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2013年07月11日

【シリーズ】生態系の循環を活かした持続可能な農業の実現に向けて(5)水田作における不耕起栽培

“【シリーズ】生態系の循環を活かした持続可能な農業の実現に向けて(3)不耕起栽培の可能性 耕運の長短を知る”の記事から近年機械化された農業により土の豊かさが失われてきており、その解決策として不耕起栽培について紹介していました。そこで今回のテーマは水田作における不耕起についてなのですが、本ブログの“生態系の循環を活かした持続可能な農業”の視点から水稲の不耕起栽培について見ていきましょう。
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水田と環境とのつながり
水田は日本の農地の約54%を占める、最も面積が広い農地で、畑と違い水の出し入れがあることから川と深く関係しています。
川の全体的な水の動きを見ると、雨水が山にしみ込み、やがて谷間に集まります。その過程の中で小さな流れが大きくなって川を作ります。こうしてできた川から水田に水を引き、また排水し下流に流すことで水田は川の水系と強い繋がりがあります。
水田に水を引くことで、水生植物や微生物、昆虫の棲家になり、それを捕食する動物が現れます。これらの生物の排泄物や死骸などの有機物は微生物により分解され水田の肥料になります。
こうして食物連鎖がしっかりした生態系がある水田は特に化学肥料に頼ることなく、お米を作ることができます。
しかし、現在の慣行農法ではそれが出来ない状況になっています。
近代農法
高度経済成長期を境に効率よく利益になる仕事をして、生活を豊かにするため農村部から都市部へ労働力が移り、農村部の人手が足りなくなりました。その不足分を補うためにトラクターや田植え機などの作業が機械化され、雑草を枯らし、草取りの手間を省くため除草剤や、収量を上げるため化学肥料が作られました。
こうした近代農法は作業の省力化や効率化、増収など生産側にとって非常に利益をもたらしました。
一方で近代農法が定着したことで農薬や化学肥料に依存し、また過度の耕起と代掻きによって、土壌の団粒構造が壊れ、保水性と保肥力が落ち、地力が低下します。こういった水田では、肥料が流出しやすいため、その分肥料を増やして補わないといけなくなる悪循環に陥ってしまいます。
実際に水田の肥料や農薬が河川へ流れ、水質汚染を起こしています。例えば琵琶湖では代かき・田植え時期の排水により河川の水質汚染が起きました。その結果アユの成育に悪影響を及ぼし漁業に被害がでました。(田植えと濁り水-農業排水問題を考える)
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今後、考えられることは上記のような水の被害とお米の質の被害です。
水田の土壌で団粒構造が崩れ、保水力が下がることで雨水が一度に川に流れ込み、洪水を起こしやすくなります。また保水力が下がると保肥力も下がりお米の食味を左右するミネラルも流れやすくなりお米の質が悪くなります。
これからの農法
今までの慣行農法では農薬や化学肥料を多用したり、機械化で余計に耕したりして収量や利便性を優先し、自然本来の土や水の養分を上手く使えていませんでした。しかし、一方で慣行農法はこれまでの経済成長の中の人手が少なく、かつ国民全員が食べるだけの生産量が求められる状況下では必要な農法だったと考えられます。ただ今後の持続可能な農法として考えると自然にある土の団粒構造や動植物の有機物などを利用した農法が適してします。
そこで不耕起栽培という農法を見ていきます。これはトラクターで耕さない農法で土の団粒構造を保ち、そのため保肥力や保水力が上がります。(【シリーズ】生態系の循環を活かした持続可能な農業の実現に向けて(3)不耕起栽培の可能性耕運の長短を知る)
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不耕起栽培での水稲は、慣行農法と違い、稲刈り後の耕起や田植え前の代かきをせず、冬に田んぼに水を入れて、田植えをしやすい状態にします。不耕起栽培と慣行農法での収量の差はほとんどなく、(下表参照)耕起や代かき作業がないのでトラクターの燃料代や作業時間が削減できるので省エネ、省力化できます。
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1997年農業センターより引用
また土壌が団粒化していくことで保肥力が増し、地力が上がったり、団粒構造の適度な土の固さで、稲の根が強くなりモミが大きく育つことで食味が向上します。さらに田んぼに長い期間、水を溜めるので多様な水生生物が棲みつき、そこで豊かな生態系が生まれます。この生態系が豊かになることで動植物の死骸や排泄物など有機物が多様に供給できるので化学肥料が不必要になり、生産側の都合だけでなく生態系の保全にもつながる不耕起栽培はこれから可能性を見出せる農法ではないかと思います。
今回は水田での、前回は畑での不耕起栽培の実例でしたが、農業を行う上で非常に手間がかかり、慣行農法では除草剤に頼っている除草作業は不耕起ではどのように対処しているのかをみていきましょう。
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投稿者 ARI-HIRO : 2013年07月11日 List   

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