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2013年01月22日

農から始まる地域の再生~新しい生産集合体をどうつくるか?13.農家の自立を実現する生産集合体のカタチとは?~

皆様、こんにちは。
農から始まる地域の再生シリーズも今記事で最後となります。
今回の記事では、今シリーズを振り返って現在ある農業のどこに問題点があり、どこに打開策があるのかをもう一度整理し、シリーズタイトルの”新しい生産集合体”の可能性はどこにあるのかを導いていこうと思います
 
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■ シリーズから見えてきた現状~最重要課題は農家を自立させること!~ 
 
今シリーズのおさらいとして、戦後間もなくしての農地改革→農地解放により破壊された農村共同体。個別に分断された農家を取り仕切る形で農協が設立しました。今やその農協はほとんどの農家を席捲 し、また農家も農協に頼らざるを得ない状態、「農協は農家から搾取」,「農家は農協任せ」=「作るだけに押し込められている」というまさに相互依存の関係に陥っています。この依存関係が出来上がったのも、根本にはやはり、戦後の農地改革→農地解放→(農村)共同体の破壊があるという事がわかって来ました。
実際に現農家の経営意識は低く、独自に販路を見出す事すら出来ていないという事が農家の問題でもあり、農業の問題にも挙げられます。
現状においての需要は都市部にあると同時に、都市住民の期待も年々高まって来ている事が明らかになり、農家側はその期待に応えていかなければ生き残っていけないし、地域の再生もあり得ないという事が分かってきました。
要するに、「農家を勝たせる」=「農家を自立させる」というのが地域を再生,活性化において最重要課題であるという事が分かってきました。
■ 農家が自立出来ている集合体の事例~勝てている農家は1人じゃなかった!~
 
では、実際に自立している農家さんは一体どのように自立していけたのでしょうか?
事例からヒントを見つけていきたいと思います。
みずほの村生産者を経営者へ~ 
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引用元はこちら

「みずほ」では、年間約100品目以上の耕種作物を生産・販売しているが、各生産者(農業経営者)が、品名・品種・作付面積・販売目標額・販売時期(何月上旬・中旬・下旬)を事前に決めた綿密な生産・出荷計画を元に生産・出荷している。
各生産者が生産計画を立てるだけにとどまらず、事前に1品目につき2~3人が出荷できるように調整している。1品目の生産を1人の生産者に絞らないのは、あえて何人かで競わせることにより、生産者に品質の向上を意識させ、消費者には「どちらを選ぶか」という楽しみ、選択の自由を与えることができる。
この作目ごとの生産者の調整は、年1回6月に各生産者が提出する出荷販売計画書をもとに各生産部会で話合いを行い、特に欠品(端境期、量不足、現在ない品目・品種)への対応について協議することにしている。1年に1回開催される総会で全員の出荷販売計画表が公表され、各生産者はこの計画表に基づいて生産を行っている。新しい品目を追加したり、品目を変更したりする場合は事前に店と、部会長と事務局に連絡することになっている。
生産者は計画に沿った安定生産を心掛けるとともに、事前に計画を把握することで、直売所としては消費者からの問合せに的確に対応することができるようになる。これらのことは、消費者の信頼を高めることにも繋がるので、大切なことである。
出荷・販売計画書は、自立した農業経営者を育てるという「みずほ」の理念にも則している。

 

安売り競争を防止するために、設立当初より決められていたルールとして、「既に販売されている品目に後から参入する場合、既存のものより安い値段をつけてはならない」というものがある。自立した農業経営者になるには、「再生産可能な値段を生産者自身がつけるべきである」という考えのもとで、新規参入者が価格破壊を起こすのを抑制するという効果がある。再生産可能な価格を維持できれば、能力以上の大量生産や過剰なコスト削減の必要がなくなり、安売りによって引き起こされる品質低下の可能性は低くなる。また、価格に見合わない品質の商品は消費者から選ばれないので、生産者は自分でつけた値段に最後まで責任を持つことになる。このようにすることにより、いやでも品質向上に努めざるを得ないのである。

