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2010年11月27日

シリーズ口蹄疫問題の本質に迫る! 第4回 工業的生産への変遷

>需要側の変化、即ち、役用→肉用への転換→肉の需要拡大が、牛の生産、飼育経営を明確に分業化、工業生産化し、そして、そのことによって、口蹄疫に代表される種々の問題につながっていると予測されます。
前回では、牛の役割が役用→肉用へと転換 し、肉の需要拡大が牛肉生産の工業化・分業化 を推し進めてきたというお話でした。
今回は、牛肉生産の工業化・分業化についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

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牛肉の役割が役用から肉用へと転換した事は、牛そのものが商品 なる事を意味しており、商品価値の高いを牛を生産する事にシフトしていきます。
そこで行われたのが品種改良です。
現在、牛肉の価値は、(社)日本食肉格付協会というところが肉の格付を行って決められます。
かなり厳密に規格化されていて、ランクが一つ下がると、ウン十万と価格が大きく下がります。

牛肉の格付けより引用
牛肉の格付けには2つの等級が使われます。1つは歩留(ブド)まり等級、もう1つは肉質等級です。歩留まり等級はA、B、Cの3段階に分かれておりAが最も良く、肉質等級は5、4、3、2、1の5段階に分かれ5が最も良い等級となります。
歩留まり等級  高 A-B-C 低 生体から皮、骨、内臓などを取り去った肉を枝肉(エダニク)といいます。 このとき生体から取れる枝肉の割合が大きいほど等級が高くなります。 つまり同じ体重の牛でもたくさんの肉が取れる方が良いということです。
肉質等級  高 5-4-3-2-1 低 まず「脂肪交雑」、「肉の色沢」、「肉のしまりときめ」、「脂肪の色沢と質」の4項目について評価が行われます。 そして4項目の総合的な判定から最終的に肉質等級が決定します。 ではそれぞれの項目は何を表しているのでしょうか。
最初に「脂肪交雑」ですが、これは霜降の度合いを表しています。 BMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)という判定基準があり、これによって評価されます。
「肉の色沢」は肉の色と光沢を判断します。 「脂肪交雑」と同様に、肉の色にはBCS(ビーフ・カラー・スタンダード)という判定基準が設けられています。 一般的に鮮鮭色が良いとされています。 また光沢については見た目で評価されています。
「肉のしまりときめ」は見た目で評価されます。 肉のきめが細かいと柔らかい食感を得ることが出来ます。
最後に「脂肪の色沢と質」ですが、まず色が白またはクリーム色を基準に判定され、さらに光沢と質を考慮して評価されます。
これは取引をする場合の目安となり、格付けの等級が高ければ値段も高く取引されます。
また当然のことですが格付けの等級が高いほどおいしい牛肉であると言えます。

評価指標ができたことで、牛の品種は「歩留まりが良くて、肉質が良いもの」という一定の方向に収斂していきました
一方で、同じ品質のものを作り出す技術も進歩していきました。その一つが人工授精です。

牛の人工授精より引用
20世紀半ばまでは牛に子供を産ませるために、雄牛を雌牛のところへ連れてきて交配していました。これでは、1頭の雄が交配できる雌牛の数が限られます。自然交尾では1回に1頭の雌を妊娠させることしかできません。人工授精では、1回に射出される精液を分けることができるので牛では50~100頭に授精できます。「授精」というのは雄の精子を雌の子宮内に注入し妊娠させる技術です。自然交尾では1頭の雄が1年間に交配できる雌の頭数は50~100頭でしたが、この技術を利用すると、数百頭から数千頭に増加します
 自然交尾では遠くにとても良い牛がいても、連れていけないと交配できませんでした。人工授精では精液を輸送すれば授精できますので、農家や技術者の負担は軽くなりました。
 人工授精では1頭の雄牛の子供が短期間にたくさん産まれるようになることから、雄の遺伝的能力を早期に判定できるようにもなりました。
 さらに、自然交尾では交尾のために伝染する病気の発生する事もありました。これらの病気にかかると、流産したり不妊になったりするので農家の損失はばく大なものでした。
 他にもいろいろな利点があって、今では、ほとんど人工授精で子供を作ります。精液も凍結して保存できるようになり、雄が死んだ後でも授精に利用できます。

