2011年6月1日

2011年06月01日

4-(2) 原発事故から今後の食と農・水産を考える~放射性物質に汚染された農地の再生に向けて(2)~

以前には、
3-①:ヨウ素131はどのような物質か
3-②:セシウム137はどのような物質か
3-③:ストロンチウム90はどのような物質か
を扱いました。その復習を兼ねて、農地汚染メカニズムを追ってみます。
◆核種と土壌汚染に関する知見
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【ヨウ素131】
・ヨウ素131(131I)の出す放射線量の約10%はガンマー線を介しており、90%はベータ線。半減期は8日なので土壌への長期蓄積はない。現在の汚染は、降下物としての農作物への付着だけに気をつける。
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【セシウム137】
・セシウム137(Cs-137)は、強いガンマー線発生源で、半減期は30年。土壌中では水には溶けにくく、土壌中に50~70%保持される。
★土壌中ではカリウムがあると置換され易く作物への移行を抑制できる。元素周期律表では、ナトリウム(Na)やカリウム(K)と同じアルカリ金属に分類され、元素としての挙動に第1族との類似性がある。
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     〔▲イラスト:ちわわ作〕
 <土壌に降下したセシウムの挙動>
・セシウム137(Cs-137)は土壌に降下するとカリウム(K)と同様に1価の陽イオンとしてふるまう。土壌は負の電荷を帯びているため、正電荷を帯びた陽イオンを引きつけ、土壌の表面にとどめる性質がある。
・土壌の負電荷は、有機物や粘土鉱物に由来している。有機物に由来する負電荷に保持されたCs+は他の陽イオンによって容易 に置き換えられる(イオン交換反応)。
★しかしある種の粘土鉱物のもつ負電荷に、Cs+はきわめて強く「固定」 され、他の陽イオンによって簡単に置き換えることができなくなる。
2:1型層状ケイ酸塩の層間の負電荷がある場所は、Cs+を閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴のようになっている。この穴はCs+の他に、K+やNH4+を閉じ込めるのにもちょうどいい大きさであるため、通常はこれらの陽イオンの中で最も存在量が豊富なK+がこの場所を埋めている。だが、この場所との結合力はK+(さらに…)

投稿者 staff : 2011年06月01日