食と日本人の知恵シリーズ ①『菌の力で永く美味しく味わおう!!』 |
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2013年03月16日
食と日本人の知恵シリーズ② 『お漬け物と菌のおいしい関係』 サプリ不要☆ミネラルもビタミンも乳酸菌も「お漬け物」から頂きます!
「しば漬け食べた~い!」
なんてキャッチフレーズのコマーシャルが以前ありましたね。「たくあん」や「梅干」「野沢菜」「しば漬け」などなど。日本人なら誰もが共感してしまう「お漬け物」に対する深い想い。
私たち日本人の食生活になくてはならないこの「お漬け物」。なんとさかのぼれば縄文時代から食べられているのです。今回は、これまでの長~い時間の中で培われてきた「お漬け物」に見出される日本人の知恵をご紹介します☆
さて現代の日本人は偏った食生活から、カロリー摂取量に対して、ミネラル不足やビタミン不足だと言われています。そして、それを補う為のサプリメントやビタミン商品が巷で大人気ですね。腸内で善玉菌を増やすヨーグルト飲料なども女性を中心にとても人気です。
でも、昔から日本人にとって身近であった「お漬け物」が、実は長~い間、それらの役割を担ってきたことをご存知でしょうか?
固形発酵の漬け床 <日本の漬け床の特徴>
日本のお漬け物を漬ける漬け床には大きな特徴があります。西洋では、酢付けやワイン付けといった「液体」が主流であるのに対して、日本はぬか味噌付け、麹漬け、酒粕漬け、味噌漬け、もろみ漬け、べったら付け等、「固形」の漬け床が主流です。
しかも、必ずと言っていいほど微生物が関与した発酵漬けになっている点が特徴です。もちろんアルコールやビネガー(酢)などの液体漬けはその生成過程においては発酵に頼りますが、材料を漬け込む段階では強い殺菌作用を持つ為、塩漬けなどと同じく主に菌をブロックする事による保存方法です。
それに対して漬け床を微生物の力で発酵させ、更に生きた菌の中に野菜を漬け込むという発想は、日本人の知恵の深さを実によく示しています。これは日本の気候風土を基盤にした微細菌の繁殖環境、そして穀物中心(お米、大豆、稗、粟、麦など)の日本人の食習慣と深く関係しているようです。
漬け物の原理 <保存効果と風味上げと栄養アップを同時に行なう>
漬け物が風味豊かに漬け上がる原理は、塩分の作用によって野菜の細胞から水分が出て脱水されることで、細胞の生理作用が止まり保存が利くようになり、脱水された水分に代わって漬け床の味や香り、そして栄養成分が野菜に入っていくことにあります。
乳酸菌とお漬け物<善玉菌で整腸作用アップ!>
知恵モノの日本人はまた、日本の漬け物が、腸内で体に良い働きをする微生物、とりわけ乳酸菌をその腸内で増やすのに大いに役立つものであることを、体験的に知っていました。
野菜にはもともと植物性乳酸菌(ヨーグルトなどは動物性乳酸菌。植物性の方が腸の奥まで届くので整腸作用も効果大♪)が付いていますが、これを漬け物にすると、食塩に対して抵抗力の強い乳酸菌はその漬け床で盛んに繁殖します。人がこれを食べると、漬け物から入った乳酸菌の一部は腸に到達し、そこで活発に増殖します。そのため腸内は、体に良い乳酸菌で占められるようになり、腐敗菌や異常発酵菌などが腸に進入しても、その繁殖を抑える事ができるのです。
そのうえ、有益な乳酸菌が腸内で多くなると、彼らはそこで多種のビタミンを合成してくれるから、日本人はこれを腸から吸収し、体の働きのために役立てたのでした。
だから昔の人は、漬け物を食べるとき、漬け上がった野菜だけを食べるのではなく、二日に一度は、漬け床をぬるま湯に溶いて飲んでいたといいます。ぬか味噌などはまさに乳酸菌の宝庫で、あたかも西洋人がヨーグルトや乳酸菌飲料を飲むのと同様に、乳酸菌が健康に役立つ事を日本人は知っていたのです
