2013年11月14日
2013年11月14日
「シリーズ「自給期待に応える食と医と健康」③ ~味覚と健康はどう繋がっている?~」
■味覚と健康はどう繋がっている?
この稿では、当シリーズ「自給期待に応える食と医と健康」の【食】に関する重要なファクターである【味覚】と【健康】がどのように繋がっているか、を明らかにしていきたいと思います。
1、味覚とは食べ物の情報を受け止める感覚
(1)「味覚」とは感覚機能
味覚は物質の受容に基づく感覚の一つで、食物を摂取する時に、匂いと共にそれが飲食可能であるかを判断する重要な感覚機能です。哺乳類一般にこの機能があり、昆虫のチョウやハエなどでも前肢の先端に物質受容器があり、食料を触ることで味見していると考えられています。(図1参照)
つまり、体内に摂取する食物として必要か否かを感じる機能が味覚です。
(2)「味」の定義
現在の味の定義は「甘味、苦味、酸味、塩味、うま味」の5つを「基本味」と称し、それ以外の味と区別しています。基本味は味蕾を構成する味細胞によって受容されるのに対して(図2参照)、基本味以外の、辛味物質、アルコール、炭酸飲料などの化学的刺激や、温度(熱さ・暖かさ・冷たさ)、舌触り(つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ、滑らかさ)などの物理的刺激は、化学的受容体を介することなく直接神経を刺激して大脳皮質味覚野に伝達され、基本味と合わせて総合的な味覚を形成します。
(3)「味覚」は信号 「おいしさ」は感情
人類はこの本能的な感覚以外にも外観や温度、食感、周りの環境、食事の時の会話や心境、その時の体調などによって「おいしさ」の感じ方が違います。また、その食べ物の情報、みんなが美味しいと言っている、健康に良いらしいと聞いた、などの違いによってもその「おいしさ」は左右されます。
ですから、味覚と同時に五感からの情報と心、そして観念で捉えた情報が統合され、はじめて「味わう」という表現になります。
つまり、「味覚」はいわば信号であり、「おいしさ」はその信号と様々な情報の入力の組み合わせによって生じる【感情】であると言えると思います。
2、味覚と健康のつながり
(1)体調によって味覚は変化する
体の調子で味の感じ方が変化するのは、誰しも経験することだと思います。
たとえば、運動した後はレモンがおいしく感じられ、肉体疲労時には苦味や甘味と比較して、酸味の感受性が低下します。いっぽう、事務的な作業による疲労では苦味の感受性が低下し、酸味と甘味も味を感じる時間が短くなります。このように同じ疲労でも、体の状態が異なれば、味の感受性の変わり方も異なることが明らかになっています。
また、食欲が脳の満腹中枢と深く関与することは良く知られており、味細胞においても味感受性は変化し、食欲が高まっている時には味細胞は甘味に敏感になり、より美味しく感じます。
このように味細胞は、消化管とも脳の摂食部位とも連関するような性質を持って、私たちがどの食べ物をどの程度口に入れるかをコントロールしています。
(2)おいしさの構成要因
おいしさは、温度、天候、環境、空腹感、食習慣などの外部的要因と食品のもつ物理的因子に大きく左右されます。
特に人類の場合は、感覚機能でキャッチした情報(=本能的情報)と共にその食品の持つ効能などの情報(=観念的情報)、そしてその時の心境や感情、場の雰囲気などの情報(=心・共認的情報)が統合されて食べ物を「味わい」、「美味しさ」を感じると言う点が重要だと思います。
(3)体に耳をすませることが健康維持に極めて重要
味覚は私たちが何を体内に摂取するべきかを判断するために存在しています
つまり、口に入れる様々なものを、体に害になる毒物や腐廃物を忌避し、体に必要な糖分やタンパク質、時には塩分、酸、苦味成分、辛味成分を受け入れるようになっています。状況に応じて体に必要なものを過不足なく摂取するようにコントロールする機能もあることが、体のすばらしいところだと思います。
体に耳をすませて、体が要求しているものを食べればおいしく食事ができるという仕組みを、しっかり活用していくこと必要です。
●参考:東洋医療では体の声を聞かせてくれる
※以上、こちらを参考にさせていただきました食と健康を科学する
★以上のように味覚は健康の維持と共に「味わい」、「おいしさ」を感じ、心の充足をもたらす重要な感覚であることがわかります。
現代は、特に先進諸国においては飽食の時代と言われ、食べ物に不自由する事は無く、食べたいものを食べられる時代になっています。ところが、味オンチと言われる人が多くなり、味覚障害患者が増加している事も事実です。生物の誕生から現代の人類に至るまで数十億年の歴史の中で積み重ねられた【味覚】、自然の摂理に則った感覚を正常に保つ事は健康の維持はもとより、人類の存続のためにも必要だと思います。
次に、味覚障害の実態と原因、そして、どうすれば良いのか?を明らかにしていきたいと思います。
投稿者 nara1958 : 2013年11月14日 Tweet