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2019年12月05日

土の探求13~土壌生物の生業Ⅱ.”地下経済”のメカニズム

私たちの足下=土の中、で繰り広げられる、土壌生物たちの壮大な取引。

その中心にいるのが、微生物だ。

いまだ未知の領域が大きいとされる微生物の世界を解明していくことが、

やはり農の再生においても不可欠の追求テーマになるだろう。

 

以下、転載(土・牛・微生物 著:デイビット・モントゴメリー)

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■土の中の生命~根の回りで起きていること
陸上生物の歴史は、太陽エネルギーを取り入れる植物と、栄養を取り出しリサイクルする微生物との協力の物語だ。最初の陸上植物は4億5000万年ほど前に進化した。それには初めから相棒がいた。根につながった菌根菌だ。
現代の植物のように、最初期のものも死んだ根と葉を落とし、やがて枯れる。こうした有機物はすべて土壌生物の餌となった。土壌生物はさらに鉱物土壌から栄養を取り出し、死んだものをリサイクルして植物が消費する栄養に戻した。植物が増えれば有機物も増え、土壌は豊かに、肥沃になった。すぐに、そして以来長きにわたり、極度に岩がちな土地、乾燥した土地、氷に覆われた土地を除いて植物覆いつくした。

なぜこの協力関係が重要だったのだろう?植物がどこから基本的な構成要素を得ているかを考えてみよう。植物は太陽エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と水に由来する水素を合成し、炭水化物(糖)を作る。また窒素を、特殊な根粒に棲む窒素固定細菌の力を借りて間接的に空気から得るか、根から吸収する硝酸塩から得る。植物が体を作るために必要とするその他の要素は、岩と腐敗した有機物からもたらされる。菌根菌と土壌微生物は、土粒子や岩の破片から無機栄養素を抽出し、植物が根から吸い上げられるように有機物を分解して水溶性の養分にまで戻すのを助ける。

だが根はただのストローではない。それは双方向の道路であり、慎重に処理され、調整されたやり取りが行われている。植物は土壌中に、みずから作った炭素を豊富に含むさまざまな分子を放出する。それは光合成による生産物の1/3以上を占めることもある。こうした滲出液は主に、土壌微生物には魅力的な餌となるタンパク質と炭水化物(糖)でできている。このようにして植物の根は、土壌から(つまり岩の破片の結晶構造や有機物から)栄養を引き出す菌類や細菌に餌を与えているのだ。

十分な数の微生物が存在するとき、根滲出液は長くは出ない。微生物はその大半を数時間以内に食べ、吸収して、別の形に作り替えて再び放出する。さらに、土壌に棲む細菌の助けを借りて、ある種の菌根菌は根のような細い菌糸で、生物にとって価値のある特定の成分、例えば岩や腐敗した有機物に含まれるリンのようなものを探し出して取り込む。次に菌根菌は、取り込んだ成分(植物が利用できる状態になっている)を根滲出液と交換する。こうして文字通りの地下経済のやり取りから双方が利益を得るような取引が成立する。

同じように、根からはがれ落ちた死んだ細胞は、ほんの数日で微生物が食べつくし、再処理する。その結果できた微生物の代謝物には、植物生育促進ホルモンと、植物の健康を増進したり防御を助けたりする物質が含まれている。また、一部は炭素が豊富な安定した沈殿物を形成し、根圏(植物の根の周囲にある生物が豊かな範囲)に有益な細菌の群集が形成されるのを助ける。

面白いことに、根圏に棲む細菌は、微生物密度が一定数に達すると、【クオラムセンシング】として知られる情報伝達プロセスを誘発し、植物の成長促進によりいっそう効果を発揮する。適切な種類の細菌が十分にいれば、それが植物生育の促進を助ける化合物の放出を調整するのだ。しかし、土壌生物の個体数が少なくなりすぎると、その栓を閉めてしまう。言い換えれば、微生物は十分な数がいるときだけ、植物に影響を及ぼすように働き、植物は微生物への見返りとして健康な滲出液を作り出す。だから植物は十分な量の滲出液を土壌中に放出することで、有用な化合物を作り出す微生物群を培養できるわけだ。地価の複雑さと適応は、地上のものとそっくりだ。植物は特殊化した細菌や菌類の群集を誘い、餌を与える。その関係は花と花粉媒介者との関係が特殊化されているのと全く同じだ。

では、土の中でもっとも多くの細菌が見られるのはどこだろう?もちろん餌があるところ~植物の根の周りだ。それでは細菌を食べる原生動物や線虫がもっとも多いのは?やはり細菌が多い根の周りだ。これが土壌植物連鎖のもう一つの環だ。腐食者である細菌や菌類は有機物を食べ、栄養をつける。捕食性の節足動物、線虫、原生動物はそれを食べ、そうして栄養を植物が利用できる形で土壌に戻す。こうした微小な捕食動物の排泄物は、窒素、リン、微量栄養素を豊富に含むので、優れたミクロの堆肥となる。

このようにして土壌生物は土を肥沃にする。植物が、そしてわれわれが自分の体を作るのに必要なカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、硫黄のような主要元素は、突き詰めると土壌を経由して岩から来る。銅、ヨウ素、マンガン、モリブデン、亜鉛など必須微量元素も同様だ。ほとんどの鉱物由来元素が、植物が利用できるようになる過程の各段階で、微生物は密接にかかわっている。そしてこのような働きをする微生物が増えるほど、植物が利用できる栄養素も増える。

ほとんどの(すべてではないが)土壌には、健康な植物が育つために必要なだいたいの元素が含まれている。ただしそうした元素が鉱物粒子や有機物から離れて、植物が吸収できる形であることが必要だ。その形に変換するのが微生物の仕事だ。微生物は必須微量栄養素~銅や亜鉛のような、私たちは栄養ではないと考えがちだが、健康な植物も人間も少量必要とするもの~を植物が取り込むのを助ける。土壌微生物は小さな化学者のように栄養を植物が利用できる形に変える働きをする。しかし生物の密度が低い土壌では、重要な栄養素が、港から遠く離れた海で座礁した船の積み荷のように、植物の根圏の外にとどまっている。

投稿者 noublog : 2019年12月05日 List   

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