策から、今後の農を考える ~新しい農の可能性-脱農政の先~
(写真はこちらよりお借りしましたリンク)
シリーズ前回(リンク)で、明治以降、農業を主導してきた国の方針「政策」が、本来のみんなの生産課題としての農業の活性化に役に立っていない構造にあることがはっきりしました。
明治以降、国は、農業を他産業と同じく私益を生む生産業としてコントロールするための政策を打ち出してきました。貧困の圧力がかかっていた時代(参照)は、国も国民も私益追求に向かっていたので、政策も農業に追い風になっていました。また、社会に目を向けても、農業に対する食料生産の社会期待もありました。しかし、70年代に豊かさが実現すると、結果、国民みんなの意識が私益追求第一から離れ、社会全体の食料生産に対する期待も弱まりました。そして、今に至るまで農業は活力源を失い、衰退の一途をたどっています。
その間国は、豊かさが実現して以降も、人々の意識潮流の変化を読みとれずに、それまでと同じ私益の確保が第一義だという軸での政策しか打ち出しませんでした。そのため、農業の社会期待が弱まるにつれ、下のグラフでみられるように、就農人口や耕作面積が減り続けています。つまり、農業の活性化に対して、政策は、全く答えにならないものになっています。
(こちらからお借りしましたリンク)
その結果、
① 儲からない(農産物は、幻想価値をつけにくいため、市場で高い値段で取引されない。)
② (儲からないから)後継者がいない
という二重の問題が農業の壁として立ちふさがっています。
日本の農業の未来を考えると、その農業の壁を、どう突破するかがカギとなります。
そこで、まずは人々の意識潮流を探っていくと、3.11の東日本大震災以降の社会の意識に、農業の壁をも突破する可能性が見えてきました。
(その前にクリックをお願いします。)
◆自給期待・自習期待に応えることが、農業の壁を突破する可能性!
まず、現在の社会の意識潮流がどのような状況かが、るいネットに詳しく書かれていますので、引用させていただきます。
8/12なんでや劇場4 業態革命~業態革命が必要となってきたのはなぜか (リンク )
>自給志向、自習志向(参照)は、その背後に、市場からの脱却≒自給自足的なイメージが孕まれている。とりわけ3.11以降、この流れが強く顕在化してきた。
70年のヒッピーは、自給志向的、あるいは共同体志向的であり、ややこれに近い雰囲気を持っていた。つまり自給志向や自習志向は、豊かさが実現された時から、既に登場していた潮流である。
では、70年代、80年代、90年代まで、大きな潮流とはならなかった自給期待や自習期待が、11年以降、急速に顕在化したのはなぜか。
70年の段階で既に市場の終焉は明らかであったが、その当時、99.9%の人々は、そんなことは夢にも気づかず、市場は薔薇色だと思っていた。実際、70年代、80年代は、まだ伸びる余地は残っていた。しかし、さすがに85年、伸びる余地が無くなってくると、金融経済に舵を切り数字上だけの誤魔化しの経済成長を続けてきた。
それが08年リーマンショックに始まって、今回の3.11をきっかけに、市場の終焉が潜在思念的にほぼ共認された。つまり、70年代・80年代と10年代の決定的な違いは、ここにある。
もし、そうだとすれば、市場からの脱却というベクトルは当然発生する。すると、とりあえずは自給自足という発想にいきつくのもわかる。
自給志向の背後には市場からの脱却というベクトルが存在するが、独学志向についても同じようなことが言える。独学志向の背後には、近代200年間続く染脳からの脱却というベクトルが存在している。それは、ここ数年の統合階級の所業を見てきたら、必然的に生じるものであろう。だから、独学志向の背景には、統合階級、支配階級に対するアンチという色彩が強く感じられる。
一方で、市場からの脱却の方も同様で、市場の終焉を迎えて、統合階級は何をしているかといえば、とことん大衆からむしり取ることばかりしている。今回の消費税増税も、TPPも、何もかもそうである。この期に及んで、金貸しと配下の統合階級がやっていることは、とことん大衆から搾り取って自分たちの権力の延命を図ることばかりである。そうならば、もう市場から脱却してしまえ、というベクトルが生じてきたのも当然だろう。
従って、311以降、自給志向や自習志向が急激に高まってきたのは、直接的には、この支配階級からのアンチが決定的なファクターとして介在している。(自給志向とは リンク)
しかし、これがアンチだけでは全く実現可能性につながらない。重要なのは、アンチを貫いてもっと基底部に可能性収束していると言える実現基盤があるか否かである。(引用終了)
70年以降現れてきた自給・自習志向も、3.11以降顕在化してきた自給・自習志向のいずれも支配階級(政治家、マスコミ、学者)へのアンチ(否定)意識から生まれています。しかし、3.11以降の意識は、潜在的には、新たな可能性の探索にむいているとも捉えることが出来ます。なぜなら、支配階級から与えられる情報や方針を疑い、否定するということは、自ら考えて答えを出そうとする意識が生まれているともいえるからです。
つまり、3.11以降顕在化してきた、人々の自給・自習志向に応えるような実現基盤を築いていくことが、現実の壁を突破する可能性なのではないでしょうか?
