2019年10月4日
2019年10月04日
土の探求4~超好熱細菌が起こす土の革命
今日も、植物が生きていく上で、非常に重要な土のお話です。土の状態が良ければ、作物は健全に育ちます。
「有機農業の推進に関する法律」(平成 18 年法律第 112 号)の第二条において、有機農業は
「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義されています。
では、本来 土は、どのような状態が自然なのか?また栄養を持続して蓄えることが可能なのか?
今日は、「超好熱細菌が起こす土の革命」について紹介します。
転載開始 【リンク】
こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。「野菜づくりを始めるときにオススメの培養土や肥料は何ですか?」とよく聞かれます。そのときに僕がオススメしているのが金澤バイオ研究所が作っている九州大学ブランドグッズ有機肥料「土の薬膳®」です。僕の畑でも利用していますが、ここの土だと、とても丈夫で健康的な野菜が育つのです。この土の秘密は何やら「超好熱細菌」という微生物にあるようです。今回はその超好熱細菌について、開発者の金澤晋二郎先生に詳しくお聞きしてきました。
金澤晋二郎:株式会社 金澤バイオ研究所 所長。元九州大学農学部教授。専門は土壌微生物、土壌生化学、環境微生物学、未利用有機物の資源化など。2001年の九州大学で行われた「学内ゼロエミッションプロジェクト」で提供した超好熱細菌をもちいた「超高温・好気発酵法」による有機質肥料「土の薬膳」が好評だったことをきっかけに、退官2年前に株式会社 金澤バイオ研究所を設立し、土づくりに取り組む。常時80度以上の高温で好気発酵を行う超好熱細菌を利用した「超好熱・好気発酵法」を開発し大腸菌、害虫病原菌、寄生虫、雑草種子などを死滅させたクリーンで高品質な肥料「土の薬膳®」を開発する。その他、様々な企業や機関との共同研究やプロジェクトも手がける。
◆超好熱細菌とは
――ここで作られている培養土の一番の特徴は、超好熱細菌による有機肥料「土の薬膳®」を肥料として製造されているところだと思います。この超好熱細菌の特徴について教えていただけますか。
微生物はね、種類によって増殖する最適な温度が違うんだよ。普通そこらへんにいる中温(常温)菌は20度〜40度くらいを好むんだけど、だいたい50度以上になると活動を休止してしまう。それ以上の温度を好んで生育する菌を好熱菌、さらにその中でも80度以上のかなり高い温度帯でよく生育する菌を超好熱菌と言うんだ。
――そんなに高い温度のところでも生育できる菌もいるんですね。それはどうやって発見したんでしょうか。
九州大学に転勤する前は鹿児島大学にいてね。鹿児島県は活火山地帯で、温泉もたくさんあるでしょ。そういう常に高温にさらされているところに超好熱菌はいるわけ。微生物学者は、狩人だからね、いろんなところの微生物を捕まえにいくわけよ。微生物は人間と違って単純な構造だから、どんな環境下でもすぐに対応できるように遺伝子を組み換えて適応していっちゃう。このような機能を有する微生物がいたらいいなとか、このような物質を分解できる微生物が欲しいなと思ったら、だいたい見つかるんだよね。それに加え、微生物が地球上に現れて40憶年を経過しているため、あらゆる環境に対応できる微生物種がすでに地球上に存在しているとも言える。例えば、放射能耐性、超低圧耐性(成層圏)、超高圧(地殻深層)耐性微生物も存在する。
◆超好熱細菌での堆肥づくりのメリット
――その超好熱細菌で堆肥をつくると何が起きるんですか?
普通、堆肥を作るときは発酵熱で65度くらいまで上がるんだけど、そこにこの超好熱細菌の培養液を水で薄めて散布すると、温度が80〜90度くらいまで上がるんだ。そうするとね、雑草の種とか病原菌とか寄生虫の卵とかも全部綺麗に死滅・分解されちゃうんだよ。
――病原菌とか寄生虫の卵が残っていると怖いですね。普通の堆肥ではそういうのも残っちゃうものなんでしょうか?
60度くらいでも、じっくり時間をかければちゃんとそういう菌や卵も死滅されるんだけどね。乾燥させて水分を30%以下にすれば、悪臭を発生する腐敗菌が活動しないから、堆肥として早く売ることはできる。しかし、この状態だとちゃんと未熟な有機物が発酵分解されているとは言えない。十分に大腸菌、病原菌、寄生虫の卵などが死滅していない堆肥を使うとどうなると思う? 今度は畑の中で害虫・病原菌か増えて農作物などが病虫害に侵されることになるんだよ。そうすると農薬が必要になってくるんだよね。
――なるほど、堆肥が原因で病気になってしまうこともあるんですね。超好熱細菌ではなくとも時間をかけて堆肥化すれば、病原菌や寄生虫の卵は少なくなるんでしょうか。
うん、特に病原菌なんかは栄養豊富で未熟な有機物があるところじゃないと生きられないから。ちゃんと分解された堆肥だったら、これらの病原菌の増殖はなく、生残していて機能性の高い貧栄養細菌である土壌生息微生物に食べられちゃうんだ。ただし超好熱細菌じゃないと分解しきれないものもある。それが農薬とか家畜糞尿に含まれている化学物質。それも超好熱細菌だと分解しちゃうんだよ。すごいだろ?
