■ 薬とは何か? Vol.1 生命の原基構造を物質と機能から探る |
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2014年06月16日
■ 薬とは何か? Vol.2 植物と毒・薬
私達は病気になった時、けがをした時、薬の力をかります。
この薬の原料は90%以上が植物をルーツとしているのは御存じでしょうか?
現在、漢方や生薬は医療用に用いられているものだけで148種類、それ以外を含めると、何万種類という組み合わせがあります。これだけ多くの種類の薬効を作り出せる植物は、まさしく「あらゆる物質を自由自在に組み立てられる工場」のようなものです!
ただ、その薬効成分は動物のために作り出されているのではなく、植物が生き延びるために獲得した機能です。
そこで今回は、「植物」がどうして私達人間にとって薬として作用する成分を生成しているのか?動けないからこそ進化した、植物の力の秘密に迫りたいと思います!
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【1.植物の外圧適応能力が動物にとっての毒であり薬である】
植物の薬の成分は、いったい植物にどんなメリットがあり、生成しているのでしょうか?
まずは、植物と動物の決定的な違いを押さえます。
それは「動けない」ということです。
植物はじっとして動きません。敵に襲われても動物のように逃げることができません。動物から踏まれたり、折られたり、食べられたりと受け身な生き方とも表現できます。しかし、食べられるだけでも、踏まれるだけでもないのです!植物も闘っています。
植物は植食者(=植物を餌とする生物を指します)に対して様々な防御をしています。植物の防御の多様性は実に多岐であります。今回は、薬の成分にもつながる、化学的な防御(=適に対する毒)について詳しくみていきます。
その前に、あとで重要なポイントにもつながるので「植物の進化と生き方」について勉強します。
1-1 進化の過程:植物は、生物にとって一番有効な毒を無効化できる!
生命の誕生は水の中。水は比較的無害な環境です。そんな中、太陽光からエネルギーをうみだす生物が現れました。これが植物の先祖であり、この機能を持つのが葉緑素です。
植物は、光合成をします。光合成とは、太陽の光エネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と根から吸収した水を使って、栄養素(デンプンなどの糖)の出発物質を自ら作り出し、酸素を放出することです。また、この時に生物にとっての毒である活性酸素の消去もします。さもないと、活性酸素で自身の細胞も破壊されてしまうのです。
植物が持つ葉緑素はこの二つの仕事を行います。
1-2 動けないがゆえの動物にはない高い適応力
このように植物は、自分で栄養素を作り出すことができることから、独立栄養体と呼ばれています。この植物自ら作り出したエネルギーを動物は植物を食べることによってその栄養源をいただいています。
【2.外的から守るため、物質を自由自在に操る植物の仕組み】
冒頭でも述べたように、植物はただ食べられるだけではありません。食べられているだけでは、絶滅の危機に瀕してしまいます!!そのため、植物が考えた技は化学的防御です。
つまり毒の生成です。
先程の植物が生成した物質の中でエネルギーとしてつかうものを第一次代謝物質といい、これから扱う、防御のために生成する毒の物質を第二次代謝物質といいます。
第二次代謝物質は本当に様々な種類があります。
身近な例をあげてみましょう。例えば、ジャガイモ。ジャガイモの芽にはソラニンという毒が含まれています。ソラニンを大量に食すと、人間でも死にいたることがあります。
毒は、もともと第一次代謝物質から加工されて生成されるわけです。
この生成技術が素晴らしく、これに一役買っているのが「修飾酵素」であります。
光合成で生成された物質はそのままでは化学的に不安定であったり、葉っぱから実に運ぶにも水に溶けにくかったり…と少々不便な格好であります。それらをうまく活用するために修飾酵素はブロックを組み立てるように物質をつなぎ合わせ、様々な役割を持たすことができるのです。
植物の修飾酵素は数十~数百種存在していることがわかっていて、この数は哺乳類や酵母などの真核生物とも比較しても圧倒的に多く、植物のもつ多様な第二次代謝物質の生産を支えていると言えます!
【3.毒と薬自在に作り分ける生産工場の役割を果たす配糖体】
第二次代謝物質の中で、糖と結合しているものを配糖体といいます。
この配糖体、薬の成分にもなったり、毒にもなったりするとっても不思議な力を持っているのです。それは、植物は様々な種類の配糖体を作り出すことによって、つまり様々な種類の毒を作ることで、動物から身を守ってきました。
主な生薬の成分の多くも配糖体です。配糖体は、その名のとおり、糖が付くことによって安定し、輸送しやすく、水にとけやすいのですが、構造が大きいため細胞膜を通ることができず、吸収されにくいそうです。ところが、腸内の活発なエネルギー代謝と増殖を営んでいる菌の中に(腸内には100兆もの菌が棲んでいる!)、配糖体を水解できるものがおれば、糖を切り、エネルギー源として利用することができるんです。
漢方薬の効き方のひとつに、今のような効き方があるように、腸内環境によって作用が異なってきます!
ジキタリスは強心配糖体を持っていて、猛毒です。誤って口にしてしまうと、胃腸障害、おう吐、下痢、不整脈、頭痛、めまい、重症になると心臓機能が停止して死亡することがあります。そんな猛毒のジキタリスも古代では切り傷や打ち身に対して薬として使われていた歴史を持っています。
ジキタリスも毒でありながらも、薬としても利用されていました。
つまり、薬と毒は紙一重。もともとの始まりは同じだけれど、修飾酵素で組み立てられ、くっついたその組み合わせによって毒になったり薬になったりするのです!
【3.動物にとっての薬効とは?】
植物は食べられないように毒(中には人間にとっては薬)を作っていることをご紹介しました。つまり、生存するのにより厳しい環境にある植物が巧みにエネルギーを調整し、自身で加工・生産しています。
動物は、これらの毒を逆手にとって薬として利用しています。適量であれば薬として効果があるが、その量が少しでも多いと毒として作用します。本当にさじ加減の世界です。
これも、動物が自らでは作り出すことができないからこそ、植物を食べることによって、その力を享受していると言えます。
次回は、具体的に植物の薬効がどのように現れているのかを見ていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます♪次回もお楽しみに^^
投稿者 noublog : 2014年06月16日 TweetList
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