日本の食糧自給率の現状 |
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2008年05月24日
日本の食糧自給率が低いのは(低くなったのは)なぜか?
日本の食糧自給率は39%ですかぁ~。他の先進国と比べてもかなり低い値ですね。
なぜ、日本だけ?こんな状態になっているのでしょうか?
今回はその辺りを探ってみました。
(データ引用:農水省HP)
グラフから昭和40年頃を見ると日本でも自給率はカロリーベースで70%以上もありました。
特に大きく落ち込んでいるのが、昭和40年~50年にかけてと、平成の前後からのように見えます。
この間、大きく変化した社会状況は、
・安い農産物の輸入増(食の洋風化・外部化)
・消費量の増加(人口増、食品ロス増)
・政策面(工業化、輸入自由化)
などが挙げられますが、
結果として、農業者にとっては生活が成り立たない厳しい状況に追い込まれて行ったように思われます。
食糧自給率低下の要因の一つに、食生活の変化があります。
下のグラフを見てみましょう。
(データ引用:農水省HP)
1950年代ごろまで日本では地元でとれた米や野菜、魚を食べていたのですが、その後パンや肉など欧米風の食生活に変わってきました。背景には、戦後の食料不足期に学校給食に援助するなどしてパン食や肉食を広めたアメリカの戦略がありました。日本人の食習慣が変わったことで、アメリカは、パンを作る小麦や、乳牛や肉牛を育てるためのとうもろこしなどの穀物を、日本にたくさん買ってもらえるようになったのです。
■昭和30~40年代(1955~1975年)—フライパン運動、学校給食など
(るいネット:日本の「食」もアメリカに支配されている より)
パンの原料である強力小麦は日本では産出できず、日本人がパン食を始めれば永久的に日本はアメリカのお得意になる。戦前まで少なかった油料理を普及させるためにフライパン運動を展開し、油の必要性を強調する栄養指導が熱心に行なわれた。トウモロコシ、大豆は家畜のエサであると同時に油の原料でもある。余剰農産物処理の観点から欠かせない重要な戦略であった。学校給食ではパンとミルクが無償援助され、子供のうちから洋食嗜好の下地を作ることにも成功した。
平成に入ってからは、中国からの野菜輸入量が急激に増えてきました。スーパーなどに並んでいる生鮮食品や冷凍食品を始め、食の外部化に伴う加工用の野菜も増えてきています。
中国からの野菜輸入量
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注:農畜産業振興機構『野菜輸入の動向』により
食料自給率の低下は、戦後の経済成長とも深い関係があります。日本は戦後、工業を発達させて外国に工業製品を輸出する政策をとりました。そのため農村の若者の多くが都会に出て、工場や会社で働いたり、道路やビルを作ったりするようになりました。そのおかげで日本は急速な経済発展をしましたが、逆に農業はすたれていきました。
さらに1980 年代になると、自動車など工業製品を輸出するかわりに農産物の輸入を増やすよう、アメリカから圧力がかかりました。やがて牛肉や果物など農産物の輸入がどんどん認められ、外国からの安い農産物の輸入が増えてきたのです。
その結果、農業従事者が減り、耕地面積も急激に減少しています。
(データ引用:農水省HP)
日本の耕地面積は、昭和36年の608万6千ヘクタールをピークとして年々減少。平成12年には約20%減の438万ヘクタール。原因と思われるものは、農地開発や干拓による耕地拡張があったものの、社会や経済の発展に伴う農業以外の需要に応じた転用や、農業者の離農・経営縮小に伴う耕作放棄等の壊廃が上回って進んだ結果と思われます。
食糧自給率の低下は、食生活の変化や消費量の増加や安い農産物の購入など、消費者側や国民に原因があるように思われますが、実は政策面やアメリカの圧力など、国際間の関係や市場戦略の一部に組み込まれた流れの中にあるということをしっかりと把握しておかなければなりません。
ですが、このまま日本の食糧生産能力が低下してしまうと今後どうなってしまうのか?
あるいは農業の再生は可能なのか?
どうしようもない事態をさけるためにも、今の外圧状況をしっかりと掴んでいきたいところです。
投稿者 takuya : 2008年05月24日 TweetList
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