そこで、実際すでに自給・自習志向に応え、新たな農業のカタチの実現基盤を築いておられる方々の事例をご紹介したいと思います。
◆5つの事例から学ぶ実現基盤
■農における業態革命~ プロローグ 5つの成功事例から学ぶ~より
●『わらび座』
(写真はこちらからお借りしました リンク )
設立:1951年創業売上:20億円
演劇観客数:60万人
たざわこ芸術村来客数:25万人
修学旅行受入:150校
社員:270名。
1.労働組合や市民運動を母体にした演劇の中身でファンを組織化。
2.演劇の中身に教育要素を取り込むことで、日教組を土台にし、地元学校教師、生徒をファンに取り込むことに成功。
3.劇場にいかに来てもらうかを第一課題として全員営業を実施、地元町内会、婦人会を取り込む。たざわこ芸術村を設立し、劇場と温泉、農家レストランを併設する。
加工のたざわこビールを商品開発し目玉商品とする。演劇体験と合わせて農業体験事業を行う。
⇒核商品としての演劇を起点として地元に全員営業することで、演劇、教育活動共にファンの組織化を実現。
●『モクモク手作りファーム』
(写真はこちらからお借りしました。リンク )
設立 :1987年創業
売上 :48億円
集客 :50万人
会員 :42000世帯
正社員:142名、パート176名。
1.立ち上げ当初から三重の豚のブランド化を目指す。スーパー、生協と取引開始したが大手に適わないため、いかに地元で直売するかを追求。ソーセージ作り体験がヒットしたため、いかにまた来てもらうかを模索(来てもらえさえすれば売れる)。
客単価は3,000円に設定しファームの構想に入る。リピート率5割の目標設定。年間50回のイベント企画へ。
2.ファームに直売所を併設、JAより安い値段の手数料(10%)で地元農家を巻き込み、組織化。同時に地ビール、パンなどの自社加工商品の技術開発を進める。ファームに来客した人を会員として組織化。入会金は2000円で、無料チケットを配布。
会員から無料チケットをもらって来訪する新規顧客を見込む。
3.会員に対してソーセージや野菜の通販開始。地元契約農家50件。農家レストラン開始。農業体験事業開始。
⇒核商品のソーセージ直売→加工体験を軸に生産側(農家)と消費側(ファン)の組織化を実現。いかに集客するかが現在でも核となっている。
●『和郷園』
(画像はこちらリンクよりお借りしました。)
設立:1991年創業
売上:50億(内加工30億)円
生産者数:92件の農家集団
契約販売先:50社以上
社員数:1,500人(グループ全体)
1.「農業は製造業である」を信念に、流通に着眼。契約販売のみ行い、市場には一切出さない。徹底的に契約先の営業に取り組む。契約先にはらでぃっしゅぼーやもある。
2.商品のブランド化は、契約先のニーズに徹底的に応えることと、市場に卸さない希少性で結果的に達成。同時に、92農家の数は増やさず、品質をあげるための教育に取り組む。契約栽培なので、ロスは少ないが、契約先のニーズに応えることで加工を拡大。一番人気は冷凍ホウレン草。規格外品は切るだけでサラダとしてスーパーへ。
3.地域活性化の目的で直売所、レストラン、温泉付き貸し農園、農業教育事業を展開。海外にも進出。
⇒直売販路開拓を生命線とし、契約販売という流通のさせ方とニーズに応えるカタチでブランド化を達成。この引力で組合農家の統合を実現。
●『マイファーム』
(画像はこちらリンクよりお借りしました。)
設立:2007年創業
売上:1億6000万円(内7割が貸農園)
社員数:86名、バイト14名
貸し農園:100箇所
顧客:3,000人。
1.創業時3ヶ月で300件の農家を回ったが全て断られた。JAの集まりに何度も参加し、作物を作るよりもマイファームに貸したほうが収入が多くなること及び京大農学部であることを最大限にアピールすることで地元京都で賃貸拡大。1年目の売上は160万円。
2.借りる農地は都市部から半径20km以内で20万人の人口があるところに限定。市民農園との違いは、道具と指導者を用意したこと。各農園には先生1名とバイト1名を配置。その上に大先生3名を置き各農園を巡回させることで人件費を抑える。また、作る作物は無農薬にして原価をかけない。マイファームとしては農産物販売はしない。
3.マイファームアカデミーで就農支援事業。費用は初年度105万、2年目以降80万。畑で婚活などのイベントも。
