| メイン |

2015年08月07日

『微生物・乳酸菌関連の事業化に向けて』-7 ~既存事業1-5 畜産~

牛豚

微生物を活用した事業を探っています。今回は『畜産』領域の探索です。
畜産も農業と同様に「命」を扱っており、そこにはやはり微生物が大いに影響しています。相手が動物なので、我々人間への影響と近い面も多々あります。

最初に「反芻胃」の仕組み、そして畜産の現場で疎まれている「悪臭」に関する見識に触れようと思います。

構造をしっかり把握していれば、成功も失敗も次に活かせるからです。
しかし同時に、市場が要請する過当競争=「安く」「大量生産」のために投与する近代飼料が、自然のバランスを崩している実態も垣間見えてきますので、この点も見逃さないで下さい。

その上で次回、可能性が感じられた既存事業を紹介します。

にほんブログ村 ライフスタイルブログへ

★反芻胃のしくみ (公益社団法人畜産技術協会http://jlta.lin.gr.jp/publish/sheep/kiji/41_01.htmlより抜粋)

反芻胃

1.消化のしくみ
めん羊や牛などの反審動物の胃は、第1胃から第4胃までの四つの室に分かれている。
第1胃で撹拝、混合、微生物によって発酵分解 →第2胃の収縮によって再び口腔に戻されて噛み反される。これを数回繰り返し、充分に細かくなった飼料は第3胃、第4胃へと送られる。
第1胃は発酵タンク。第1胃で行われる微生物による発酵こそが反芻動物の消化の特徴。いかにうまく発酵を行わせるかが飼料給与のポイント。

では、飼料は第1胃内でどのように発酵されるのか?
①繊維の消化
反芻動物が主食とする植物(粗飼料)の細胞壁にはセルロースやヘミセルロース、リグニンなど多くの繊維性物質が含まれているが、これらの成分は消化酵素で分解することが出来ず、第1胃内に生息する微生物の力をかりている。
微生物はセルラーゼなどの繊維分解酵素を生産して飼料の細胞壁を分解し、細胞壁内容物を宿主である反芻動物が利用しやすくしている。
また微生物はセルロースやヘミセルロース分解で生じた可溶性糖類を細胞内に取り込み発酵を行い、その結果生産された酢酸、プロピオン酸、酪酸などの揮発性脂肪酸が第1胃から吸収される。
一方、これらの微生物は酸性に弱く(pH6.0以下になると機能は完全停止、最も良い条件は6.4~7.0)、また飼料中に脂肪が多い場合も微生物は生存出来なくなり、粗飼料の採食量と消化率が著しく低下する。

②炭水化物の消化
セルロースやヘミセルロースは、炭水化物でもある。また穀類やイモ類の主成分デンプンも炭水化物で、いずれも微生物の発酵によって揮発性脂肪酸が生産される。
しかし、デンプンを発酵させる微生物は繊維を分解する微生物とは異なる性質を持ち、第1胃内がpH5.5となっても発酵が行われる。
デンプンの発酵では主にプロピオン酸が生産されるが、プロピオン酸が過度に生産されると乳脂率が低下し、また、第1胃内のpHが5.5以下になると限られた微生物しか生存出来ず、乳酸が過剰に生産され、健康を害してしまう。

③タンパク質の消化
タンパク質はペプシンなどのタンパク質分解酵素によりアミノ酸とアンモニアに分解され、アミノ酸が小腸から吸収される。
第1胃の微生物はアンモニアを体内に取り込んで菌体タンパク質を合成するが、微生物は飼料中に含まれるタンパク質だけではなく、尿素や遊離アミノ酸などの非タンパク態窒素化合物もアンモニアに分解して菌体タンパク質の合成を行っている。
この菌体タンパク質は、小腸でアミノ酸に分解される。(これは反芻動物の重要なタンパク源で、小腸に達する全タンパク質の40~80%を占める)
また、飼料中のタンパク質には第1胃内でアミノ酸に分解されるもの(大豆柏、ヒマワリ柏など)と、菌体タンパク質とともに小腸で分解されるもの(コーングルテンミール、魚粉など)がある。

2.消化機能を高めるためには
以上の様に、反芻動物は第1胃内の微生物が飼料中の栄養分を消化吸収している。そして、反芻動物最大の特徴であるセルロースの消化がポイント。

