シリーズ 茶のチカラ 2 茶の現状~ペットボトルが落とした影~ |
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2013年07月28日
シリーズ”茶のチカラ 3”お茶に求められるものとは?消費から、日本人にとってのお茶を考え直す。
前回の記事にあったように、お茶の消費が大きく変わってきています。
ペットボトルの普及によって、手軽にお茶が飲めるようになった分、急須で飲む機会が減ったと言われています。
ところがペットボトルの消費は頭打ち。一方でリーフ茶の販売単価が下がっています。このままでは、お茶そのものの存続が危ぶまれます。
お茶をゆっくりたしなむ、手軽にペットボトルを飲む。どちらが正しいということではないと思います。しかし、その時々で、お茶に求められることがあり、それが反映された飲み方になっていたのではないでしょうか。
今回は、お茶の飲まれ方の変化と、その背景を探り、今後のお茶の在り方を考えてみたいと思います。
こちらからお借りしました。
1. お茶の飲まれ方の変化
以下の表は、お茶をどのように飲むか。(緑茶(急須で飲む)/緑茶飲料(ペットボトル、缶))を年代別にアンケートしたものです。
調査母数 999人
(モニター年代別)20歳代 87名( 8.7%)30歳代 225名(22.5%)40歳代 214名(21.4%)
50歳代 215名(21.5%)60歳代 181名(18.1%)70歳以上 77名( 7.7%)
出典:平成17年度食料品消費モニター第2回定期調査結果
(農林水産省消費・安全局消費・安全政策課)
これをみると、20~30代でも、急須で飲む方の方が多いようですが、他の年代と比べると、明らかに緑茶飲料を飲む割合が高くなっています。
つまり、年齢が低い世代=ペットボトル。年齢が高い世代=急須でお茶を飲む。と世代によって、お茶の飲み方が違うことがわかります。
2.ペットボトルと急須でお茶を飲む違いとは?
以下の表は、「緑茶は飲むが、緑茶飲料を飲まない理由」、「緑茶飲料は飲むが、緑茶を飲まない理由
」を聞いたアンケート結果です。
出典:平成17年度食料品消費モニター第2回定期調査結果
(農林水産省消費・安全局消費・安全政策課)
「緑茶は飲むが、緑茶飲料を飲まない理由」で高い項目は、「おいしくないから」「成分が気になるから」「茶葉で飲む方が好きだから」が理由として高い割合になっています。
一方、「緑茶飲料は飲むが、緑茶は飲まない理由」で高い項目は、「入れるのが面倒だから」「他の飲み物の方が好きだから」が理由として高い割合になっています。
これを踏まえて、緑茶=急須で茶を飲む良さの一つは「美味しいお茶が飲める」ということがあるように思います。
一方、緑茶飲料=ペットボトル、缶で茶を飲む良さは、「携帯できるから、好きな時にいつでもすぐに飲める。」というお手軽さであるように考えられます。
3.ペットボトル普及の背景
年齢が低い世代ほど、急須で茶を飲む<ペットボトルとなっており、「お茶の味、お茶を飲む時間を楽しむ」よりも、「好きな時にいつでもすぐ飲める」という利便性が大きな引力として働いているように考えられます。
ではなぜ、利便性が引力として働いているのでしょうか?
(1)単独世代の急増
参考にるいネットより引用します。
「これからの世代と経済④~単独世帯の急増!北欧並にむかう」
2000年台、2010年台、2020年台のわが国を特徴づけるのは、単独世
帯(結婚しない人と高齢者)の急増です。
単独世帯は、1975年には20%でしたが、2005年は30%です。今後も
38%(2030年)に向かって増えます。東京ではすでに45%が単独世
帯です。
・過去の前提だった「ファミリー需要」は減って、
・「個人需要(結婚しない人と高齢者)」が増えるということです。
三世代家族が分解した核家族化(夫婦+子供2人)は、1980年代ま
でです。2000年代と、今後は、単独世帯の急増です。
とあるように、単身世代が増えているようです。核家族が増えているというのはもうすでに過去の事のようです。
年齢の高い世代と接する機会が多ければ、一緒にお茶を飲む機会は多いかもしれませんが、その機会が減っている。さらに、単身者が増えたことで、誰かと一緒にお茶を飲む機会が減っていることが急須でお茶を飲む機会を減らしている要因と言えるように思います。
(2)市場拡大による“個別化”
参考に、ブログdeなんで屋@東京より引用します。世帯数の増加の理由について触れています。
「市場の拡大が、あらゆる集団を拡大」
上記グラフは、平成13年の厚生労働白書によるもの。世帯数は年々増加し、2010年~2015年頃、ピークを迎える予測となっている。最大でも8年後のことだ。世帯数増加は、一体何が要因だったのか?またピーク後はどのような影響があるのだろうか?
