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2014年01月01日
2014年の農業を考える~アベノミクス農政
あけましておめでとうございます。
2014年を迎えるにあたり、今年の農業界で考えていかなければならないテーマについて少し触れていきたいと思います。
今年、何といっても注目されるのはTPP交渉と安倍政権がアベノミクスの柱として掲げている「攻めの農業」の行方です。
2013年3月、安倍政権はTPP参加を正式表明し、年内交渉妥結に向けて動いてきましたが、12月、日米、カナダ、オーストラリアなど12カ国の閣僚級が参加した会合で、日本はコメなど農産品の重要5項目の関税維持について米国と主張が折り合わず持越しとなりました。これらの交渉内容やアベノミクス農政について、以下の記事でも紹介されています。
TPP、アメリカ議会での批准は不可能に!151名の民主党議員がTPP反対書簡を提出!共和党も反対多数!賛成派は大統領達だけ!
TPP農業重要5品目の完全自由化が事実上確定
知らないうちに次々に可決される重要法案!国家戦略特区法案、がん登録法、農地バンク法が可決
さて、これらの問題は今後どうなっていくのでしょうか?
以下、2014年の農業を考えるために「アベノミクス農政についての著、田沢洋一「TPP=アベノミクス農政 批判と対抗」より一部引用させてもらいながら、論点を整理しました。
●TPPは農林水産業に何をもたらすか
過去、政府は日米合意に際しての政府統一見解で、農林水産業の減少額は3兆円としています。さらに、関税撤廃した場合の農業の多面的機能の喪失を4兆円弱としていました(2007年2月)。また、「TPP交渉参加からの即時脱退を求める大学教員の会」は、減少額3.5兆円、関連産業のも含めた減少額11.7兆円、その結果GDP全体も▲4.8兆円(1.0%)に及ぶと試算しています。関税撤廃となれば、元から関税が低く関税撤廃の影響の少ない野菜・園芸作等への生産シフトが起り、そこでの過剰や過当競争という「将棋倒し効果」も引き起こされるとも予測されています。
●TPPで食品の安全性はどうなる?
現状、米国からは遺伝子組み換え食品等の表示制度の廃止といった極端な要求は出ていませんが、アメリカ業界は次のような要求をしています。
遺伝子組み換え食品表示の厳格化に反対。牛肉の輸月齢は既に20ヵ月齢以下から20ヵ月齢以下に緩和されましたが、月齢そのものの撤廃。乳製品等の食品添加物の認証手続の迅速化・簡素化(要するに拡大)。ジャガイモ等の残留農薬基準の認証手続きの迅速化(最大残留許容値の拡大)。ゼラチン、コラーゲンの食用への解禁。防カビ剤(発がん性の懸念)の認可手続簡素化など、安倍政権は既に食の安全で譲歩を約束したと言われています。
●アベノミクスと「攻めの農業」
TPPで関税撤廃となれば日本農業は持たない。そこで自民党としても何らかの対策を打ち出さないと農村票が危ない。これが安倍政権が「攻めの農業」に異常なほど力を入れた理由です。それは農業の「産業としての復興」ではなく、日本の農業・農村を徹底した規制緩和により「世界で企業が一番活動しやすい」「グローバル市場」にしていく、要するに「外資を農村に呼び込め」というものです。以下がその代表的な政策です。
①1人当たり国民総所得(GNI)を10年後には150万円以上増加させる
自民党は2013年4月に「農業・農村所得倍増目標10ヶ年戦略」を発表。「経営規模の大小や修行と兼業の別、年齢による区分なく地域総参加」と「自給率・自給力の向上」がうたわれていました。しかし今回の「攻めの農業」には「地域総参加」も「自給率・自給率の向上」も出てきていません。たった2か月の間にTPPを押し立てて競争力強化、企業参入と輸出に邁進しようとするものです。GNIとは〈勤労所得+企業利潤〉であり、決して国民1人当たりの所得ではない。農業所得倍増のためには企業参入の加速化による企業経営ノウハウの徹底した活用、6時産業化、輸出等を掲げている。
②企業の農地取得の促進