第1胃の酸性度の調節は唾液によって行われる。唾液はアルカリ性であり、採食中や反芻中に多く分泌されるが、粗飼料だけを採食している場合には第1胃はpH6~7で安定する。
しかし、栄養価は高いがガサの少ない濃厚飼料を採会した場合には、そしゃくも反芻も短時間であるため、唾液の分泌が少なくなり、第1胃は酸性に傾いてしまう。

粗飼料と濃厚飼料を同時に給与する場合に問題となるのは、濃厚飼料を多給した場合に第1胃が酸性化し、セルロースの分解が出来なくなる。その結果、飼料の消化率が著しく低下し、採食量も減少してしまう。
濃厚飼料の日量は同じでも、1回で給与した場合には第1胃の酸性化が著しく、正常な状態に戻るためには長時間を要する。しかし、2回に分ければ第1胃の酸性化を緩和することが可能。
急激に濃厚飼料を増給すると充分に養分を吸収することが出来なくなり、採食量も減少してしまうので注意。これは急激な第1胃の酸性化により、乳酸を生産する微生物が優勢となるため。
第1胃が酸性化の状態にあっても給与した濃厚飼料を消化吸収するためには乳酸をプロピオン酸に分解する微生物の存在が不可欠であり、このような微生物を増殖させるためには1週間程度かけて徐々に濃厚飼料の給与量を増やしていく必要がある。

・・・以上、少し長くなりましたが、反芻胃の仕組みと微生物の効用について、重要と思い引用させていただきました。微生物の働きはやはり最重要ポイントですね。
また、後半の粗飼料と濃厚飼料のバランスを指南するくだりは、効率的な生産のために人為的な操作が必要であることが示唆されています。

 

★悪臭について
『家畜は本来臭くない!』(ほんだ農場 http://www.hondanojo.com/tikusan.htm)

畜舎

生物には生まれつき疾病に対する抵抗力=抗酸化力が備わっている。
ところが、従来の畜産業では抗生剤や消毒薬を乱用してきており、その結果、病原菌に対して家畜が自らの免疫力を高めることなく、薬剤の使用が家畜を生かしてきた。
しかしその薬剤に耐えうる病原菌が発生し、これに対する薬剤の開発と投与が繰り返されることとなった。
この過程で薬剤等により酸化された環境が作り出され、これが悪臭の要因となっている。
ところが、EMを使用すると家畜のストレスが減少し、薬剤の投与も減少する。すると抗酸化の環境が実現し,悪臭の減少が起こる。

・・・悪臭の原因は、農業における農薬と同じで、生産効率を至上命題としてきた結果起きた、市場構造の弊害だと読み取れます。
そこに微生物を投入することで「悪臭」が消えるばかりでなく、家畜の体質改善、長寿命や旨み向上まで実現してしまう。

微生物の力は偉大です。

しかしやはり、根底的な問題は、現在の市場における利益第一主義の弊害です。私たち消費者はこのような恩恵を受けているわけですが、実際の畜産の現場は知らされていない。
上記、「悪臭」の文にある
>従来の畜産業では抗生剤や消毒薬を乱用してきており、その結果、病原菌に対して家畜が自らの免疫力を高めることなく、薬剤の使用が家畜を生かしてきた。
しかしその薬剤に耐えうる病原菌が発生し、これに対する薬剤の開発と投与が繰り返されることとなった。

とは、一般消費者の感覚からすれば「行き過ぎている」。この事実を知れば、消費者には受け入れられない商品でしょう。しかし畜産農家は現在の市場の過当競争の中では、そのような対応を余儀なくされている、という事だと思います。

行き過ぎた「生産性第一」がもたらす被害は、家畜だけではなく、最終的にはそれを食する人が被害を受けることになります。この点にフタをして、微生物の力だけに着目していては、根本的な解決には繋がらないでしょう。

太古から家畜と共生していた微生物の力で、自然の力で家畜本来の力を再生する点は評価できますが、この利益第一、効率、大量生産という市構造を見逃さず追求していこうと思います。

画像はこちらからお借りしました
→http://www.shinkyo-ind.co.jp/algit/farming.html
  http://www.embryo-bank.com/momoinfo/et1.php
    http://www.kankyo-giken.com/list/chiku.html

 

投稿者 noublog : 2015年08月07日 List   

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.new-agriculture.com/blog/2015/08/3284.html/trackback

コメントしてください