| メイン |

2019年07月25日

「美味しい」を越える食材とは【本当に求めている食材 学士会館 取締役総料理長 大坂 勝】

今日は、少し視点を変えて、食材を調理し命を吹き込むプロの料理人を紹介します。
当時、評判があまりよくなかった学士会館のレストランに料理長として呼ばれた大阪さん。今では、その評判を押し上げた立役者になっています。どうして評価が上昇したのか?

彼の仕事に対する志は? 照準力は? 仕事で何を日々追求しているのか?そして、求める食材とは何か? 次代の若い人たちへの期待  と 真の料理人の姿が垣間見られるインタビューになっています。

マイナビ農業からの転載です。 では、転載開始【リンク

 

理想の料理を作るために、日々食材を探す一流の料理人やバイヤーたち。そんな一流の目を持った人が求めている食材とは何でしょうか。日本の「食」を牽引する人々に、いま欲しいものやこれから作って欲しい食材を取材する連載。3回目は、昭和3年開業の「学士会館」総料理長 大坂 勝氏。館内全ての料理を取り仕切り、次世代の料理人の育成にも力を入れている大坂氏に、料理人の在るべき姿、そして求めている食材について話を聞きました。

 

◆レストランの評判を上げた食材選び
——学士会館に料理長として呼ばれた当時、味の評判はあまり良くなかったとか。
知人に「学士会館に移ったので食べに来て下さいよ!」と声をかけると「嫌だよ、だってあそこ美味しくないじゃん」と何回も言われましたね。

ホテルのような大きな規模だと、役割が分かれていて互いが口出し出来ないケースが多いのですが、学士会館は料理人同士のコミュニケーションが取れる距離感があります。
良くない評判の原因がどこにあるのか、仕入れから全て見直すところから始めました。
——最初に変えていった点はどこですか?
料理長を含めて調理に携わる全員がお客様を見て仕事をする。ということです。
食材の仕入れ一つとっても、効率や条件を優先せず、お客様に満足してもらうことを基準に選ぶ。
すると、自ずと誰がどこで作った食材なのかを気にするようになるし、生産者の顔が見えてくると、どう調理したら食材が生きるかを考えるようになります。
今でも料理人達には「時間があれば調理場を出てお客様と話せ」と口酸っぱく言っていますよ。
——お客様目線の食材選びとは?
まず、その年に初めて仕入れる食材については、網焼きからボイル、ロティ、ソテー、ピューレ等、一通り調理をします。
調理場みんなを集めて食べさせて、「この野菜は魚にあうね」とか「焼いたら鴨に合うね」など意見を出し合って、仕入れや食材の調理方法を決めるんです。
野菜に限らず、肉でも魚でも同じように決めていますよ。
——もの凄く地道な仕事ですね…!
仕入れを決めた後も地道ですよ。
例えば、大根やカブが、葉が切られた状態で納品された際は、生産者に「葉をつけた状態で送ってきて欲しい」とリクエストしました。
料理のアクセントやガルニチュール(付け合わせ)に出来ないか……色んな可能性を考えるためです。
何より、生産者が一生懸命作っている食材は、全部使うのが料理人の使命だと思っていますから、勿体ないと考えるのは当然ですね。
——大坂さんが生産者と真剣に関わる姿が、職場の雰囲気を変え、意識や行動も変わっていったんですね

 
◆「美味しい料理」を越えるために
——そんな“本気の仕事人”大坂さんが求める食材とは何ですか?
夢を持って生産されていることがはっきり分かる食材がいいですよね。
作り手の想いは食材に命を吹き込みますし、伝わってくるんですよ、その息吹が。
——味や形ではないんですか?
それよりも先に、「こう食べて欲しい」という気持ちを持って欲しいですね。
私たちは料理人ですから、食材がどうやったら美味しくなるかをある程度は知っています。
だからこそ、渡された食材で美味しい料理を作るのではなく、良い素材から「これをどう生かそうか」と考えて料理したいんです。
——お客様と料理人の関係性に通じるものがありますね。
一緒なんですよ。
生産者は、料理人やお客様のことを考えて良いものを作る。
その想いを料理人が受け取って、最高の料理にする。
それをお客様が食べて反応する。その反応を料理人が受け止め、生産者に伝える——。
この循環が大切だと思っています。