「農地中間管理機構」を整備して、農地集約の加速化、「企業を含めた多様な担い手の農業参入」を促進しようとするものです。耕作放棄地が急激に広がる現状では、企業参入による農地の集約化を進めるのは当然としても、誰が借り手を決めるのかが問題です。農水省の検討状況によれば「中立の学識経験者等」とされていますが、この「等」が問題です。昨今の規制改革会議の議論からすれば、アメリカ人まで参加させろということになるかも知れません。また、規制緩和の突破口として「戦略特区」を国家の「トップダウン」で設定し、農業委員会の農地取引への関与を廃止しようとしています。
③FTA(自由貿易協定)比率を70%に高める
これは「攻めの農業」が「TPP農政」に他ならないことを如実に物語っています。要するに、輸入を増やし、国内の農業へは「新たな直接支払制度の創設」を柱にしようとするものです。既に6次産業化による各種補助政策が打ち出されていますが、多くの資金はこれまで地銀や都市銀、県等が設立した地域ファンドに対する出資です。事業規模は億単位以上とみられており、大型の農業法人等又は大手の企業ぐらいしかその恩恵を受けることはできないのではないかとも言われています。
●まとめ
民主党政権時代に離れた農民層の票を獲得するために、TPP反対と「攻めの農業」を打ち出し、参院選では見事圧勝しました。しかし、TPP交渉を進める中で、アメリカはTPPの成否に覇権国家の将来をかけており、多国籍企業利益=国益=世界の利益という建前で個別企業の利益を主張してきます。それに対してアベノミクスは「世界で企業が一番活動しやすい国」などと建前論に終始し、国民を守ろうとする意志などさらさらありません。
朝日の世論調査では、2012年8月時点では賛成44%、反対38%でしたが、その後賛成が53~60%まで増えましたが、参院選前の6月の調査では、賛成46%、反対38%でした。したがって、この問題に関する世論は自民党支持とは異なり、膠着状態であると言えます。しかも、甘利TPP担当が交渉経緯について「内容は一切、公表してはダメ」「日本から情報流出したことが分れば「即退場もあり得る」」「どこの国がどう言ったか、それにどう答えたかは話をしないことになっている」と言っているように、国民に公開すると交渉が進まなくなることを前提に、両者の協定がなされているのです。もし交渉経過が国民に明らかになれば、反対が広まっていくことは明らかです。
したがって、「攻めの農業」もTPP交渉過程での敗北を覆い隠すようにでっちあげたものであることを我々国民は見抜き、今後のTPP交渉経過と政策を見ていく必要があります。今後は、交渉妥結が進むにつれ、あらゆる分野で実害が広まってくることでしょう。この実害の拡大に伴い、国民の不満は蓄積し、いよいよお上離れが進んでいくことでしょう。
一方、国民の農や食の安全に対する意識は日増しに高まってきています。その象徴として、福島の原発事故以降、政府は放射能汚染レベルの低下に伴う安全宣言をし、農産物の物流が全国的に広まっていますが、現在、食の安心・安全が消費者の期待の中心軸と考える企業あるいは飲食店・小売り業者の間では、確実に西の農産物への依存が高まっています。政府や既存マスコミがいくら安全宣言しても、消費者の間ではインターネットを通して、情報=事実は伝わっているのです。したがって、今後、輸入食品の拡大に伴う危ない食品の増加は確実に国民の間に不安をもたらしていくでしょう。
当ブログでも今年は、健康・食の安全・医療といったところを中心に、これらの事実=情報の拡大、及びその背後にいる金貸し(多国籍企業≒国際金融資本)たちの思惑と社会構造を明らかにしていきたいと思っています。また、信用できない政府・マスコミに頼らず、日本の農業の再生や健康問題や食の安全に関し、新しい認識を読者と一緒に獲得していきたいと考えています。
「新しい農のかたち」を今後ともよろしくお願いします
投稿者 staff : 2014年01月01日 TweetList
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