⇒借りた農地そのものを核商品とし、都市近郊住民をファンとして取り込む。農業指導役採用も地元農地オーナーのNWを利用し、情報を得ている。
●『グリーンファーム』
(画像はこちらリンクよりお借りしました。)
設立:1994年創業(民間直売所売上 全国1位)
売上:10億円
集客:58万人(1500人/日)
社員数:正社員52人、パート7人
生産者数:2,150人(平均年齢70歳)。
1.生産者数を大幅に増やす仕組み、かつ活力を持って出荷してもらう仕組みを考案。
①生産者の資格制限はなし。出荷品目、出荷時間、出荷量の制限なし。どんなもの(規格外農作物、野草、昆虫、枯木、古い農具etc)でも出荷可。商品の回収も自由。販売 価格も生産者で決定。営業時間中に出荷(棚並べ)が出来、生産者自身が直接お客に アピールも可。手数料は、売上の20%。(直場所平均は15%)
②売上代金を、一週間(週末)ごとの現金清算にすることで、生産者の活力がアップ、次の出荷の目安にもなる。清算時に出荷もしてもらうことで、土日の出荷数▼を回避。
2.「お客を呼ぶのは、豊富な品揃え」として、商品種目は、1万点以上。雑多に並べる(大区分はあり)ことで、回遊する、発見する楽しさを演出。(海外の市場、アメ横、ドンキホーテ的)
3.不採算部門だが子供の集客のため、ミニ動物園を併設。動物の貸し出しもしている。(1回3000円)
4.「産直新聞」(長野県のみ)の作成、直売サミットなどで、直売組織NWを形成中。また、農業後継者問題への取り組みとして、1区画100坪の農地貸出を行っている(5000円/年)。農家の指導付。
⇒生産者の敷居を低くすることで、多数の生産者を組織化→商品数多数により、買物のテーマパーク化を実現。
上記の5社に共通している成功の基盤は、これまであった既存の販売、流通ルートに頼らず、取り扱っている農産物やサービスの価値をともに認め合うことのできる、消費者や取引先との新たな対面での信任関係の構築にあります。
こうした人の繋がりの中で農の価値を共認し、収益をあげることで生産者のやりがいが育まれ、活力を持った農業の実現に成功しているのです。
つまり、これらの事例がとらえている農業の新たな可能性とは、単につくるだけの生産農業から脱却し、これまでの業界内の思考の枠を超えた視点で考えていく事です。
◆これからの農業は、共認充足がカギ
では、日本の農業界全体が上記5社のように業界の思考の枠を超えていく為にも、必要となる「鍵」とは一体なんでしょうか?
8/12なんでや劇場6 農と塾における業態革命~他の業界も業態革命が起きていないのか(リンク )
>もう1つ重要なファクターがあって、それは言うまでも無く、私権から共認へという潮流である。つまり共認充足が第一価値になった。
この共認充足第一という根底的な意識潮流は、その後、特に02年私権の終焉以降、課題収束、能力収束という流れを生じさせ、今や独学志向あるいは自習志向という段階にまで進んできた。
実は、自然志向とか節約志向、自給志向も、共認充足第一というファクターが強く影響を及ぼしている。おそらく歴史的に、共認充足が充分に得られていた時代、要するに私権時代以前の時代は、自然と一体であった。共認充足とこの自然志向は一体化する構造にある。さらに言えば、共認充足の最遠点には、実はかつての自給自足という自給志向とも密接に繋がっていると思われる。
従って、歴史的な体験記憶と繋がっているとすれば、共認充足は認識面においては当然、自分たちで考えていく、自分たちでつくっていく、という方向に繋がっていく。(引用終了)
今後農業経営に求められるのは、消費者との繋がりを意識し、その繋がりの中でどれだけ高い共認充足を供給し続けられるかが重要です。
つまり、農業の壁を突破するには、人々の期待を捉え、市場の枠組みを超えた新たな共認充足を軸とした関係構築が必要なのです。
いかがでしたか?
3.11以降、年々高まる農業への期待や関心に応えるべく、農業に携わる私達自身が、これからの農業の新しいカタチを自らの手で作り上げ、さらなる社会の人々の期待に応えていきたいと思っています。
最後迄読んでいただき、有難うございました:D
投稿者 parmalat : 2013年07月30日 TweetList
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