2019年10月31日
2019年10月31日
農作物が収獲できない!世界各地で昆虫が減少~その背後に存在する危機
現在、農ブログでは、土の探求をしていますが、今日は、視点を変えて、農作物と生物、特に送粉者である昆虫類に焦点を当ててみたいと思います。
まずは、日本の農業における送粉者(昆虫)の重要性とは?について紹介します。
GROW RICCI 【リンク】からの転載です。
転載開始
農業に携わる中で「昆虫」に対するイメージにはどのようなものがあるでしょうか。農作物に害を与える「害虫」としてのイメージが強い人もいるかもしれませんが、昆虫の中には「送粉者」としての役割を担うものも少なくありません。
◆送粉者(昆虫)とは?
送粉者は、 “植物の花粉を運んで受粉させ(送粉)、花粉の雄性配偶子と花の胚珠を受精させる動物のこと” を指します。花粉媒介者、授粉者・ポリネーターと呼ばれることもあります。
◆送粉者の役割
送粉者の役割は、植物の花粉を運び、受粉させることです。送粉者自身が意識的に授粉を行なっているわけではありませんが、種子植物が有性生殖を行う上で、受粉は重要な過程です。送粉者など動物を使って受粉を行う植物は、花弁や蜜、匂いなどに工夫を凝らし、動物を引き寄せる必要が生じますが、送粉者が花粉を運んでくれることで、植物は自分の遺伝子を拡散することができます。
◆送粉者の種類
送粉者は約20万種あると推定されています。その大部分は昆虫であり、もっともよく知られている送粉者はハナバチ類(ミツバチやクマバチなど)です。ハナバチ類の体は毛で覆われています。毛で覆われた体は帯電しており、花粉が付着しやすいという特徴があります。また後肢には花粉籠と呼ばれる構造があり、意図的ではありませんが、その構造を使って花粉を花から花へと運んでいきます。
また鱗翅目に属するチョウやガも送粉者としての役割を担うことがあります。他にもアブや一部の甲虫、アザミウマやアリ、脊椎動物ではコウモリなど、送粉者の種類は多岐にわたります。
◆送粉者がもたらす農業への経済価値
なお少々古いデータにはなりますが、国立研究開発法人農業環境技術研究所が面白いデータを発表しています。平成28年2月に発表された「日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価」では、送粉者がもたらす農業への経済価値について報告されています。ここで記載されている「送粉サービス」とは、農作物が果実等をつけるために必要な、花粉を媒介する機能を指します。
農作物の生産額と花粉を媒介する機能への依存割合を集計して経済価値を推計したところ、
・送粉サービス総額 約4,700億円
・人為的に送粉者として用意した昆虫によるもの 約1,400億円
・野生の送粉者によるもの 約3,300億円
と算出されました。送粉サービスの総額は、耕種農業(植物を利用して行う農業。動物を利用するのが畜産農業)の8.3%に相当すると言われています。送粉者としての役割を担う昆虫がもたらす経済価値は、それなりに高いと言えるのではないでしょうか。
以上転載終了
—————————————————————————————————–
このように、送粉者として重要な役割を担う昆虫に今何が起きているのか?
2019年2月に BBC NEWS JAPANに紹介された記事を転載します。
—————————————————————————————————–
世界各地で昆虫が減少、害虫は増加傾向に=研究【リンク】からの転載です。
転載開始
世界中に生息する昆虫の40%が「劇的な減少率」で個体数を減らしていることが、最新の調査で明らかになった。
それによると、ハチやアリ、カブトムシなどは、ほ乳類や鳥類、は虫類と比べて8倍の速さで減少している。その一方で、イエバエやゴキブリといった一部の種は数を増やしているという。
昆虫の全般的な減少は、集中的な農業や殺虫剤、気候変動などが理由とされる。
昆虫は地球上に棲む生物の大半を占めており、人類を含む動植物に重要な恩恵をもたらしている。
鳥やコウモリ、小型哺乳類には食べ物を与え、世界の穀物の75%の受粉を助け、土を作り、害虫の数を抑制する。
近年の研究では、ハチなど特定の種が、特に先進国で大きく個体数を減らしていることが明らかになっていた。
しかし「バイオロジカル・コンサヴェーション」に掲載された新研究では、過去13年間に発表された73件の既存の調査結果を網羅し、そこから全般的な見解を導き出した。
それによると、昆虫の減少は世界中ほぼ全ての地域で起きており、向こう数十年で全体の40%が絶滅する恐れがある。現在、昆虫の3分の1が絶滅危惧種だという。
