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2021年01月14日

「農」が持つ懐の深さ~半農半X、ひとつの事例から

「農」に興味関心をもち、営みに携わっていく。
そのきっかけは、実に様々だ。

それぐらい「農」は懐が深い、ということだろうか。

以下、転載(“サッカー”と“農業”で、なでしこリーグをめざす!〈FC越後妻有〉の女子選手たち

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女子サッカーチーム〈FC越後妻有〉。新潟へ移住してきたIターン者によって、2016年に結成されたばかりの新チームですが、彼女たちの暮らし方がとてもユニーク! と、じわじわ注目を集めています。

どんな暮らしかというと、“サッカー”と“農業”の両立。

彼女たちが暮らす越後妻有――「えちごつまり」とよばれるこのエリアは、いまではよく知られる世界最大級の国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉の舞台。3年に1度の国際芸術祭が今年開催されますが、実は本プロジェクトも、芸術祭の一環としてスタートしたものなんです。

■〈FC越後妻有〉とは?
サッカーと農業という、二軸の暮らしを営む彼女たちは、大地の芸術祭を運営するNPO法人〈越後妻有里山協働機構〉の職員として、新潟県十日町市・津南町に移住してきました。

小学校の廃校を再生活用した〈奴奈川(ぬながわ)キャンパス〉を拠点に、高齢化や過疎化で担い手のいなくなった400~500年もの歴史のある棚田を借り受け、米づくり、伝統・文化・景観の継承というミッションをこなしながら、なでしこリーグへの参戦を目標に、プロと同じサッカーメニューを日々積み重ねています。

■どんな毎日を送っているの?
奴奈川キャンパス横のグラウンドは、天然芝のサッカー場。このグラウンドで、火・木曜の日中はトレーニングを行い、午後は農作業へ。別日には、夕方から十日町のサッカーチームに合流して室内練習をこなします。土・日曜は、公式戦やトレーニングマッチなども。

聞けば、なかなかハードな毎日。でも、彼女たちは笑顔ながらも真剣な眼差しでサッカーのトレーニングに励み、美しい里山の風景の中で、生き生きと農作業にいそしみます。その姿は、なんとも頼もしい!

彼女たちを指導するのは、全国レベルの高校生プレーヤーや、幼稚園児~小・中学生まで幅広い年代のコーチを務めてきた、サッカー指導一筋の江副良治監督。また十日町市には、トッププロや代表チームなどにも対応できるレベルのグラウンドもあり、サッカーをするには不自由のない抜群の環境。

でも、なぜこの場所で、サッカーチームを?

発起人は、奴奈川キャンパスの体育学科チューターであり、JFA(公益財団法人日本サッカー協会)のスポーツマネジャーズカレッジダイレクターである坂口淳さん。これまで、日本各地の生産者や匠を訪ねる機会があり、そのなかで、食・農・文化・伝統など、地方にまつわる問題に直面したことをきっかけに、スポーツをフックに、廃れそうな一次産業を守る活動ができないか、と考えたそう。

〈大地の芸術祭〉の総合ディレクター・北川フラム氏に話をもちかけ、「よし、やろう!」とゴーサインをもらってからは、各地の大学をまわり、サッカーと農業の両立を「おもしろい!」と受けとめてくれる選手を探しまわりました。2016年には、大平選手と西川選手をスカウトし、〈FC越後妻有〉がスタートすることになったのです。

■今年で3年目!FC越後妻有の基盤をつくった初代メンバー、大平選手と西川選手
「生まれてから大学まで、ずっと神戸で育ってきて、そのまま関西圏に残って就職しようと思っていたんです。でもやっぱり長年続けてきたサッカーをやりたいなって思っていたときにここの話をいただいて。ワクワクする気持ちと、慣れない土地や農業という仕事に不安もあったんですけど、夏に一度見学に訪れて、この地の人のよさとか、地元の方との関わりが『ああ、いいなあ』って思って」

そう語るのは、今年で入団3年目を迎える西川選手。生粋の都会っ子である彼女は、もちろん農業未経験者。大学の講師と坂口さんがつながっていたのがキッカケでFC越後妻有のプロジェクトを知り、初代メンバーとしての参加を決意したそう。

また、同期メンバーである大平選手は青森県出身。中学まで青森で過ごし、高校はサッカーの名門・仙台の聖和学園へ。大学進学は、農家である祖父母の影響もあり、信州大学で農学部を専攻。卒業が迫った折、坂口さんとご縁があり、FC越後妻有の立ち上げを知ったのだとか。

「海外へのサッカー留学や、別チームへの入団、実家に帰る……。いろいろな選択肢を含め悩みました。でも、動けるうちはサッカーをやっていたいっていう思いがあって、じゃあサッカーをやりながら仕事は何をする? って考えたとき、この場所なら、これまで勉強してきた農業も生かせる、と思ったんです」(大平選手)

メンバーが誰ひとりいない、まったくの新規チームに入団するということ。その決断には、私たちの想像を超える、並々ならぬ勇気がいったであろうし、どちらも体力勝負であるサッカーと農業の掛け持ちが、この上なくハードであることは、容易に想像できます。

それでも「サッカーがやりたい」というブレない覚悟が人一倍強かった彼女たちは、この地にきて早3年目。農作業にも少しずつ慣れ、トラクターや田植え機もひとりで扱えるように。新潟での暮らしにも自信がついてきたといいます。

「地元の方々が本当にあたたかくて。何もわからない私たちのことをいつも気にかけてくださって、“生きる知恵”というか、本当にいろいろなことを教えてもらっています」(西川選手)

「それに、なんといってもここはお米が本当においしい! しかも自分たちがつくったお米が食べられるっていう。ほかのチームに入団していたら、この感動はなかったですね。

外から見れば、山の中で効率悪い暮らしをしているように見えるかもしれないけれど、この地域の方々は、古くから守ってきた棚田で『俺んちの米が一番うまい!』ってプライドを持ってお米をつくっていて。すごい人たちばかり。でも、自分はさらに上をいく“かっこいいおばあちゃん”になりたいです(笑)」(大平選手)

移住当時、道を歩けばいろんなおじいちゃん、おばあちゃんがニコニコしながら彼女たちを2度見、3度見することもあった、というエピソードも。過疎地域となってしまった里山に若者が移住してくることは、地元の方にとっては手放しでうれしいようす。「知り合いがすごく増えた!」と、ふたりもこの地にすっかり溶け込んでいるようです。

そしてこの春から、チームにふたりの新メンバーが加入。先輩として、同じ目標を掲げる仲間として、新メンバーをあたたかい目で見つめる彼女たち。

「まだ11人のチームになっていないところに飛び込んでくるのはすごく勇気がいることだし、ふたりともそれぞれに夢と希望を持っていて。頼りがいのある後輩です」(大平選手)

これまで暮らしてきた環境とは大きく異なる新潟で、時には不便を感じつつも、発見と驚きの毎日に楽しさを見出しながら暮らす彼女たち。
一刻も早く11名の選手が揃い、なでしこリーグにFC越後妻有の名を刻みたい――そう願うのは選手や関係者だけでなく、地元の人たちも同じ。
そしてこの地を訪れた人も、彼女たちの情熱にひとたび触れたなら、きっと、心の底から応援せずにはいられなくなるはずです。

投稿者 noublog : 2021年01月14日 List   

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