農から始まる地域の再生~新しい生産集合体をどうつくるか?8.業態革命を起こす企業の参入が突破口!! |
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2012年09月01日
■農における業態革命~ プロローグ 5つの成功事例から学ぶ ~
画像は、こちら からお借りしました。
皆さん、こんにちは 😀
日本の農業は、古来より「農業は儲からない産業。補助金で農家を助けるしかない」という“常識”がありました。
そんな農家の方々を支援したいという名目で、農業関連になんと470種類もの補助金があるそうです。
しかし、その実態は、行政の担当者でさえ、忘れられているような使えない補助金が多いのが実態です。
そんな補助金に頼るのではなく、農業経営を上手くしていくにはどうしたら良いでしょうか
そこで、今回から「農における業態革命」シリーズとして、農業経営を考える上で、多くの皆さんのヒントになる思考法をお伝えしていきたいと思います。
尚、これから始まるシリーズは、今年8月に行われたなんで屋劇場レポートの紹介記事を中心にお伝えしていきます。
(参照:8/12 なんでや劇場1 農と塾における業態革命~農の経営は、販路の開拓、農家の組織化、技術開発の3点セットの構造が基本 )
なんで屋劇場とは、経済予測、意識潮流展望、企業のあり方等、様々なテーマを扱うなんでや店主を中心とした勉強会で、毎月1回開催されています。
●農業経営における問題点
農業は本当に儲からないのでしょうか ?
その原因は市場で価格が決まる仕組みにあります。一般的には市場価格は供給と需要のバランスで決まると言われていますが、実はその仕組みには裏があります。市場価格は商品価値を幻想化出来るか否かで高くなるか安くなるかが決まっており、米などの基礎的な食品ほど幻想化は困難で必然的に価格が安く抑えられることになるのです。
この状況を打破するために、どのような対策を考えていけば良いのか?
実際、成功している農業生産法人も数多く存在している事から、農業経営において何が必要なのかを考えて行きたいと思います。
●成功している農業生産法人の事例から、上手く行っているポイントを抽出
そこで、まず雑誌やネットでも取り上げられている成功している代表的な5つの農業法人を取り上げ、5社それぞれの成功要因を抽出していきたいと思います。
※抽出する際、『農業経営者の視点(農業経営をする視点)を5つの事例から実現方針にむかってポイントを絞り込む』事が重要だと考えました。
●『わらび座』
(画像は、【わらび座HP】からお借りしました。)
設立:1951年創業
売上:20億円
演劇観客数:60万人
たざわこ芸術村来客数:25万人
修学旅行受入:150校
社員:270名。
たざわ湖芸術村は、実質地域統合の中心軸。過去には、周辺のネット環境なども、わらび座さんが自ら整備して来た経緯があるほど。地域からの期待も多く集まっている共同体であり、周辺の学校からも多数の研修受入れ (このわらび座修学旅行は、35年以上の歴史を持ち、通算30万人もの生徒さんが観劇と踊りワークショップや農業体験の交流を重ねて来られたそうです。)を担い、農業活性化にも一役。既に統合役として成立しているため、企業⇒地域共同体の要としての期待も大きい。
勿論、わらび座さんは現在進行形で社会的期待にグングン応え続けておられます。
1.労働組合や市民運動を母体にした演劇の中身でファンを組織化。
2.演劇の中身に教育要素を取り込むことで、日教組を土台にし、地元学校教師、生徒
をファンに取り込むことに成功。
3.劇場にいかに来てもらうかを第一課題として全員営業を実施、地元町内会、婦人会
を取り込む。たざわこ芸術村を設立し、劇場と温泉、農家レストランを併設する。
加工のたざわこビールを商品開発し目玉商品とする。演劇体験と合わせて農業体験
事業を行う。
⇒核商品としての演劇を起点として地元に全員営業することで、演劇、教育活動共にファンの組織化を実現。