この事例は直売所における事例です。直売所側の視点からすると産物の品質、品揃え、年間通しての安定供給を考えて生産者を集団化し、その中でネットワークを作っているようです。
引用部分でもありますが、みずほの村はそれぞれの生産者に出荷,販売計画書や価格設定までやらせているようです
そうする事によって次第に、良い意味で競争しながら協働関係が築かれているのだと思います。そこに直売所という評価空間があって、より切磋琢磨する場が形成される事により、自立した農家集団 が成り立っているのだと思います。
次に紹介するのは、長野県にある農業生産法人㈲トップリバー。
主に 葉物 (レタスやキャベツ)を取り扱っていて、設立10年を越えた今、年商は10億を越えていられるとの事。
既に卒業生を多数輩出していて、それぞれが全国各地で自立されているようです。
トップリバーの人材育成における理念から、「自立した」農家さんを多数、輩出してきた秘訣を紹介したいと思います
 
トップリバー水戸黄門システムで親子を増殖
嶋崎 秀樹 著 「儲かる農業」より引用
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水戸黄門は、助さん、格さん、うっかり八兵衛や風車の弥七を育て成功させた。また、世直し道中の旅に出て各地の人々を助け、その精神のタネをまいた。やがてそのタネは発芽し、水戸黄門の民百姓を大事にする思想が広がっていったのだろう。私もこういう仕組みをつくりたいのである。つまり、私が助さん、格さん、八兵衛、弥七を育てる。今度は、助さん、格さん、八兵衛、弥七が「親」となって下の人間を育てていく。そうやって、子供をどんどん増殖させていくのである。
「親」が少なければ、育つ「子」も少なくなるのは当然である。だからこそ、私はトップリバーの社員を次の世代の「親」として日本中に広めていきたいのだ。
トップリバーでも子供である社員に、親として援助したいと考えている。具体的に言えば、独立する社員が望めばトップリバーの協力農家として安定してお金が落ちるようにする。資金繰りの面倒も見るし、何か新しい試みを行うときにはできる限りの協力を惜しまない。
そして、何年かトップリバーの協力農家として働いた後、自らのビジョンと目標によってトップリバーから離れていくのも自由である。引き留めもしないし、苦々しくも思わない。
親として、子供の一本立ちをうれしく思い、「がんばって儲けろ」とエールを送るだけである。

水戸黄門システムはトップリバーが親として一番上にいて、親→子→孫→ひ孫のような大きなピラミッド の関係ではなく、親→子というような小さなピラミッドが いくつも 重なって、大きなピラミッドが形成されていくというイメージなのだと思います。
引用でもあるように、「子」に対して協力農家として働いてもらっているとの事。協力農家とは、独立してからもトップリバーの出荷の一部を担う事であって、いきなり独立して販路開拓からスタートしていくのではないし、その協力農家としての期間中に独自の販路を開拓していく事も可能です。「子」としては良い話だと思いますが、「親」にとっても組織化された農家が多いほど安定供給出来るという利点がありそうです。親→子といったまさに本当の親子に匹敵するほどの人材育成が成せる技だと思います。
 
■ 新しい生産集合体の形とは?
 
今シリーズでは、これからの新しい生産集合体の形とは?を追求して来ました。
これまで、生産集合体とは「≒集落のような共同体」といったイメージが強くありました
それは、「地縁」と強く結びついたものでした。
近隣の農地を協働作業で管理する事が必要となる従来農業の性質上、地域と強い結びつきを持つ、共同体的生産集合体は大切なものでもあります。
しかし、戦後の近代化の中で、崩壊してしまった共同体では、古い慣習を現在まで塗り替えられず(発展させられず)引きずってしまっているのではないでしょうか?
本記事で取り上げた事例では、そうした地縁的共同体に捉われず、個々の独立した農家が何らかのネットワークを作っています。それによって各農家の自立が実現しています。
こうしたネットワークこそ、現代の農業や農村を再び活性化させるために必要な”新しい生産集合体”なのだと思います!
皆様、この「新しい農のかたち」ブログをどうぞ今後ともよろしくお願いします

投稿者 staff : 2013年01月22日 List   

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