2020年1月28日
2020年01月28日
地球の循環とは何か? (2/2) 農業を地球の循環の中に存在する生業ととらえていく
前回からの続きです。
最近よく、持続可能な循環型の社会を目指す。ということが言われてきています。そもそも農業も種を撒き、葉、茎が育ち、実がなり、その実を収穫し、次の年にまた種を撒くという循環型の生業です。
平成28年 Seneca21st 話題75(大串 和紀)からの転載です。
転載開始 【リンク】
4.主な循環の例
〈水循環〉
・地球上の氷が解け水になり、水は蒸発して水蒸気になる。水蒸気は大気中で冷やされ、水(雨)や氷(雪)となって地表へ降り注ぐ。
・この過程で、水に溶け込んだいろいろな物質を水と共に循環させている。
・水は、生きものを養う。
・また、水循環を通じて地表の熱エントロピーを大気圏外(宇宙)へ運び、放熱する。
〈大気の循環〉
・太陽光によって温まった空気は膨張し、軽くなり、上昇する。
・一方、上空の空気は大気圏外(宇宙)へ熱を放出し冷たくなって地表へ向かって下降する。
・地球上では緯度により太陽から受け取る熱量が異なり、これが大気の循環にも影響を与える。
・さらに、地球自体が回転していることにより、大気の流れに力を及ぼす。
・この結果、大気に大きな流れ=循環を生じさせる。
・大気の循環は水循環にも影響を及ぼし、地球上の環境にも大きな影響を与え、気候の変化、気象の変化は大気の循環によりもたらされる。
・気候の変化は様々な生物を産み出し、生命や物質の循環にも影響を与える
〈生命の循環〉
・太陽の光と地球上の栄養分(物質)によって生命が育まれる。
・植物が育ち、それを食料として動物が育つ。動物の糞や死骸は微生物が分解して、物質にまで分解する。そして、その分解された物質が再び植物の栄養分として利用されるという大きな循環を形成している。
・また、食物連鎖によるエントロピーの受け渡しを通じて、エントロピーを宇宙へ放出するシステムにも関与している。
・生物の循環は、光合成による二酸化炭素の吸収と酸素の放出を通じて、大気の組成安定にも役立つ。
・この循環には、異なる環境に対応してすべての生命体が関わっており、そのために生物多様性が形成された。
5.地球環境問題の発生
〈人間圏の誕生とその影響〉
松井孝典氏によれば、
・人類は約700万年前、狩猟採取(食物連鎖)を基本とする生物圏の一員として誕生したが、約1万年前、農耕牧畜を発明することで、太陽からの放射エネルギーと地球内部にある熱が駆動力である地球システムの物質・エネルギーの流れに直接関わって生きるようになり、生物圏の中に新たに人間圏というものを生じさせた。
・さらに、産業革命以後、人類が化石燃料を使用することで、地球システムの駆動力を超えて、自らエネルギーを自由にコントロールできるようになった(人類が駆動力を手に入れた)ことから、人間圏が大きく広がり始め地球規模の文明を築くようになった。
・そして人間圏が生物圏から独立した存在と認識できるように、その活動が及ぼす影響が大きくなり、その結果、これまでに地球が長い年月をかけて形造ってきたバランスを崩してしまうようになり、その一つが資源・エネルギー問題、もう一つが地球環境問題として表れている。
〈現在の地球環境問題(エントロピーの観点から)〉
これをエントロピーの観点からみてみよう。
・地球人口の増加とそれに伴う人間の活動により地球のエントロピー(「汚れ」)が増大し、もはや自然の循環機能だけではそのエントロピーを地球外に排出することが不可能になった。
・産業革命以降の工業化の進展は、様々な地下資源を掘り起こし人間の活動に役立つ様々な製品を生み出したが、一方で、自然界の微生物等が処理できない様々な廃棄物を人工的に作り出し増加させた。
・また、石油文明は地下に眠っていた炭素をCO2という形で大気中にばら撒き、エントロピーを増大させた。(既存の循環システムでは処理できない量)
・微生物等の生態サイクルが処理できる廃棄物の量であれば、地球のエントロピーを一定に保つことができる。しかし、処理できない廃棄物や、処理できてもその能力を超える廃棄物の量であれば、地球にエントロピーが蓄積され、地球は汚れによって汚染されることになる。
