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2011年10月18日

農が育む新しい教育シリーズ2. ~農を通した人間教育 愛農学園高校

こんにちは。
いよいよ、農が育む新しい教育シリーズが始まりました!
プロローグに続いて、事例紹介です。
三重県の伊賀市に、40年以上の実績を持つ 日本で唯一の私立の全寮制の農業高校である愛農学園高校があります。この高校は、農を通して生活・勉強する中で、社会に出て役に立つ人間を育成しようという学校で、多くの実績を残しています。
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早速、愛農学園について見て行きます。
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■農を通した人格形成と進路実績
愛農学園高校は、いわゆるミッション系の農業高校ですが、
創設の理念の1つにある「農業者たる前に人間たれ!」
にあるように、農を通した人格形成に主眼を置き、クリスチャンに限らず受け入れ、
創立から40数年で、約1000名の卒業生を送り出し、有機農業や食品流通の分野で活躍しています。
また、最近では、全国的に、農業高校というと、積極的に農に携わりたいという子よりも、普通高校へ行けないから行く、これと言って目的がないという子が多いという残念な状況にありますが、愛農学園は、農に携わりたいという子、3年間の寮生活、農を通して成長したいという意識のある子達が集まっています。入試も面接重視で、中学時代の偏差値は、あまり重視されていないようです。
流石に、卒業してすぐの就農者は、僅かですが、進学後、農、食関係の仕事に就く生徒がほとんどです。
卒業生の進路
http://http://www.ainou.or.jp/gakuen/aikou1/11sinro.htm
実は、私も10数年前に、学校の母体である愛農会主催で、愛農学園で開催される10日間の愛農大学講座(有機農業を学ぶ短期講座)に参加したことがあります。そのとき、生徒さん達にもお世話になりましたが、みなさん、とても素直で明るく、働き者。人の役に立つことが喜びと言う素晴らしい子達ばかりだったことが印象に残っています。
そんな子達が育って行く、ポイントを見て行きたいと思います。
■みっちり一般教科と農業実習で学習。
・公立高校では、週30時間なのに対して、37時間の授業
 2年生からは、稲作、野菜、酪農などに専攻が分かれて専門的に学び、夏休みは校外実習(北海道etc.)、希望者は、卒業後1年農家実習にも行けます。
・実習で栽培した野菜などを地元JA直売所に日常的に出荷。
 卒業後は、進学する生徒が多いが、決して、詰め込み式の受験知識やテクニックを指導しているわけでなく、勉強することの意味、内容の深い理解に重点を置いています。
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■食の自給を実践することで、農や食の大切さ、有り難さを学ぶ。
・生徒数約60人という小規模の農業高校にしては、大きな規模の営農をしています。
 2008年実績で
 水稲 2ha 野菜 70a 果樹45a 畜産(牛、豚計122頭 鶏1800羽)
 もちろん、これらの日常の管理は、生徒達の手で行います。
 鶏の解体実習も行います。
 学園での食事の内、米、野菜、肉は、ほぼ100%学園産で自給。
 食べ物全体でも約70%を学園産で賄っています。
 なので、自分達が作ったものを日々食べて、評価し、また、限られた種類の材料を工夫して調理するという課題にも取り組んでいます。

「先生、怖いです」ひよこの頃から育てた鶏を押さえつけ解体。
先生「これが命を奪うということだよ」と教育…三重の農業高
http://itainews.com/archives11/cat124/4927

