24節気シリーズ【最終回】~旬のものを食べるとなぜ体に良いのか? |
メイン
2022年11月05日
【これからの林業を考える】シリーズ最終回~林・農・水の開かれた産業ネットワークの構築へ~
本シリーズは、『これからの林業を考える』と題して、日本の林業がなぜ衰退に向かっているのか?の原因構造を歴史・世界情勢の切り口から分析してきました。そして今後の突破口について、ドイツの林業をモデルとし、産業活性化の可能性を考えてきました。今回の投稿では、全体のまとめとして振り返っていきたいと思います!
画像は、こちらからお借りしました。
■日本の林業の変遷
★シリーズ1~日本の木材価格が世界で最も安くなる構造と山主の活力を削ぐ構造~
★シリーズ3~国策的林業により衰退した日本の林業、生産と切り離されることで供給先を失った日本の山林~
日本の林業は、戦後の高度経済成長期や国際化に合わせて大きく変化(衰退)してきた歴史があります。1955年には50万人以上いた従事者は、10年で半分、20年でさらに半分と衰退。そして現在は、戦後の1/10以下の4万人にまで縮減しています。
画像は、こちらからお借りしました。
林業産出額は、年間で約4000億。例えばスポーツメーカー・アシックスの売上とほぼ同等で、大企業1社分の産業規模です。同時に、木材価格は、ピークの1980年からヒノキは1/4、スギは1/3にまで下落している。具体的にはスギ丸太1本が530円と、50年かけて育てた材木価格がタバコよりも安い水準。事業として、非常に厳しい産業になっていることが分かります。
画像は、こちらからお借りしました。
■世界は、中国中心。価格決定権と流通を握る
★シリーズ2~世界の林業・木材流通は、中国が握っている。~
世界の材木を利用している国は、「中国」が圧倒的です。針葉樹林の世界流通の約半分が中国です。また、加工品である合板の輸出量の約1/3が中国が占めています。
画像は、こちらからお借りしました。
大きな流通構造は、中国に世界中の材木が集まる、そして国内で消費する+加工して世界にばら撒く。こういった、中国によって、材木一極集中の産業構造を作り出されています。世界の大きな木材流通の中で、中国は圧倒的な価格決定権を持つと同時に、大量生産するロシア・EU・ニュージーランドらと市場を作り出しています。
このような大量生産・低価格競争の市場が、日本国内においても、海外の安くて・頑丈な材木市場が浸透していきているという状況にあります。林業の低価格化・衰退が進展して大きな要因の一つです。
■日本の「スピード林業」が、材木の質の低下を招く
★シリーズ5~明治・大正の「スピード林業」が、現在の産業衰退の大きな原因
日本の材木の「ものづくりの質」が高めれば、世界的な市場にも勝っていけるのですが、現実はそうなっていません。その大きな要因は、明治初期と戦後復興期の「スピード林業」に大きな要因があります。
日本の山々は、幾度となく「はげ山」になりました。近代化・富国強兵の明治初期や、戦時中の軍国化した時代においても、同様に、国内の多くの山は、伐採され尽くした山ばかりでした。
画像は、こちらからお借りしました。
そこで政府は、「早く育つ・材木利用しやすい林業」へと舵をきります。具体的には、ヒノキとスギといった真っ直ぐ・早く育つ樹種に限定し、植林を行ったのです。
その結果、早く育つ一方で、建物の構造部材として利用するには貧弱な材木ばかりとなりました。特に、建物が大規模化する都市にあっては、既に脆弱な材木では需要に応えることができませんでした。
このように、日本の林業は、世界の近代化・国際化と並行して衰退の一途をたどってきました。
■林業の再生は、自然の摂理に根ざした「密実な育成」
★シリーズ5~「自然の力を使いながら山を管理」していく、江戸時代の林業が最先端である理由~
★シリーズ6~ドイツとスウェーデンと日本の林業の違い⇒「地元の人々とつながった山守のような存在」、「自然の摂理に則った林業思想」~
これからの林業に向けた可能性はどこにあるか?は、江戸時代の林業、そして、海外の最新のドイツ・スウェーデンから学ぶべきことが多い。両者に共通する点は、非常にシンプルに言えば、「良い木材をつくる」⇒「堅牢(かたい)材木をつくる」ということです。
画像は、こちらからお借りしました。
これらで実践されていることは、
①気候風土にあった樹木を植えること。気候の寒暖の違い、山林の高低の違い、あるいは、その地に根付く生態系の違いなどを踏まえ、最も適した樹木を植えていくこと。そうすることで、大地からの養分を取り入れることで、健全な樹木を育てることができる。
②天然の「実生苗(みしょうなえ)」で、大地にしっかりと根を張り、密実な樹木を育成する伝統的な育成方法です。現代でも、吉野杉の育成では、200~300年の歳月をかけ、樹木の密度も極めて高く、堅牢な材木を生産しています。
③山と人を繋ぐ「山守(やまもり)」にて管理する体制をつくること。とりわけドイツでは、非常に大きな役割を果たしています。山は、木を育てるだけでなく、周辺の環境・自然の生態系を育む生命の器です。産業と生態系を両立させ、すべての調和を図り、持続的な産業と生態系を守り続けています。
画像は、こちらからお借りしました。
上のポイントを見て分かることは、これからの林業を考えていくためには、『林業という単体産業を越え、開かれた産業ネットワークを構築する』ことが極めて重要な課題だと考えます。
★国土保全という視点から、林業・農業・水源など、自然の力で生産する産業全体で、一つの産業体制を作り出し、技術・人材の力を結集すること。
★苗→育成→伐採・加工→施工まで、一気通貫した産業構造で、高い技術・人材の力を発揮すること。
これら、縦糸と横糸のように関係する産業ネットワークを構築し、互いの産業を相乗的に再構築していくことが求められていくでしょう。
まだまだ追求すべきポイントは多いことから、引き続き、本ブログにて追求していきたいと思います。
投稿者 hasi-hir : 2022年11月05日 TweetList
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2022/11/6465.html/trackback