農から始まる日本の再生シリーズ~体験・研修事業に新しい農のかたちを探る①~現状編 |
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2012年07月03日
農から始まる地域の再生~新しい生産共同体をどうつくるか?5:農地は誰にゆだねたらいいのか?
『農から始まる地域の再生~新しい生産共同体をどうつくるか?』シリーズ5回目の記事です。
前回の記事では、後継者不足の農村に対し、就農意欲のある都市の若者が増加しているのにも関わらず、なぜ、新規就農しようとする個人や法人が、農地を購入できないの?という問題提起を行いました。
そして、江戸時代までの、土地所有制度と諸農民の土地所有意識の有り様を紐解きました。
土地所有制度がお上によって二転三転されたのに対し諸農民は一貫して農村共同体の維持に意識を向けてきた。共同管理によって、自分たちの田畑と共同体を維持してきた。ということが明らかになりました。
今回は、明治以降~現在の土地所有制度、意識を探っていきます。
農村住民の意識に同化していく中で、彼らは、
「農地を誰にゆだねたらいいの?」>と思っていることがわかってきました。
ゆだねたいけど、ゆだねる人がいない。
でも、新規就農したい人はいるじゃん!!
この矛盾の裏にある、農村住民の隠れざる意識とは何なのでしょう?
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1.明治以降の土地所有意識
~地租改正と農地解放が、農村共同体崩壊に決定的な影響を与えた!~
明治以降の土地所有制度として主なものは地租改正と農地解放です。
この二つの制度を軸に、江戸~戦後の農地所有・管理の流れをまとめると、
| 江戸以前 → 明治維新期 → 戦後
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
土地所有者 | “お上” → 大地主 → 個人(農家)
土地管理者 | 村 → 大地主 → 個人(農家)
となります。
参考:るいネット「日本では農地私有は地租改正によって始めて確立した(その1☆)http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=262839(その2☆)http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=262865
本連載シリーズの前回の記事にもあるように、江戸時代まで、土地はお上に所有されながらも、農村共同体全体は、自治意識の高い農民によって、共同管理されてきました。
参考:http://blog.new-agriculture.com/blog/2012/06/001340.html#more
明治維新期の地租改正は、大地主を生み出し、小作人(農民)との間に使役関係を形成しました。
地租改正とは、農民による土地の所有を認めるものした制度です。つまり自分が耕作してきた土地を自分の裁量で売却できるようになったのです。すると都会の商人たちは、所有に慣れていない農民から二束三文で買取り、大地主となりました。
しかし、この大地主でさえ、農村を自治する農民(小作人)の意見を無視することはできませんでした。
参考:るいネット「近代思想的な農地制度からの脱却が必要」http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=216512)
戦後、大地主から農民を開放するという名目のもと、農地解放が行われます。そこでは自作農主義(耕作する人がその土地を所有をすること)が徹底されるようになります。
しかし本シリーズの第2回目の記事で取り上げたように
>農地解放とは、「民主化」の名の下に、農民をバラバラの私権追求の主体(=市場の消費者)に貶めるための基盤作り<
であったのです。
参考:http://blog.new-agriculture.com/blog/2012/05/001335.html
その結果、
例えば、高度経済成長期以降、農地がつぎつぎに工場・宅地・スーパー・高速道路などに転用売却されたり、耕作放棄地が増えたことは、ご存知の方も多いかと思います。
売ろうが、耕作放棄しようが、個人の所有物なのだから個人の自由。
そんな意識が生まれていったのでしょう。
江戸時代以前の村の農地を守るという意識や、共同体の自治という意識はなくなってしまったのです。
以上が、明治以降の土地所有意識の流れです。
2. 現在の農家の想い~農地を継承するために必要なのは地域の信頼共認!~
しかしここで疑問として浮かぶのは、
「個人の裁量でどうにでもなるようになったのに、どうして農地を売ろうとしない人が多いの?」
ということです。
実際に、農業法人で農地取得の仕事をされている方にお話を伺うと面白いことがわかってきました。
農地を手放そうとしない農家の方が口をそろえて言うセリフは、
「先祖代々引き継いだ土地だから・・・」
「親が生きているうちは売れない・・・」
というものだそうです。
親というのは、70~80歳代の方のこと。
そして、“先祖代々引き継いだ土地だから”という声は、特にこの親世代の方から多く聞かれるといいます。
また、
「地域の中でも力を持っている人から、しっかり農業をやってくれると信頼してもらえるようになり、その方が土地を売ってくれた。そうすると、周りの農家さんから、逆にうちの土地を借りてくれとか買ってくれという声が出るようになった。」
のだそうです。
こうした声から垣間見えるのは、農村で暮らしてきた特に70~80代の世代が、未だに、田畑は『村のもの』『みんなで管理するもの』という意識を持っているということです。
しっかりと田畑を管理してくれる人でなければ、売ることも貸すこともできない。
でも、“この人なら信頼できる”という地域の共認がある人ならば、むしろ耕作してもらいたい。
でもそういう人がいない。「誰にゆだねたらいいの?」>と、農家の方々はそんなふうに考えているのではないでしょうか。
以上から
明治以降、人々の意識に「私有意識」が根付いた今でも、農地に対しては今なお、共同管理の意識が残っている。それゆえ、。個人であれ法人であれ農地を担おうとするならば、地域全体での信頼の共認が必要となる。
ということになります。
では、どうしたらその共認が得られるのでしょうか。
本記事の追求はここまでとしますが、今後、本シリーズ内でこの答えを追及していきます!
乞うご期待!!
投稿者 staff : 2012年07月03日 TweetList
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