日本の漬け床の代表、ぬか味噌 <嫁入り道具の必需品>
日本の代表的なお漬けものといえば、ぬか漬けですね。なんといっても、ぬか漬けをするのは世界でも日本人だけなんです。そして、その漬け物の漬け床になっているのが、いわゆるぬか味噌です。ぬかは玄米を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽などで、これにお水とお塩を加えて発酵させたものがぬか味噌です。
この中に大根、きゅうり、ナス、カブ等の野菜を漬け込んだのが「ぬか漬け」と呼ばれるお漬け物ですね。一切の無駄を出さない有効利用の精神と、毎日地道に続けて次世代に受け継いでゆくその姿勢は、まさに日本人ならではの文化かもしれません。
ぬか味噌の中の世界 <ぬか漬けと微細菌たちの濃密な関係>
ちなみに、このぬか味噌2g(親指のツメくらい)の中には、なんと2億匹もの乳酸菌や酵母、酪酸菌などがひしめき合って生活しています。さらに盃に一杯も取れば、もうその中には地球の人口を遥かに超える数の微細な生き物たちが生息しているのです。
その中でも、菌の2大勢力が酵母菌と乳酸菌たち。酵母菌は好気性なので空気が必要。乳酸菌は嫌気性なので空気が嫌い。この二つの菌をバランスよく繁殖させる事によって、ぬか漬けの風味は格段にアップします。ぬか味噌を毎日かき混ぜるのは、空気を入れて酵母菌が乳酸菌勢力に負けないように人為的にバランスさせる為なんですね♪ もし手入れをサボってしまって、ぬか味噌が乳酸菌勢力に支配されてしまうと・・・すっぱ~いお漬け物になってしまいます。
バランスよく発酵したぬか味噌の中に野菜を漬け込むことにより、微生物たちによって分解された「ぬか」のさまざまな成分が漬け込んだ材料に浸透して行き、じつに風味豊かな野菜に変えることができます。つまり、微細菌たちが協働で美味しくしてくれるわけなんです。
ぬか漬けの効用 <日本人にとってのサプリメントはお漬け物>
ぬかにあった豊富な微量成分、とりわけミネラルやビタミン群が漬け物の中に移行される上、さらに発酵の際に微生物によって新たに生成されたビタミン類も野菜に吸収されるから、漬けあがったものは、栄養的にも相当の価値を持ったものになります。
昔の質素な日本人の食生活の中にあっては、このぬか漬けが多くの日本人にとって貴重なビタミン、ミネラルの補給源でした。糠(ぬか)はビタミンB群の宝庫ですから、脚気や体力の衰え、疲労といったビタミンB群欠乏症が、このお漬け物によって予防されていたのです。(まさに現代でいうサプリメントですね。しかも、人工物質を一切含まないオール天然素材です)
お米をついて出た副産物の糠から、漬け物の風味を高めるだけでなく栄養素まで摂取する日本人。無駄のないどころか、食材としての野菜の価値をも高めてしまう素晴らしい知恵。日本人ってすごいですね~
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お漬け物は、食べ物の保存を可能にし、微細菌の力を借りてよりおいしくさせ、そして栄養豊富につくり変えます。
顕微鏡も科学的分析機器も無い時代から、目に見えない微細菌のもたらす現象を捉え、日常の食生活の中に取り入れてきた日本人。その対象認識力と照準力の凄まじさには、本等に驚かされるばかりです。
五感をフルに使い、環境と食材の間に発生する微細な現象と継続的変化を認識し、人の営みの中で有用であろう可能性を抽出し、身体感覚に照らし合わせて積み重ねてきた。その日本人の知恵と技と工夫の結晶こそが「お漬け物」なのです!
投稿者 kasahara : 2013年03月16日 TweetList
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