 
人工授精の技術により、高い確率で優秀な子孫を残せる一頭の雄牛から、年間で数百頭から数千等の子牛の生産をまかなう事が可能になりました
宮崎の口蹄疫問題で話題になった、スーパー種牛もこのようにして出てきたものです。

面白き ことも無き世をより引用
 忠富士など6頭は、県畜産改良事業団(同県高鍋町)が人工授精用に生産する冷凍精液の主力牛。年間15万本のうち6頭で全体の約9割を賄っていた。特に忠富士は、最大量の年間3万7900本の冷凍精液を供給。
 事業団では6頭を避難させた2日後の15日に感染が確認され、次代を担う種牛や、引退した「安平」など49頭を含む308頭が殺処分される。
 県の畜産再興を担う6頭のうち、スーパー種牛を失うことに関係者には衝撃と落胆が広がった。
 県庁で会見した高島俊一・県農政水産部長は「事業団にいる時に感染した可能性が高い。県畜産界のエースを失った。大変申し訳ない」と陳謝した。【小原擁】
 ◇ ことば・忠富士
 約22万頭の子牛の父となったスーパー種牛「安平」の遺伝子を受け継ぐ宮崎市産の種牛。913キロの大型で、生殖適齢期の7歳。肉質は霜降りが多く、肉に厚みがあり、ステーキなどに使われるロース肉が多く取れる。昨年の県畜産共進会肉牛の部でグランドチャンピオンに輝いた。
 ◇ 「ショックが大きすぎる」三重の松阪牛関係者
 三重県松阪市の松阪牛連絡協議会副会長、瀬古清史さん(61)は約500頭の肥育牛を育てているが、その半数が「忠富士」から生まれた子牛だ。
 「ショックが大きすぎる。6頭の中でも、忠富士は性格が優しくておとなしく、健康で大きくなりやすいし、霜も入りやすい。三拍子も四拍子もそろった牛だった」と声を落とした。
 「宮崎とは付き合いが長かったので、6月ごろまでは何とか耐えたいと思っていた。でも一番大切な種牛がやられてしまった今、他県からの買い付けを早く検討しないといけない」と話す。

6頭で、年間13.5万頭分の精子をまかなっていた とは驚きですね!そしてかの有名な松阪牛も宮崎県の種牛から来ているものなんですね
品種改良と人工授精の確立で、品質の良い牛を効率良くたくさん生産する事が可能になりました。
しかしそれは一方で、遺伝子の単一化という問題を孕んでいます。

るいネット「遺伝多様性の低下という問題」より引用
1991年牛肉の輸入自由化が転機となり、外国産との差別化からか「霜降り」が注目され始める。「霜降り」は、筋肉の間にサシ(脂肪)が入っている。牛はそもそも牧草が主食のため、サシが入りにくい。ところが、黒毛和種にはサシが入るそうだ。これは、遺伝的能力と食肉用として改良に改良を重ねた結果であり、日本が世界に誇る技術だという。こうして、霜降りに優れ、その遺伝的能力のある種雄牛をつかった人工授精での改良が始まっていった。
しかしこれが、黒毛和牛の遺伝的多様性を極めて低下させ、危険な状態に陥らせてしまった。遺伝的多様性が低いと特定の病気や環境変化に弱くなる。
性質が大きく異なる品種が多様なほど、種としてのウシが生き残る確立は高くなる。種を維持するには遺伝的多様性が重要だ。また、急速な品種改良に対応できるのも、この生物多様性があるからだ。

現在の口蹄疫をはじめとして、家畜の病気の爆発的拡大というニュースを目にする機会が増えているように思います。
これは、商品価値が高いものを効率的に、かつ大量に(=工業的に)生産する事を優先させた結果、遺伝子の単一化という自然の摂理をあまりにも逸脱してしまった事が背景にあるのではないでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
最後にポチッとおねがいします。

投稿者 keitaro : 2010年11月27日 List   

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コメント

うーん、いい視点ですね☆
確かに言われてみれば、女性の力は大きい!

投稿者 たむたむ : 2012年12月4日 20:44

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