【わらび座】さんの参照投稿
知っておきたい「わらび座」の歴史
全国素敵企業訪問記 わらび座 ~100%共同出資の企業だからこそ、本気で伝えられるものがある!~
●『モクモク手作りファーム』
(画像は【モクモクファームHP】よりお借りしました。)
設立 :1987年創業
売上 :48億円
集客 :50万人
会員 :42000世帯
正社員:142名、パート176名。
三重県阿山町というところで、年間五〇万人もの観光客が訪れ、地元産の豚肉を使ったハムやソーセージのほか、パンや地ビール、野菜ジュースなど手作り農産物を製造販売するだけでなく、レストランや温泉施設、結婚式場まで備えた一大テーマパークとして、人気を集めています。
一度入ってみれば農業のテーマパークという感じで、とても楽しい一日を過ごせます♪可愛いミニブタショーやソーセージつくり体験、苺摘み・椎茸狩り体験など農業体験も充実しており、何度も来たい!と思わせてくれます。
1.立ち上げ当初から三重の豚のブランド化を目指す。スーパー、生協と取引開始した
が大手に適わないため、いかに地元で直売するかを追求。ソーセージ作り体験がヒ
ットしたため、いかにまた来てもらうかを模索(来てもらえさえすれば売れる)。
客単価は3,000円に設定しファームの構想に入る。リピート率5割の目標設定。年間
50回のイベント企画へ。
2.ファームに直売所を併設、JAより安い値段の手数料(10%)で地元農家を巻き込
み、組織化。同時に地ビール、パンなどの自社加工商品の技術開発を進める。ファ
ームに来客した人を会員として組織化。入会金は2000円で、無料チケットを配布。
会員から無料チケットをもらって来訪する新規顧客を見込む。
3.会員に対してソーセージや野菜の通販開始。地元契約農家50件。農家レストラン開
始。農業体験事業開始。
⇒核商品のソーセージ直売→加工体験を軸に生産側(農家)と消費側(ファン)の組織化を実現。いかに集客するかが現在でも核となっている。
【モクモクファーム】さんの参照投稿
農業という地域産業の活性化事例~モクモク手作りファームに学ぶその1~
農業という地域産業の活性化事例~モクモク手作りファームに学ぶその2:現実課題発のコンセプトが根強いファンづくりの基盤に~
農業という地域産業の活性化事例~モクモク手作りファームに学ぶその5~全員参加型で現場活力喚起型の組織運営
●『和郷園』
(画像は【和郷園HP】よりお借りしました。)
設立:1991年創業
売上:50億(内加工30億)円
生産者数:92件の農家集団
契約販売先:50社以上
社員数:1,500人(グループ全体)
和郷園さんが考える競争力の源泉は、農産物そのものの美味しさだそうです。
美味しい農作物をつくるために、和郷園さんでは、グループ農家で“輪作”(まったく違う性質の作物を組み合わせて同じ農地で交互に栽培する方法)を行っています。
また、国内販売にとどまらず、“日本の野菜は高品質で輸出競争力がある”という代表者の考えに基づき、香港への輸出も行っています。
逆に輸出しているってすごいですね。
1.「農業は製造業である」を信念に、流通に着眼。契約販売のみ行い、市場には一切
出さない。徹底的に契約先の営業に取り組む。契約先にはらでぃっしゅぼーやもあ
る。
2.商品のブランド化は、契約先のニーズに徹底的に応えることと、市場に卸さない希
少性で結果的に達成。同時に、92農家の数は増やさず、品質をあげるための教育に
取り組む。契約栽培なので、ロスは少ないが、契約先のニーズに応えることで加工
を拡大。一番人気は冷凍ホウレン草。規格外品は切るだけでサラダとしてスーパー
へ。
3.地域活性化の目的で直売所、レストラン、温泉付き貸し農園、農業教育事業を展
開。海外にも進出。
⇒直売販路開拓を生命線とし、契約販売という流通のさせ方とニーズに応えるカタチでブランド化を達成。この引力で組合農家の統合を実現。
【和郷園】さん の参照投稿
農業で稼いでいる各地の「突破者たち」②
「農業は儲からない」は本当か?
