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2011年10月01日

【コラム☆】~世界初のF1種をつくったのは日本人だった☆~

今回のコラムは「F1種」に纏わるお話です 😀
07200610310120061020_2.jpg 画像はイメージです
現在の農業の「種」(タネ)の主流であり、世界的にも市場農作物生産に欠かせない「種」、それが通称「F1種」
今や流通している野菜や花の種のほとんどが、このF1種です。
このF1種(一代雑種・交配種・ハイブリット種とも呼ばれる)を用いて、世界で初めてF1野菜をつくったのが、実は日本人だったって、みなさんご存知でした?
では、そのF1種をどのように日本人が作り出したのかをご紹介したいと思います
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でもちょっと、その前に。 
 
そもそもF1種ってどんなタネ?
 
一言でいうと、「異なる性質を持つタネを、人為的に掛け合せてつくった、雑種の一代目。」 ということになります。
どういうことかというと、例えば日本人同士が結婚したら当然日本人しか生まれてきません。けれども日本人と北欧人が結婚したら、スマートで色白、顔立ちの良いモデルやタレントさんのような男の子や女の子が生まれたりするでしょう。
これは植物であっても同じなのです。
明治以後、有名な「メンデルの法則」によって、雑種の一代目には両親の対立遺伝子の優性形質だけが現れ。見た目が均一にそろうことが知られるようになりました。また、系統が遠くはなれた雑種の一代目には、「雑種強勢」(ざっしゅきょうせい)という力が働いて生育が早まったり、収量が増大する事も分かりました。
この原理を応用して、人為的に雑種化してつくられたタネが「F1種」なのです。
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つまり、AとAから生まれた子供=Aの種=普通の種。であるのに対して、AとBから生まれた子供=AとBの良いところを併せ持つ種となり=それがF1種なのです。
(私たちがスイカといえば縞々のスイカをイメージしますが、昔はスイカといえば縞がないものが普通だったのです。そのスイカはおいしい反面、皮が柔らかくて痛みやすく流通には適さないものでした。私たちがイメージするスイカとは、実はF1種によって生まれたおいしくて持ち運びしやすくした、イイとこ取りのスイカだったのです。知りませんでした :blush: )
つまりF1種とは、意図的に「異種を掛け合せてつくるイイとこ取りの種」。のコトだったんですね☆。 
 
 
 
イイとこ取りの種のつくり方!
 
では、F1種はどのようにつくられるのでしょう。まずはその原理から。
 
F1種は、手法的には人為的に授粉(受精)させる「交配による品種改良」の事です。 
したがって、実験室で種の遺伝子を直接操作したり、新たに他生物の遺伝子を付け加えたりする遺伝子組み換え技術ではありません。かといって、昔ながらの長い年月をかけて交配させる品種改良法ではなく、一代の掛け合わせで短期間に目的の品種を作り出す交配技術なのです。
具体的には雌しべに、種類の異なる雄しべの花粉を受粉させます。こうして異種交配をすると、互いの良い部分を受け継いだ新しい雑種が生まれます。そして更に、このようにして生まれた雑種の一代目の種には、前述の「雑種強勢」の効果が現れます。
こうして、両方の良い所を受け継ぎ、生育が早く大きさも風味も均一で病気に強いといった、F1種が誕生するのです。
もちろん野菜たちにとっては、強引に政略結婚させられるような感じなのでしょうね☆
 
 
原理は簡単、しかし実際は難しかった雑種交配・・・ 
しかし、このように原理的には明快な交配も、実際の農作物で行うのはかなり難しかったのです。
 
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なぜならば、私たちが小学校の低学年で習うとおり、花には雌しべと雄しべがあります。
つまり、そのままにしておくと花の中で勝手に自家受粉してしまうので、目的の「雑種」ができません。したがって、まず畑いっぱいに広がる花の一つ一つが、自家受粉しないようにしなければならないのです。
それにチャレンジしたのが日本人でした。
そして、そこで用いたのが「除雄」 (じょゆう)という方法です。
 
 
日本人の手先の器用さがF1種をつくりだした! 
除雄とは、読んで字の如し。つまり、自家受粉しないように雄しべを無理やり取り除いてしまうコトです。
どのようにするかというと、受精可能になる前の「つぼみ」のとき。小さなつぼみを無理やり開き、雄しべを全部ひっこ抜いてしまうのです。こうして、雌しべだけの哀れな姿にしておき、雌しべが受精可能になった時、遠くに離れた別の品種の雄しべの花粉をとってきて、指先にくっつけて受粉させるのです
これが、一番基本的なF1種の作り方です。
これらを全て手作業でやるワケですから、手先が器用で、根気強い日本人女性にしか出来ない作業であった事は想像に難くないと思います。(実際、ヨーロッパ人やアメリカ人では手が大きすぎてうまく行かなかったようです)
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こうして、大正時代(1924年)。埼玉農業試験場が真黒茄子と巾着茄子を掛け合せて、日本人として世界で初めて「埼玉交配ナス」(埼交ナス)を誕生させました。このナスは非常に強く雑種強勢が働き、たくましく。長い期間育って、実が沢山取れると大評判を呼びました。
その成功を聞いてその後、日本各地の試験場が特産野菜のF1化に挑戦し、多くのF1種が作り出されていったのです。そして、のちに簡単で効率的な除雄の手法が見つかるまで、このF1種を作る事は「日本のお家芸」になりました。
 
F1種は、もともと日本人がその器用さをいかして作り出した「種」だったんです☆やっぱり日本人ってスゴイですね~

☆☆<F1種の豆知識>☆☆ 
F1種はなんで一代限りなの?
メンデルの法則で、第二世代は種が出来ても、雑種強勢が弱まり、その上交配前の形質と交配後の形質が一度に出現するために、強さや収穫量もバラバラで味も形も不揃いの「まるでイイとこ無しの種」になってしまうからです。
F1種は遺伝子組み換え種ではないの?
基本的には違います。技術的には人為的な受粉による異種交配なので、実験室での遺伝子組み換え操作はしません。但し、交配させる種に遺伝子組み換え種を用いれば、当然のことながらその子供は遺伝子組み換えのF1種になってしまいます。

参考:「タネが危ない」野口勲 著 リンク http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BF%E3%83%8D%E3%81%8C%E5%8D%B1%E3%81%AA%E3%81%84-%E9%87%8E%E5%8F%A3-%E5%8B%B2/dp/4532168082

投稿者 kasahara : 2011年10月01日 List   

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