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2022年09月23日

「腸が作る健康の秘訣」第3回 腸内細菌の中で最も重要な菌って何?

シリーズ3回目はいよいよ腸内細菌そのものについて扱っていきます。

腸内細菌って何?有名なのはビフィズス菌や乳酸菌のような善玉菌、またブドウ球菌や大腸菌などの悪玉菌。しかし名前も覚えられないような数の筋が私たちの腸内にはたくさん住み着いています。その数はなんと100兆個、重量にして1.5㎏、すべてを広げるとテニスコート1面分の広さに相当します。その表面上に1000種類以上の細菌が群れをなして生息しており、その状態をお花畑に例えて「腸内フローラ」や「腸内細菌業」と呼んでいます。

まさに土の中に生息する無数の微生物と同様に腸という土壌の中に無数の細菌が共存しているのです。善玉菌、悪玉菌と便宜的に分けられていますがどの菌も互いに何らかの役割を果たしており、そのバランスをもって腸内環境は維持されているのです。善悪の件はまた別の記事で扱わせていただきますが、決して善悪で切れるようなものではないという事だけ覚えておいてください。

腸内細菌の中でも最も最近注目されているのが酪酸菌です。この菌は乳酸菌やビフィズス菌のように食べ物からはとることが殆どできず、体内で生み出されていく菌です。1)腸内を弱酸性に保つ環境を整える、2)便秘の改善、3)アレルギーからの防御、4)免疫機能のバランスを整える、5)肥満にならない、6)脳機能の向上、7)発がん性物質の抑制など多くの役割を果たしています。この酪酸菌や短鎖脂肪酸などの有用菌は、いわゆる健康に関わる全ての機能を担っているのです。酪酸菌とは様々な腸内細菌が役割を果たす上でのベースとなる環境を整えているのです。逆にこの菌が少なければテニスコート1面分の腸内細菌も十分に役割を果たせずバラバラな動きをしてしまうことで超重要な菌とも言えるでしょう。

桐村里沙氏の著書では、まずこれら有用菌について以下のように整理されています。

>腸内細菌に主に任せたいのは、人に分解できない植物の中の多糖類(食物繊維など)の分解です。ですから食物繊維を含む食品をせっせと食べることが土壌改良の基本になります。多糖類をエサにする腸内細菌は、ビフィドバクテリアや酪農菌など、人に有用な短鎖脂肪酸などの有機酸を分泌する発酵菌です。これらの有機酸が、成熟した土と同じように腸を弱酸性に保ち、有用菌が暮らしやすく、腐敗菌が暮らしにくい環境を作ります。
腸内細菌が生み出す有機酸の働きを整理してみます。

1) 腸内環境を整える
有用菌が乳酸や短鎖脂肪酸などの有機酸をしっかり分泌して、腸内と弱酸性に維持できれば、有用菌が暮らしやすく、病原菌、腐敗菌が増えにくい腸内環境に整えることができます。日和見菌が優勢な方の味方につくため、全体が良い環境になります。

2) 便秘の改善
ビフィズス菌や酪酸菌が短鎖脂肪酸をつくると、大腸の粘膜が刺激されて蠕動運動が活溌になり、スムーズな排便が可能になります。また、短鎖脂肪酸によって、腸管の中に水分が放出され、便の水分量がアップします。便の水分量が増えると、腸の中を移動しやすくなるので、便通の改善につながります。

3) 腸のバリア機能を改善する。
短鎖脂肪酸は、腸の上皮細胞のエネルギー源になり、成長を促します。腸の上皮細胞は身体を外敵やアレルゲンから守るために重要なバリアの役割を果たします。

4) 免疫機能のバランスを整える
免疫細胞の約7割は、腸管の周りに集まっています。酪酸菌が分泌する酪酸には、免疫細胞の一種である制御性T細胞(Tレグ)の成長を促す働きがあります。
免疫にとって、ウィルスなどの外敵の攻撃だけが重要なのではありません。免疫反応とは体内の暴走をなだめるのが、Tレグの役割。アレルギーや自己免疫疾患、また新型コロナウィルス感染症の重症化の抑制に、Tレグは不可欠です。腸内細菌によって酪酸が分泌されることで、正常な免疫機能を保つことができるのです。

5) 肥満や糖代謝の改善
短鎖脂肪酸は、腸管で吸収された後に全身で利用されます。エネルギー代謝を高めるだけではなく、脂肪細胞の肥大化を防いで、脂肪の蓄積を抑えて、痩せやすい体質に近づけてくれます。短鎖脂肪酸は、脳にも作用して満腹感をもたらし、食べすぎを抑えるのでダイエットにも役立ちます。他にも糖の代謝に関わるインスリンと消化管ホルモンに関与することで、糖尿病の予防をサポートします。

6) 脳機能の維持
短鎖脂肪酸のうち、酪酸には脳の炎症を抑えたり、脳の成長や機能の維持に不可欠な脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やす働きがあります。これにより抗うつ効果や脳機能の改善につながっていると考えられています。

7) 発がん物質の抑制
短鎖脂肪酸には発がん性の原因物質といわれる、二次胆汁酸の産出を抑制する働きもあります。

 

酪酸菌を増やすには・・・という事でリンクでは食物繊維をしっかりとる事とアドバイスされています。海藻、果物、穀物、豆類がよいようです。

>直接、酪酸菌を食事から摂取するとなると難しいですが、酪酸菌を腸内で育てることは食事内容を工夫することで充分可能です。酪酸菌のエサとなる食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することで酪酸菌の働きを活発にし、酪酸を増やすことが出来ます。食物繊維には水溶性と不溶性があります。水溶性は海藻類、果物類に多く、また不溶性は穀類や豆類に多く、腸内細菌のエサになりやすいのは水溶性の食物繊維です。腸活を意識するなら水溶性の食物繊維を意識して摂取しましょう。食物繊維は成人男性で1日あたりおよそ20g以上、成人女性で1日あたり18g以上摂取することが目安とされています。

さて、今回はここまでにしますが、次回はいよいよ腸内細菌全体のバランスや動き=腸内フローラーに焦点を当たていきたいと思います。

参考)

腸活の新常識!?話題の「酪酸菌」で、あなたの腸を育てよう!|新陳代謝にこだわりを-株式会社メタボリック (mdc.co.jp)

著書:桐村里沙「腸と森の「土」を育てる」

投稿者 tano : 2022年09月23日 List   

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