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2023年02月08日

【日本の漁業はどこに向かうのか】シリーズ5~稼げる漁業の可能性はどこにあるのか?

漁業による漁獲量は1980年以降ほぼ横ばいの状況であるのに対して、世界における漁業生産量は増え続けています。

 

世界の漁業は成長産業でありながら、日本の漁業は衰退しているという話をよく聞くようになりました。これほど海に囲まれた国は珍しいのに、なぜ漁師は儲からない商売と言われるのでしょうか?

 

日本においては個人でやっている漁師、もしくは小規模の組織で漁業をしている場合が多い状況です。取ればとるほど資源が減り、漁獲量も減り収入も減ることは漁師の間で認識はされているようです。しかし、自分が漁獲量を減らしても他の漁師がとりすぎれば資源は回復しない。よって競争原理が働き、漁師は収入を上げようと、漁獲量を増やそうとするが資源が減るので結果的に収入が伸びない構造にあります。

 

◆日本の漁師の収入はどのくらい?

ノルウェーでは水産業の平均年収は2000万円と言われています。

一方で日本は漁師の年収はボリュームゾーンで400万円前後、平均344万円になっています。就職して漁師となる場合、給与は歩合で決まることが多く、その月や年の売り上げによって変動します。

※画像はこちらからお借りしました。

自然相手の商売になるので、毎月安定した漁獲高となり売り上げが上がるとは限りません。また、個人事業主の場合、福利厚生はまったくありません。一方で、漁業組合などに属して働く場合は、出漁手当、食料手当、住宅手当などが支給される場合もあります。

近年はさまざまな燃料代が高騰しており、漁船漁業における支出の約2割を占める燃油は、漁業経営に大きな影響を与えています。場合によっては漁獲量によっては漁に出れば出るほど赤字となってしまうこともあります。また、漁師は自ら船や網などといった、漁に関する設備を維持していかなくてはならないため、支出が多いのが特徴です。

 

◆成功事例の真似から

佐渡のエビ漁は、ノルウェーをはじめとした海外で漁業を儲かる商売に転換させた資源管理方法のひとつである、個別漁獲割当(IQ=Individual Quota)制度を本格導入したエリアです。

「個別漁獲割当(IQ)制度」とは何か。平たく言うと、獲り放題で早い者勝ちの漁をやめて、漁業者や漁業体ごとに「年間何キロまで獲っていいか」を事前に決めること。

 

この制度によって獲っていい上限が決められると、漁師側はとにかくエビをたくさん獲ろうという努力から、価値のあるエビを優先して獲るように努力の方向が変わっていくことになりました。つまり、価値の低い小さいエビは逃がし、価値の高い大型のエビだけを獲ることになり、それによってエビ漁が持続可能に。

 

また漁獲量が決まっているので、相場の高い時期のみを狙うようになったこと、一つの経営体の持つ漁船の数も減らしたことで経費も削減され、海がシケたら無理をせずに休むという選択肢ができ、他の船との競争意識も薄くなったということです。

IQを始めたときに比べて、今は1.7~1.8倍の水揚げ金額があります。漁をするのが10か月間で、年間200回も出ていないにもかかわらず、余裕もできて社会保険も厚生年金も加入。

※画像はこちらからお借りしました。

◆くら寿司の漁師をささえる取り組み~企業と一体化して漁師の収入を増やしていく

くら寿司は漁港で獲れる魚を直接買い付け、独自のルートで配送することで、漁師さんの収入安定化を図り、共存共栄を目指す取り組みをしています。

 

まず、定置網にかかった国産天然魚を年間契約で丸ごと買い取る「一船買い」。定置網には、人気の高い魚の一方で、品質が良く、おいしいにもかかわらずあまり知られていなかったり、加工や調理の仕方が難しかったりなどの理由で市場にあまり出回らない魚もかかります。こうした魚は比較的安値で取引されることが多いのですが、様々な種類やサイズの魚も買い取っています。

 

一船買いを進めるにあたり、課題だったのが未成魚の有効活用でした。そこで取り組んでいるのが、天然の未成魚を人工の生けすで育てる「畜養」です。1年から1年半ほどかけて育て、寿司ネタとして出荷することを目指しています。

 

また、魚の約40%にあたる骨やアラといった食べられない部位の活用が課題としてありました。

この課題を解決すべく、骨やアラを魚粉にし、くら寿司で販売する養殖魚のエサの一部として活用することにしました。

定置網漁から養殖のエサまで、漁業関係者と一体化して利益を上げていく仕組みになっています。

※画像はこちらからお借りしました。

◆流通から儲かる漁業を考える

漁業が儲からない原因の一つに売り手側に価格の決定権がないことがあります。現状の漁師の手取りが決まる仕組みは、釣った魚を仲卸しに持って行って市場で競り落とされた値段から手数料を引いた金額が、漁師の手元に残る構図になっています。市場は、法律で漁師が捕った魚を必ず荷受けしなければならないという決まりがありますので、出したい物は拒めないのですが、いくらになるかはわからないというのが現状です。

 

水産物の流通総額はだいたい加工品も含めて3.8兆円あるといわれていますが、その内の1%も電子商取引(オンライン販売)されていません。

 

売り手の魚の産地と、買い手のバイヤーをつなぐプラットフォームを利用することで基本的に売り手側が値段を決める仕組みです。オンライン上で情報を交換し、水揚げが少ない場所に釣った魚を卸すことで値段をコントロールできます。

※画像はこちらからお借りしました。

岡山の笠岡市漁港では、ほとんど既存の市場に出さずに自分たちで値段を決めて、開拓した先に販売しています。結果、年収が500万円〜600万円くらいあるとのことです。

※画像はこちらからお借りしました。

◆まとめ

今回は儲からない日本の漁業から稼げる漁業への可能性はどこにあるのか?を追求しました。

 

一つは現在行われている獲れるだけ獲るという競争原理のはたらく漁業からの転換が必要であるということ。もう一つは価格決定権が買い手にある仕組みから、漁師が決定できる流通システムを整えるということ。

 

調査する過程で多くの漁業関係者がこのままではよくないと認識しながら転換できずにいます。成功事例はいずれも国が関与したり、民間企業の参入、ITを使ったプラットホームの作成など漁業関係者以外からの動きが目立ちます。

 

実は世界的にみると漁業は成長産業であり、やり方次第で十分稼げます。異業種参入、流通改革など新しいことを積極的に取り入れることで稼げると認識されていけば日本の漁業が復活していくのではないかと思います。

 

参考文献

https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/16.html

https://www.kurasushi.co.jp/mirai/fish.html

https://myojowaraku.net/article/12104

https://www.kurasushi.co.jp/author/003038.html

https://sdgs.kodansha.co.jp/news/knowledge/41389/

 

投稿者 muramoto : 2023年02月08日 List   

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