――え〜! それはすごいですね。化学物質まで分解しちゃうんですか。
そう。爆発的に微生物が増殖して高温状態となると、通常分解できないものも分解しちゃうんだよ。例えば、ダイオキシンなんかも分解しちゃう。普通、分解酵素というのはタンパク質だから高温だと変性し失活してしまうんだけどね、超好熱細菌の酵素は高熱耐性酵素(100℃以上でも高活性を維持)なのでそれに耐えるんだよね。
◆超好熱細菌を使うと堆肥化のスピードが早くなる
――普通は堆肥ができるまで半年はかかりますが、堆肥化されるスピードも普通の堆肥より早いんでしょうか?
高温だから分解スピードも早いんだよ。温度が10度上がるとね、1.7倍〜1.9倍くらいは分解スピードが上がるんだよ。ここでは常時80度以上をキープしてるから25日もあれば堆肥ができちゃう。でも念のため1カ月半はかけてから出荷するけどね。だから品質のことで一回もクレームが出たことはないよ。
――それは革命的な早さですね。
◆さまざまな原料を堆肥化できる超好熱細菌
――ちなみにここではどんなものを原料に堆肥化してるんですか?
米ぬか・大豆おから・アガリスク菌床・竹パウダー・ビール麦芽かす・かき殻とか、食品産業がら出される良質の有機資源を再利用してるんだ。特に米ぬかとかおから・ビールかすは、ものすごく栄養豊富なんだよ。竹もね、処分に困ってるところが多いけど、良質の炭水化物や必須多量元素のケイ素が豊富なため、ケイ素が作物を頑強にしてくれるんだ。
――確かに! うちでも金澤バイオさんの土で野菜を作っているんですが、ものすごく茎が丈夫で葉も肉厚なものができました。竹の中のケイ素がポイントだったんですね。逆に超好熱細菌での堆肥化に向いてない原料とかってありますか?
いやぁ、あんまりないよ。ほとんどの有機性廃棄物ですでに研究し尽くしたんだけどね、例えば、下水・食品汚泥、家畜糞尿、生ゴミ、剪定枝、魚カス等々の原料で発酵実験は終了しているんだ。
――それはすごい。超好熱菌はいろんな可能性を秘めていそうですね。
超好熱細菌の特徴まとめ
① 常時80度以上の高温で発酵する
②雑草の種・病原菌・化学物質・寄生虫などを全て死滅・分解できる
③堆肥化のスピードが格段に早い
④さまざまな原料を堆肥化できる
⑤機能性の高い有機肥料となる
以上転載終了
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では、微生物は土に対して何をしているのか?続けて調査してみますと
「安全性と生産性を高める有機農業を実現する。」から【リンク】
日本の化学肥料や化学農薬の使用量は世界で1、2位を争うという衝撃的なデータがある。規制の厳しい欧州諸国などと比べるとその量は数倍から10倍にもなるともいわれている。「問題は化学肥料や農薬の使用量だけではありません。それらが長く使われた農地で育つ野菜は栄養素も著しく低いことです」と久保幹は語る。化学肥料と化学農薬を使った農業が慣行化したこの50年の間にニンジンのビタミンA含有量はおよそ3分の1、ホウレンソウのビタミンC含有量は4分の1以下に減っているという。
化学肥料の使用が慢性化した土壌と自然の土壌との大きな違いは「微生物」だ。かつての農地では落ち葉や動物の糞尿なとの有機物を土中の微生物が無機物に分解し、それを肥料に作物が育った。しかし化学肥料は分解されることなく植物に吸収されるため、エサとなる有機物を失った微生物は死滅してしまう。久保の調査によると、日本には微生物が計測できないほど「ゼロ」に近い農地が少なくないという。微生物のいない土壌では植物病原菌や病害虫が繁殖しやすくなり、それがまた農薬の使用を招くという悪循環に陥っている。
食の安全のためにも化学肥料や農薬を含まない「健康な野菜」を作ることが望まれるが、長年化学肥料や農薬が使われた農地でやみくもに有機農業を実践しても急に作物は育たない。
「まずは土中の物質循環を取り戻すため、そのエンジンとなる微生物を増やす必要がある」
~後略~
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◆まとめ
野菜や植物を健康に育てるためには、微生物の力が欠かせないということが分かりましたが、それ以上に日本の農耕地が今や危機的な状況にあることは衝撃的でした。
このような状況下にあって、超高熱細菌の適応力が、土の潜在的な力を引き出し、更に土中の物質循環を取り戻して、自然本来の姿に戻す核となるのです。小さな存在ですが、生きていく上で欠かせない微生物。彼らを存続させていくことが、人類も含めた地球上のすべての動植物が元気に生きていられること。に繋がっていくのです。では、次回もお楽しみに!
投稿者 noublog : 2019年10月04日 Tweet