一般的には「都市化」が主要因として上げられる。戦後、サラリーマン(=新しい仕事の在り方)が誕生し、村落共同体が解体され、核家族化が進み、夫婦+子供というステレオタイプが誕生した。これは実感レベルからの視点であるが、逆に社会構造側、今、るいネットや、このなんで屋ブログでも注目されている、市場(=消費)の視点で見ると、とても面白い。
世帯数の増加は、あらゆる消費を促す。家に車、TVに洗濯機、冷房に冷蔵庫。共有できる全ての日常品を、世帯毎に所有する必要が出てくる。世帯数増加は、市場(=経済)拡大の最大の原動力となっているのである。
そう考えていくと、近代思想、とりわけ個人主義は注目に値する。オリジナリティにアイデンティティ、自分第一に人それぞれ。社会に浸透することで、世帯数の増加を促し、結果市場(=消費)拡大につながる。個人主義は、市場の支配層たる資本家にとって、実に優れた観念だったのではないか。結果、あらゆる集団は解体され、密室化(=自己中化)し、とうとう個人にまで分断されてしまった。
ここでは、世帯数の増加は、「自由」、「個人の尊重」「自分らしさ」といった「個人主義」が根幹にあり、市場拡大の原動力であったと触れられています。
利便性=個人の充足が重視されるのも、消費の在り方と大きく関係しているように思います。
だとすれば、ペットボトルの普及は、個人が尊重され、利便性に重きを置かれた事への対応だったと考えられるのではないでしょうか。
しかしながら、ペットボトルの消費は頭打ちになっており、利便性だけではもはや先が見えないのも確かです。
人々の新しい欠乏を捉えて、それにあったお茶を提供していくことが求められています。
4.これからのお茶に求められる事とは?
(1)消費を是とする空気が変わってきている
ペットボトルは普及して久しいですが、リサイクルしたとしても、ペットボトルは資源の消費が大きいと言われています。現在では、資源の消費を抑えるために、容器が簡易なものが出てきたり、マイボトルを持つ人が増えてきたり、それ以外にもコンビニで弁当を買っていた人が、弁当を作って持参するようになったりと、利便性を超えて、消費・浪費を抑える動きが生まれてきています。
(2)手作り感がうけている
冷凍食品といえば「お弁当のおかず」がイメージしやすいと思いますが、冷凍食品メーカーは、「食卓で食べるごはん」として、様々な商品開発をおこなっているようです。リンク
今までなら「レンジでチン!」で終りだった物が、自分でちょっとアレンジを加えて食べる物に。
これは(1)の事例にも共通することのように思います。
(3)個人の充足→みんなの充足への転換
>しかし、一方、カフェや外資系のコーヒーハウスが増加していることから見ても、人つながりや何らかの交流の場、そこでの嗜好品への欠乏が高まっていることも間違いありません。お茶の活路もその路線上にありそうです。
とプロローグにあったように、人つながりや交流の場を求める人が増えているように思います。
以上の事を、お茶に引き付けて考えれば、手軽さ、便利さのペットボトルの次には、昔ながらの“急須でお茶を飲む”“誰かと一緒にお茶の時間を楽しむ”ということが、再び脚光をあびてくるのではないでしょうか。
急須で茶を飲む場面を考えてみると、茶の間でみんなで飲む。お客が来た時にお茶でもてなす。一人でゆったりお茶を飲む。様々な場面が思い浮かびますが、お茶の時間そのものを楽しむという事も、お茶の魅力の一つとして挙げられると思います。
そこで、お茶の次代の可能性を見出すために、もう一度、昔ながらのお茶の良さ、日本人にとってのお茶を見直してみる必要があるとお思います。
ということで、次回はお茶の文化について、追求してみたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
投稿者 keitaro : 2013年07月28日 TweetList
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