 
◆お客様にも、良い食材を知ってもらいたい
——生産者の想いが詰まった食材に出会ってきて、最近注目している食材はありますか?
島根県出雲で作られる食用バラの「さ姫」ですね。
食用のために作られた品種で、独特の香りや甘い味わい、肉厚な花びらが特徴的です。
取引き先の農家さんは、無農薬有機栽培をしており、敷き藁をするために米を栽培するなど随所に強いこだわりを感じます。
北海道「中村農場」のビーツも美味しいですね。土臭さやえぐみが少なく、通常のビーツと比べて糖度も高いです。
中村さんは、「自分の目で本場のビーツを見たい」とヨーロッパ視察に行ったり、ビーツの消費が多いロシアのユーラシア協会の活動に参加をするなど、ビーツを愛して止みません。そんな中村さんご自身も魅力的ですね。
他にも注目している食材はたくさんありますよ!
——学士会館「ラタン」では、月に1度、野菜をテーマにした食事会が開催されているそうですね。生産者と食材への敬意が伺えます。
料理人自身が、「生産者のこだわり野菜をもっと知りたい」「もっと美味しく食べたい」という気持ちと、「お客様にも美味しい野菜を知ってもらいたい」という気持ちで、9年前から継続しています。 
毎回ひとつクローズアップしたテーマ野菜でコースを仕立てる形式で、その食材の色んな顔を見てもらっています。
——2019年1月で100回目を迎えた「野菜の会」記念パーティには、大坂さんの想いに共感するお客様、生産者が参加されていましたね!
記念パーティということで、食材を1つに絞らず、お世話になっている生産者さんの色々な野菜を料理して紹介しました。
参加者の方々も野菜に詳しいので、「今日は北海道のビーツはあるの?どんな風に出てくるの?」「月光(百合根の品種)はいつ出てくるの?」と大坂さんへの質問や切り込みも凄かったです(笑)。
——101回目以降の「野菜の会」も楽しみですね。
「野菜の会」は、美味しい野菜を楽しく食べる会ですが、それで未来の子どもたちに良い環境を残せたらいいなと思っています。
お客様がこだわり野菜を知ることで、買って食べるようになり、野菜が売れます。バイヤーからの注目も上がり、注文も増えるでしょう。
生産者の収入が増えると、耕作地が広がり、人を雇えるようになり、地域が盛り上がります。
若い継承者が地域にとどまり、あるいは戻ってきて、そこに家庭を築いてくれたら、昔の里山風景をとり戻せるかもしれません。
未来に向けた志ある人々が集う食事会として、これからも続けていきたいと思っています。

 
◆まとめ
大阪さんの志は、「料理長を含めて調理に携わる全員がお客様を見て仕事をする。」
「食材の仕入れ一つとっても、効率や条件を優先せず、お客様に満足してもらうことを基準に選ぶ。」 と最後に食するお客が、満足・充足できる仕事の仕方をまずは、目標としています。
そして、その先に、農家と料理人と料理を食するお客とが期待と評価で繋がっていける。また、それぞれが、未来に向けて更に活力が上昇できるようなそして、楽しく集える食事会の開催を実現しています。
単なる生産と消費というつながりのない関係ではなく、その間に料理人が入って、彼らの心をつなぎ、更に切磋琢磨していく有り様は、新しい「農」のかたち とは言えないでしょうか?では次回もお楽しみに

投稿者 noublog : 2019年07月25日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2019/07/4059.html/trackback

コメントしてください

*