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2013年07月24日

シリーズ 茶のチカラ 2 茶の現状~ペットボトルが落とした影~

今シリーズ2回目の記事です。今回は、現代における”お茶の実態”に切り込みたいと思います。
始めに、皆さんお茶と言われて多くの方が連想されるのは、「ペットボトル」ではないでしょうか?今やほぼ生活の一部として存在し、無くてはならないものになっていますよね。
しかし、一方でお茶農家さんはと言うと・・・年々減少し、衰退の一途を辿っています。
「えっ!ペットボトルが多く飲まれると、お茶農家さんは潤うんじゃないの?」と思う方は多いと思います。
しかし、一概にそうではないのです。意外だとは思いますが、これが現状なんです。。

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◎ ペットボトルの登場が茶農家衰退に拍車をかけた
 
下表を見てもらうと分かりますが、平成8年に輸入が急増しています。何を隠そうこの年に今でも沢山の方が愛用されている500mlのペットボトルが急速に普及しています。
当時(平成8年)はまだ、国内の生産量が追い着かず輸入していましたが、平成18年前後を契機に、ペットボトルに使用される茶葉に対する生産基盤が築かれ、輸入物⇒国内産へシフトしていっているのが現状です。
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この当時、既に大量生産・大量消費という市場の原理が確立されている世の中に、ペットボトルもこの波に乗る形でみるみる浸透していきました。
生活レベルでこの時代を見てみますと、各家庭における核家族化がいよいよ顕在化し、各家庭内でもそれぞれの部屋、それぞれの空間、いわゆるの時間が増えたように思います。これを貴重とする意識さえも出てきています
結果、従来の家庭にあった茶の間を始めとする「家族団らんの場」が無くなり、家庭内でも個人主義が蔓延ってしまっています。
個々に分断された生活、また、それが普通になってしまっている当時の時代潮流を見ても、”個”単位で楽しめるペットボトルが最適だったのは言うまでもありませんよね。
ではなぜ、ペットボトルの需要が増えると茶農家さんは衰退していってしまうのでしょうか
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この表を見てもらうと、茶葉全体の生産量と一番茶の生産量はほぼ比例して減少傾向にあります。しかし、ちょうどペットボトルが普及した辺りから逆に生産量が伸びている
“冬春秋番茶”。
次の資料は全国の荒茶生産量の推移を表したものですが、
 
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茶生産量は平均して減少しているわけでは無さそうです。
実質、一,二番茶の生産が減少傾向にある中、冬春秋番茶の生産が急増しています。  
ペットボトルの普及冬春秋番茶生産の急増から見ても、
ペットボトルに使用されているのは、一番茶の1割強程度の安価で取引されている冬春秋番茶である事はほぼ間違いないと思います
 
 
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図4は、緑茶の生産者価格の推移を生葉と荒茶の両面からみたものである。これは、茶の生産者がいくらで茶葉を出荷しているかを示しているものである。生葉、荒茶価格ともに平成9(1997)年、10(1998)年は大きく下落するが、翌年にかけては急激に高騰している。これは緑茶ドリンクの開発のため、飲料メーカーが茶葉を買い込んだためと考えられている。メーカーが茶葉の価格を抑えて生産者と契約を結んだためであろうか、翌年以降はまた下落が始まっている。緑茶ドリンクの登場により、茶葉の需要は高まったが、飲料メーカーが安価な茶葉を求めるため、実際に取引される茶葉の価格は下落の一途をたどっている。生産者の立場からすれば、茶葉は売れるようになったが、得られる利益は大きく増加していないのである。それどころか、ドリンク用の茶葉は大量の茶葉の供給を生み出したため、茶の単価を落とし、茶の大量生産傾倒に拍車をかけることとなった。少量高品質の茶を生産する川根のような茶農家にとっては大きな打撃となったのである。

引用にもありますが、現在でもペットボトル茶は生活に親しみがあり、その需要は巨大です。
この”巨大な需要”=”冬春秋番茶の生産”に応えられるのは、現段階で静岡,鹿児島,三重の3県しかありません。
(上記引用は、静岡県の川根地区の現状を語ったものです。静岡県ですら厳しい状況に立たされているのが分かります)
他府県はというと、このような安価な茶葉が多く出回ったため、茶全体の価格が下がり、一番茶(高級茶)はダブつき、輸出に頼りはじめている所も出てきている状況です。
これまでの茶業の形態を大きく変えてしまったペットボトルの登場は個別農家を飲込み、茶業もまた大規模化を余儀なくされました。
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大規模化し安定供給が求められる市場に応えるべく、徹底して”機械化”され、また、肥料・農薬といった化学物質に頼らざるを得ない状況で今日に至っています。
つまり、茶業の衰退は主産県(静岡、鹿児島、三重)からではなく、ペットボトルという巨大な需要(市場)と大規模化≒超機械化に対応しきれない他産地から顕在化しており、危機的状況に陥っているのです。
 
しかし近年、ペットボトルの需要も頭打ちとなり、伸び悩みをみせています
 
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これは、お茶以外の清涼飲料水が多く普及した影響もありますが、消費者の”お茶”の捉え方が変わってきているのではないでしょうか
次回は、確実に変わりつつある、”お茶を飲む(楽しむ)”消費側の意識の変化を追求していきたいと思います

投稿者 staff : 2013年07月24日 List   

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