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■少人数の濃密な人間関係で、生き方を示す。
・生徒数は約60名(一学年約20名)、教職員役30名。
 生徒は、全寮制で、教職員も基本的に学園敷地内に住んでいます。
 言わば、先生も生徒も、寝食、仕事、勉強をともにする共同体的生活を日々を送っています。
 大人が、生きる手本を見せる場にもなっています。
・寮は男子寮と女子寮がありますが、それぞれが2~3人部屋で、必ず、異学年、例えば、
 1~3年生各1人、1年生と2年生、2年生と3年生という組み合わせになっています。
 しかも、学期毎に部屋割り、組み合わせが変えられるので、同学年の横のつながりだけでなく、先輩後輩の縦のつながり、指導、課題共有も、日常生活の段階から行われて、みんな、各メンバーの状況を把握している関係が出来ているようです。
 この縦割りは、農業実習、調理実習、各種学校行事でも同様です。
 また、生徒会、クラブ活動も普通高校と同じように行われていて、本当に、遊ぶ暇の無いくらいの忙しさと充足度です。
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また、OBとのつながりも強く、東日本大震災で被災したOB家族の移住を受け入れるなどの実績もあります。
【三重】愛農高に避難の2人、伊賀で入学式
http://www.asahi.com/edu/news/NGY201104070005.html?ref=recb
■自主管理
・寮の規則は
 朝6時起床でラジオ体操
 毎朝の朝拝
 門限18時
 携帯電話、ゲーム機等不必要な家電製品の持ち込み禁止
 男女の一対一の交際は禁止
 と聞くと、ガチガチの管理体制のようにも思えますが、
 基本的には、生徒たち自らが選ぶ棟長を中心にした自主管理で、
 ミーティングも頻繁に行われ、また、誕生会、校外実習へ旅立つ先輩の送別会、
 男子寮と女子寮のお互いの訪問会など、親和、課題共有の場が、多く設けられています。
 棟長も学期毎に交替して、できるだけ多くの生徒が経験します。
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■当事者意識の向上
・夏期生活学校
 夏休み期間を利用して、愛農学園に興味があったり、農業体験をしてみたい中学生を対象に、数日間の合宿形式のオープンスクール企画を毎年実施しています。
 この企画で、愛農学園の実際の様子を親子で体験して、受験を決めたケースも多く、募集活動としての効果が上がっています。
 そして、さらに注目すべきは、この企画は、入学して数ヶ月の1年生が主体となって企画運営していることです。4月に入学して、まだ、日が浅い1年生が、既に、次年度受験を考えている後輩候補者に対して、どうやったら充足し、学園や農の楽しさを感じてもらって、仲間になってもらえるかということを学園の当事者として考えて、進めています。
これは、受身の学習ではなく、相手を対象化して物事を実現して行くとても良い企画になっていると思います。
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・経営発表会
 年一回、各部門(稲作、野菜、etc.)毎に、生徒が、経営実績、分析を行って、発表しています。
 作物の栽培、家畜の飼養技術だけではなく、経営者の視点を持って取り組むことで、農業者としての当事者意識が高まり、社会を捉える眼も養われます。
 実際、生徒数に大きな変化は無いにも関わらず、学園の農産物の売り上げは、伸びています。
経営結果発表
http://ainougakuen2008.hamazo.tv/e1610811.html
有機農業教育の取組
http://www.eco.pref.mie.lg.jp/taisho/05/05/ainou.htm
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最後に、保護者の声です。
保護者の声
http://www5c.biglobe.ne.jp/obara/colum/colum17.html
からの引用です。

現代の風潮からすると、多くの人たちは異和感というかとても奇異な感じを受けるかも知れません。私もちょっとそういう面も考えなくはなかったのですが、実際に夏期生活学校などで体験してみると、まったくそんな心配はありませんでした。
 全校生徒70人足らずにたいして、事務や寮母や農場の人たちもふくめ先生は35人もいます。そして、みんなとても謙虚で率直で優しさがにじみでてくる、といったとても良い感じの先生方です。
 教育には育むあるいはゆっくり待つという側面とともに、修行というか、厳しさや教え込むといった側面も必要だと思います。できれば1人の先生がその両面を備えていれば良いと思います。
 さらに、それぞれの先生にはそれなりのしっかりした生き方があり、また各学校にもできることならそれなりのはっきりした教育方針があってほしいです。子どもたちはそういう明確な生き方や教育方針が示されたほうが十分にのびていくと思います。
 愛農高校は明確すぎるほどの教育方針を貫き、現代の社会の中での農業者の役割、人間としての生き方をはっきり示しています。先生方も秘められたような心の強さを感じます。また、保護者の方々も、おそらく半数近くは農業に関っていたり、その他とても堂々とした生き方を感じさせる人が多く、私たちもほんとうに学びたいと思います。

引用終わり
以上、見てくると、うまく人材が育つポイントは、
日常から、様々の行事や企画、ミーティングを通して、深い親和充足の関係がベースとして作られた上に、課題や活動の目標を共有する ということが、繰り返し行われていることが、活力や成功体験、成長実感に繋がるということではないでしょうか。
そして、ここに、さらに、社会をしっかりと捉える構造認識と追求力が加われば、より心強いものとなるのでしょう。
では、次回、シリーズ第3回をお楽しみに!!
 

投稿者 naganobu : 2011年10月18日 List   

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