【コラム】微生物の力で完全循環型農法の実現~柳田ファーム~ |
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2012年06月30日
農から始まる日本の再生シリーズ~体験・研修事業に新しい農のかたちを探る①~現状編
当シリーズではまずは上記であげたような、単に農産物をつくるだけではなく、担い手育成事業とも言える事例の取り組みとそのカベや課題を調査し、新たな農のカタチを追求します。
具体的には活力があるか、採算はあっているか、人々の期待に合っているかを判断軸とし、さらに上昇するにはどうするか?の提言を目標とします。
おそらく、それは人々の潜在的な期待にマッチするものとなり、六次産業化という言葉を超えた新たな産業としての農業のカタチを示すものとなることを期待しています。
農から始まる日本の再生シリーズ~改めて新しい農のカタチとは?プロローグより
一昔前までは、加工や直販以外の農業生産関連事業と言えば、観光農園(イチゴ狩りetc)ぐらいで運営主体である農家も、あまり積極的な事業展開をしてきませんでした。
しかし今では、体験学習や市民農園、農業研修、果てはカルチャースクール等、様々な関連事業が登場しており、新聞やテレビ等様々なメディアで頻繁に話題に上り、人々の関心も高まっています。
このような人々の関心の高まりの背後には、人々の期待があります。
そこで「新しい農のかたち」ブログでは、現在行われている様々な体験・研修事業を切り口に人々の期待を明確にし、新しい農のかたちを追求していきます。
その為に今回は、まずそうした『体験・研修事業』にはそもそもどんな種類があるのか、そしてそれらはどんな特徴を持っているのかを見ていきます。
今回取り上げる事業は、下記7事業です。
・テーマパーク
・観光農園
・体験学習
・ファームステイ
・市民農園
・スクール
・農業研修
では、続きをどうぞ!
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■体験・研修事業にはどんなものがあるのか?その特徴は?
前述の7つの事業を、①目的②対象参加者③内容の3つの軸で類型化すると、レジャー型・市民農園型・学習型・研修型の4つに類型化することが出来ます。
<レジャー型>
レジャーをメインとした事業。
大人から子供まで誰でも参加可能であり、参加者の主目的はレジャー。
他の類型と比べて特徴的なのは、“楽しむための手段”として農業体験がある、ということ。
1.テーマパーク
画像はこちらからお借りしました
農業や自然に関連する事業を1つのみではなく、複数(例えばレストランの併設や様々な体験)を行えたりするように、それら様々な事業を一体にしたもの。
比較的気軽に行ける上に食事もとれるので、家族などで行っても丸一日過ごすことが出来るのが魅力。
ex.
『あじわいの郷』 いちご摘み:150円/100g、サツマイモ掘り:500円/3株
『アグリパーク竜王』 田植え:大人2,500円 / 小中学生1,000円 / 幼児500円
2.観光農園
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個人や法人で経営している農園へ行き、いちご狩りやぶどう狩り等、
様々な収穫体験が気軽に楽しめる。
果物狩り以外にも、芋掘り体験や筍掘り等もあり、季節に応じて楽しめる。
1回の参加に費用がかかるパターンの他、取った量や持ち帰る量に応じて費用がかかるパターンもある。
ex.
『岸和田観光農園』 いちご狩り:大人1,500円 / 小学生800円 / 幼児800円 / 3歳未満無料
『観光芋ほり農園』 芋ほり:2,800円/1区画(18株)
3.ファームステイ
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元々は外国で始まった取り組みで、農家の自宅あるいは専用施設に1~2泊程度泊りがけで農業体験を行う。
農業体験も収穫体験のようなものから、実際の農家が行う農作業の一部を手伝うものまで様々ある。
農業の現場や田舎の雰囲気を楽しめることも相まって、近年人気上昇中。
ex.
『マウント茜』 一泊二日:大人8,820円~ / 小人4,410円~
『水輪ナチュラルファーム』 一週間:25,000円
<市民農園型>
大人から子供まで誰でも参加可能であり、市民農園(詳細は下記)にて作物を栽培することで種まきから収穫までの一連の生産活動が体験できる。
参加の目的は人によって様々ではあるが、参加者の農業への意識は総じて高い。
4.市民農園
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地主の所有している農地を数坪単位に区切り、その一角を借りてそこで自分の好きな作物を栽培することが出来る。
技術指導してくれる管理人が現地にいる市民農園もあり、初級者から上級者まで幅広く楽しめる。
参加者によってその目的が「自分で作った野菜を食べたい」「農業に興味がある」等様々だが、それら様々な目的を包摂することが出来るのが魅力。
都市近郊でも増えており、近年人気上昇中。
ex.