『和郷園』
●『マイファーム』
(画像は【マイファームHP】よりお借りしました。)
設立:2007年創業
売上:1億6000万円(内7割が貸農園)
社員数:86名、バイト14名
貸し農園:100箇所
顧客:3,000人。
自らの手で作ったものを食べる、その活動を通して、心と五感が育まれ、協働が生まれ、新しいリーダーが育ち、日本の農業を再生していきたい。これらを包括的に意味する「自産自消」という概念を作り、都会の方に農業って楽しいと思ってもらいながら、農業に携わってもらえるように貸し農園事業を関西・関東・東海を中心に66箇所で展開。
農業は、高齢化や後継者不足をどうするか?ということばかりを考えてしまいがちですが、全く違った発想で農業就業者支援・育成事業を展開されています。
1.創業時3ヶ月で300件の農家を回ったが全て断られた。JAの集まりに何度も参加し、
作物を作るよりもマイファームに貸したほうが収入が多くなること及び京大農学部
であることを最大限にアピールすることで地元京都で賃貸拡大。1年目の売上は160
万円。
2.借りる農地は都市部から半径20km以内で20万人の人口があるところに限定。市民農
園との違いは、道具と指導者を用意したこと。各農園には先生1名とバイト1名を配
置。その上に大先生3名を置き各農園を巡回させることで人件費を抑える。また、作
る作物は無農薬にして原価をかけない。マイファームとしては農産物販売はしな
い。
3.マイファームアカデミーで就農支援事業。費用は初年度105万、2年目以降80万。畑
で婚活などのイベントも。
⇒借りた農地そのものを核商品とし、都市近郊住民をファンとして取り込む。農業指導役採用も地元農地オーナーのNWを利用し、情報を得ている。
【マイファーム】さん の参照投稿
自分で作って自分で食べる「自産自消」する社会を目指す企業「マイファーム」
自産自消が日本を変える!~株式会社マイファーム②設立の原点、転機はどこにあったのか?
●『グリーンファーム』
(画像は【グリーンファームHP】よりお借りしました。)
設立:1994年創業(民間直売所売上 全国1位)
売上:10億円
集客:58万人(1500人/日)
社員数:正社員52人、パート7人
生産者数:2,150人(平均年齢70歳)。
「むらの財産を守り継承する農業」を実践する集落営農=新しい「社会的共同経営体」との連携、そして地域の商店街との連携というふたつの新しい連携によって「地元に雇用、仕事を増やす。こうして、(中略)田舎暮らし志向の若者が活躍する場、都市で暮らす地元出身者がもどれるような仕事、地域産業を興すべく、創業時の生産者の平均年齢70歳でスタート。それから18年が経過した今でも、平均年齢70歳。地域に雇用を創出しながら、生産者の若返りも実現しています。すごいですね!!
1.生産者数を大幅に増やす仕組み、かつ活力を持って出荷してもらう仕組みを考案。
①生産者の資格制限はなし。出荷品目、出荷時間、出荷量の制限なし。どんなもの(規 格外農作物、野草、昆虫、枯木、古い農具etc)でも出荷可。商品の回収も自由。販売 価格も生産者で決定。営業時間中に出荷(棚並べ)が出来、生産者自身が直接お客に アピールも可。手数料は、売上の20%。(直場所平均は15%)
②売上代金を、一週間(週末)ごとの現金清算にすることで、生産者の活力がアップ、 次の出荷の目安にもなる。清算時に出荷もしてもらうことで、土日の出荷数▼を回
避。
2.「お客を呼ぶのは、豊富な品揃え」として、商品種目は、1万点以上。雑多に並べる (大区分はあり)ことで、回遊する、発見する楽しさを演出。(海外の市場、アメ
横、ドンキホーテ的)
3.不採算部門だが子供の集客のため、ミニ動物園を併設。動物の貸し出しもしてい
る。(1回3000円)
4.「産直新聞」(長野県のみ)の作成、直売サミットなどで、直売組織NWを形成中。
また、農業後継者問題への取り組みとして、1区画100坪の農地貸出を行っている。(5000円/年)。農家の指導付。
⇒生産者の敷居を低くすることで、多数の生産者を組織化→商品数多数により、買物のテーマパーク化を実現。
【グリーンファーム】さんの参照投稿
農村の後継者はこうして育つ②
農村の後継者はこうして育つ③
次にこれらの成功事例の中から、事業の核となる共通項を見つけ出していく必要があります。
そして、成功事例の中から見つけ出した事業の核が今後農業経営にとって最も必要な『答え』となるのです。
次回は、以上の5つの成功事例から、どのように成功事例を抽出し、普遍構造を導き出したかをお伝えしたいと思います
次回も是非ご期待下さい
投稿者 shiogai : 2012年09月01日 TweetList
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