地球誕生以来、地球の環境は大きく変化している。現在の「汚れ」も、長い年月を経れば、あるいは地球自身の力によって浄化することが可能になるかもしれない。しかし、そのためにはそれを担う生物の進化等に莫大な時間が必要となろう。
~中略~
6.人類社会を持続的なものとするために
〈人間が、種として存続していくために〉
人間が持続的に地球上で存続していくためには、地球の生命と物質の循環を基本としたシステムの中に、その行動の範囲を納めなければならない。
具体的には、大気圏、地圏、水圏、生物圏のそれぞれの存在と相互関係を崩さないように行動する。
例えば、地圏に存在する化石エネルギー等には頼らない、生物多様性を保全する、生命の物質の循環の場である開土面、開水面を減少させない等である。
また、これまでに地球上に存在しなかった物質を、人間が新たに地球環境に放出しないことも重要である。
〈農業のあり方とエントロピー〉
一つは、できるだけエントロピーを発生させない農法を採用すること。
二つ目は、この地球上で発生し増加したエントロピーを小さくするために、生命の循環サイクルの輪を大きくすること。
・余分なエントロピーを発生させない農業
経済優先の世の中では非常に対応が困難なことであるが、農業機械に使用する燃料を減らす、化学肥料や農薬の使用量を減らすことなどが、具体的な対応となろう。
常にそのようなことを意識して農業を営むということが大切。
・生命の循環サイクルの輪を太くすること
土壌の持つ栄養分と太陽エネルギーを十二分に活用して生産量を増加させる。また、収穫残瑳や家畜の糞尿等の有機物はできるだけ農地に還元することが大切。
当然、不必要な農薬の使用等は避けるとともに、生物多様性の確保の観点から、農村地域で多くの生き物が生息できるよう配慮することが求められる。
~中略~
7.おわりに
本稿では、地球の環境と平衡状態を保つために、いかに地球が持つ循環の仕組みを保全していくことが大切かを、エントロピーの概念を用いてまとめてみた。
Seneca21Stの主題は「物質と生命の循環」である。
これは、とりもなおさず、地球上に住む我々人類の永続性を願ってのことである。
地球は誕生以来、長い年月をかけて、自らの平衡状態を保つために「物質と生命の循環」の仕組みを構築してきた。地球の一構成員に過ぎない人間が、この地球の仕組みを壊してしまうことは、即、人類の滅亡につながるであろう。
~後略~
以上転載終了
◆まとめ
地球の姿を俯瞰して見ると、これまで人類が形作ってきた生産活動によって、地球には徐々にエントロピー(汚れ)が蓄積され、元々地球自身のもつ「循環」という自浄作用のシステムでは、浄化できないくらいに、汚れは蓄積されていると今回、著者は論じています。
一方、人類という種が生存していくための生産活動とその活動によって発生するエントロピー(汚れ)の浄化がしっかり行われるためには、将来、農業の役割は、非常に重要な位置にあるのではないでしょうか?
何故なら、農業という生産活動の成果そのものが、人類を存続させていく かけがえのない生業であることは至極当然ではありますが、著者が言う、地球の有する「水の循環」「大気の循環」「生物の循環」と農業との関係を照らし合わせると、農業は、これらの循環の中に、非常に直接的で 関わり合いの深い位置にあるからです。
少し乱暴な意見かもしれませんが、これまでの商業的農業と自給的農業という区分けではなく、その生産過程において、「水」、「大気」、「生物」等 の循環システムに積極的に関わっている農業、エントロピー(汚れ)の発生を抑えた農業、更に視点を広げると付随する資材や流通までを含んだ地球に負荷のない農業活動・・・・・地球の元々持っている循環システムの中で農業活動を中心とした生産活動をどのように構築していくか?
その知恵と工夫を取り入れながら新たな農業の形を作り上げていくことが必要になっていくのではないでしょうか?
そして、我々も【新しい「農」のかたち】のブログを とおして、日々追求し続けていきたいと思います。では、次回もお楽しみに
投稿者 noublog : 2020年01月28日 Tweet