この研究を主導した豪シドニー大学のフランシスコ・サンチェス=バヨ博士はBBCの取材で、
①農業や都市化、森林伐採などで生息地を奪われたこと が、昆虫が減少している主な要因だ と説明した。
②その次に、世界中の農業で使われる肥料や殺虫剤の影響や化学物質による汚染 が挙げられる。
③3つ目は生物学的要因、つまり侵略種や病原菌によるもの。
④4つ目には、特に熱帯地域で大きな影響を与えている気候変動がある。
研究では、近年発表されたドイツで急激に減っている飛翔性昆虫の動向や、地球温暖化によってプエルトリコの熱帯雨林の昆虫が減っている事例なども取り上げられている。
他の専門家も、今回の研究結果は「非常に残念だ」と話している。
イギリスの昆虫愛護団体「バグライフ」のマット・シャードロウ氏は「これはハチだけの問題でも、あるいは受粉や我々の食糧だけの問題でもない。例えば糞を土に戻してくれるフンコロガシや、川や池で生まれるトンボといった昆虫も減少している」と指摘する。
「地球の生態系が崩壊していること、この悲惨な流れを食い止め逆転させるために世界規模で集中的な努力が必要になっていることが、ますます明らかになった。昆虫の緩慢な絶滅を引き続き座視するなど、合理的ではない」
◆害虫は増加傾向
研究では、昆虫の減少が食物連鎖の上流に与える影響についても懸念を示している。多くの鳥類やは虫類、魚類にとって昆虫は主な食料であり、昆虫の減少は結果的に、こうした生物の絶滅にもつながる可能性がある。
一方、人間にとって特に大事な昆虫が危険にさらされている中、一部の昆虫は環境の変化に適応し、数を増やすだろうとの指摘もある。
最新の豪研究には関わっていない英サセックス大学のデイヴ・グールソン教授は、「繁殖サイクルの速い害虫は、温暖化や、繁殖速度が遅い外敵の絶滅によって、数を増やすだろう」と話した。
「我々が将来、特定種類の害虫増大に悩まされる一方で、ハチやアブ、チョウといった人間にとって有用な素晴らしい昆虫、動物の糞を処理してくれるフンコロガシといった益虫を全て失ってしまう可能性は十分にある」
グールソン教授によると、強じんで適応力が高く雑食のイエバエやゴキブリといった昆虫が、人工の環境に馴染みやすく、殺虫剤への抵抗力を付けていると述べた。
その上で、今回の研究は危険信号を発しているものの、殺虫剤を使わないこと、有機的な食品を選ぶこと、昆虫にやさしい庭造りをするなど、我々にできる対処法はあるとしている。
また、昆虫の減少に関する研究の99%は欧州と北米のもので、アフリカや南米の資料はほとんどないことから、さらなる調査が必要だという。
究極的には大多数の昆虫が絶滅しても他の種に取って代わられるが、それには長い長い時間がかかるという。
「過去に起きた大絶滅を見てみると、その後には大規模な適応放散(一つの祖先からさまざまな種が生まれること)が発生する。少数の種が新たな環境に適応し、絶滅によって空いた席を埋め、新しい種に進化する」と、グールソン教授は説明する。【リンク】【リンク】
「つまり100万年たてば、20世紀と21世紀に絶滅した生物の代わりとなる多様な新生物が生まれていることは間違いない」
「我々の子供の世代には、何の慰めにもならないが」
以上転載終了
—————————————————————————————————–
◆まとめ
このように送粉者である昆虫は、植物が有性生殖する上で欠かせない存在である。現在、世界中の農業で使われる肥料や殺虫剤の影響や化学物質による汚染によって、その昆虫が減少していくことは、農作物の収獲が全く見込めなくなるだけではなく、現在の生態系をも破壊し、人類だけでなく全ての地球上の生物類を滅亡させていく危機を孕んでいます。
そもそも、農業は、人類が生存していくために開発された生産様式だったはず。ところが今や、反対に生存そのものを脅かす様式に変化している事実。
私達は、この農業に端を発した生態系の危機的状況に対峙し、正しい農業様式は何か?をしっかり追求し、将来に繋げていかなければならない。
それでは次回もお楽しみに!
投稿者 noublog : 2019年10月31日 Tweet
2019年10月31日
土の探求8~革命を阻む、根拠なき常識Ⅱ
農業を取り巻く”神話”の正体を知れば知るほど、
近代科学、市場主義、西洋思想、これらに毒され、
事実追求の道が阻まれてきたという歴史的事実が浮き彫りになる。
以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)
投稿者 noublog : 2019年10月31日 Tweet