『マイファーム』 初年度運営費10,500円+月額3,150円~
『国立BBQファーム』 第1農場年会費156,000円 / 第2農園年会費42,000円
<学習型>
子供から大人まで参加可能であり、参加者によって農業を通じて何かを学習するのか、農業そのものを学習するのかの違いはあるが、主目的が“学ぶこと”にあるのが特徴的。
子供向けの体験学習は比較的以前から行われているが、カルチャースクールはごく最近の取り組みと言える。
5.体験学習
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対象によって、様々な体験学習がある。
子供向けであれば、一日かけて収穫体験や他の農作業を手伝ったりすることを通じて、学生であれば長期休暇の際に1~2週間農家に宿泊しながら農業体験を通じて、様々なことを学ぶことが出来る。
また数は少ないが、企業向けに農業を利用して社員研修を行う事業もある。
学生向けに行われる「インターンシップ」は、本格的な就農とまではいかなくとも、農業に対して何らかの課題意識・問題意識を持って臨む人が多い。
ex.
『ファームハウス コムニタ』 大人5,500円 / 小人3,000円
『類農園 インターンシップ』 無料 ※行政より助成金あり
『ハラキン ACT事業』 要相談
6.スクール
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大人向けに、栽培管理技術や土づくり、資材、品種等周辺知識まで含めて農業についてテキスト等を用いて教えてくれる。
カルチャースクールの一であるが、農業について実技のみならず知識もきちんと教えてくれるのが特徴的。
働きながらでも通えるように、週1回ペースのものが多い。
ex.
『hototo 農業実践スクール』
週末コース96,000円、年間コース168,000円
1泊2日体験大人10,800円、子供5,800円
1日体験大人4,800円、子供2,800円
『農業実践教室』受講料120,000円(4ヶ月:隔週開催全10回)
<研修型>
7.農業研修
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本格的な就農を目指す人向けに、数ヶ月から数年に亙って、現地での実際の農作業を通して本格的な研修を行う。
運営主体によって異なるが、行政からの補助金によって無償で参加できるところや、逆に運営側から一定の賃金が支払われるものもある。
ex.
『チャレンジthe農業体験・研修』 短期1日25,000円、1ヶ月73,000円、3ヶ月203,000円(宿泊費等別)。
『トップリバー 農業研修』
応募して採用されれば無償で研修できる。長期は研修費用が支給される(おそらく国の助成金を使用している)。長期研修生で日給5,500円+住宅手当18,000円
以上4類型をそれぞれの特徴ごとにまとめたものが以下の表です。
特筆すべき点は学習型、とりわけ『スクール』の「参加費の高さ」でしょう。
これは大人を対象にしているということもありますが、体験・研修事業について、サービス内容によってはこれだけお金を出してもらえる(=人々の期待に応えられる)可能性があるということを示しており、体験・研修事業の持つ潜在的な可能性を示していると言えます。
■体験・研修事業の現状
体験・研修事業それぞれの特徴について見てきましたが、それらの現状はどのようになっているのでしょうか?
※この表は、農業センサスの2000年、2005年、2010年のデータより抽出。但し、年度毎にデータ数値の抽出方法に違いがあった為、過去3回のデータを再集計し、以下の範囲に売上分類を修正したもの。
※農家の売上について、農業センサスには、500万円~700万円の枠組みで集計されている数値は、500~1,000万円未満に集計している。
※グラフに記載の無い事業については、データが無く計測できていない。
上記グラフからわかる内容として、
①3事業とも件数・売上ともに増加傾向にある。
②件数の伸びと売上の伸びを比較すると、『貸し農園』と『観光農園』はそれぞれの伸び率がほぼ同じであり、件数が伸びた分だけ売上も伸びていることがわかる。
③農家民宿は、件数の伸びに比べて売上の伸びの方が多い。
これらから考えられることとして、
件数の増加に応じて売上が増加している(=新たに出したら出した分だけ売上が増える)点から、体験・研修事業にはまだ一定の潜在需要があるのではないでしょうか。
また、件数・売上の伸びが正比例(=件数あたりの売上が横ばい)しているところから、サービス内容についてまだまだ高度化できる余地があると考えられます。
資料となるデータが少なく全ての事業について見えているわけではありませんが、前述した特徴まとめの表と合わせて考えても、体験・研修事業全体が更に高度化し、より人々の期待に応えることが出来る可能性は多分にあるのではないでしょうか。(データが少ないということも、裏を返せばまだまだ出来ることはいくらでもあるということの証と捉えることもできます。)
今回の記事では今ある体験・研修事業の特徴・現状を見ていきましたが次回以降の記事では、具体事業例を掘り下げていく中で成功要因・改善ポイントを抽出し、「人々の期待はどこにあるのか?」「どうしていけば良いのか」を追求していきたいと思います。
次回もお楽しみに!
投稿者 tibatosi : 2012年06月30日 TweetList
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