シリーズ口蹄疫問題の本質に迫る! 第3回 畜産の現状 |
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2010年11月09日
「農」再生の実現基盤ってなに?~2章.日本の土地に見合った「農」を実現する可能性・基盤はあるのか?-1.日本の農業の現状分析
前回記事で、
「1961年に成立した農業基本法では、(1)経営規模の拡大、(2)効率的な食料の供給体制を作るという意味での選択的拡大、(3)生産性向上、を掲げました。それらは、機械化・化学化・装置化・大規模化・専門化・単作化(連作化)に代表される【農業近代化政策】でした。しかし、それらの政策の殆どは実現できていないし、持続性の問題をはらんでいます。」
と記述しました。
確かに、上記の目的が達成された様子はなく、日本の農業が衰退しているという感覚はありますが、実際に現状はどうなっているのかが曖昧なままです。そこで今回は、「農家は本当に儲かっていないの?」「結局大規模化は進んでいるの?」という点を主軸にデータを追いながら、新しい日本農業の基盤を模索していこうと思います。
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【日本農業の現状】
まずは、日本農業がどのように変遷してきたかを、戦後まで遡って確認しようと思います。
農業就業者数も耕地面積も減少しており、パッと見る分には農業が衰退しているというイメージと一致します。ただ、農業生産額は昭和60年以降減少しているものの、生産者数の減り方と比較すると「昭和40年代の2割程度の農業者で、より高い水準の農業生産額を維持している」と見ることもできます。それは『日本農業の生産性が上がっている』ことを意味するため、印象がガラリと変わってしまいます。
とはいえ、「食糧自給率は下がっている。それは衰退の証拠じゃないの? 」という意見もあります。確かに、日本農業衰退の論拠の一つですが、この食糧自給率という概念自体に突っ込みどころが多々あります(参考:リンク)。なので、純粋に「生産量」を見た方が現状を正確に掴めそうです。
上のグラフから、日本農業全体の生産量が増加していること、そして一人当たりの生産量は5倍程度になっていることが分かります。やっぱり生産効率は上がっているんですね。
(合わせて参照→るいネット「日本の農業に可能性あり!~生産効率は飛躍的に向上している~」)
では、肝心の農業者の方々は豊かな生活を送っているのでしょうか?
一般的には、「儲からない」と言われ続けていますが・・・。
【農業は儲からないのか?】
主業農家、販売農家、その他の方々の年間所得を比較した資料が以下の表です。
意外や意外、なんと「主業農家>農家>サラリーマン」の順になっています。特に、主業農家は農業所得だけでもサラリーマンに匹敵する所得があるようですね。農業は儲からないというイメージを覆すデータです。
その実態を見てみましょう。約200万戸の販売農家のうち、売上1000万円以上の農家は14万戸(7%)と、かなり偏った構造になっています。しかし、そのような農家が全農業生産額のうち6割を産出しており、しかも過去5年間の売上成長率は130%と、一般企業に匹敵あるいはそれ以上の成果を出しています(浅川芳裕「日本は世界5位の農業大国」より)。事実上、日本の農業の大部分を支えているのは、この1割にも満たない大規模農家なのだと言えそうです。
逆に言えば、残り9割はあまり儲かっていないのも事実です。上の表の「農業所得108万円」がその証左ですが、それは小規模農家のほとんどが『兼業農家』であるからです。専業であろうが兼業であろうが、生活の糧を得なければならないのは共通しています。ただ、農業でやっていこうとしている方々と、農外所得メインに舵を切っている方々を十把一絡げにして「儲からない」と括ってしまうことには危機感を感じます。
【大規模化の現状】
また、強い農業を実現するためにずっと言われ続けているのが「大規模化」です。政府が1961年に打ち出した「農業基本法」以降、経営耕地面積の大規模化がずっと推進されてきましたが、それから50年を経た現在はどうなっているのでしょうか?
グラフからは、少しずつではあるものの大規模化が進んでいることは分かります。しかし、半世紀も大規模化が掲げられていた割にはあまり進展していない、というのが正直なところです。しかも、増えているのが主に借入耕地であることや、農業者数の減少と合わせて考えると、農業経営を辞めたところから少しずつ吸収しているのが実態なのかと思えます。
一方で、北海道は都府県の十倍程度の経営耕地面積を持っています。これは土地条件や農業経営方針を考えれば当然でしょう。結局、この2つのグラフから言えるのは、『大規模化に成功するところは成功しているが、日本農業全体としては小規模経営がメインになる』ということです。要は農業経営の形態には向き不向きがあるということであり、一緒くたに「大規模化しかない」と主張しても現実味がないのです。50年も経ってこの状態なのだから、今後もちょっとやそっとでは欧米に対抗できるような規模にはなり得ないでしょう。
第一章で述べたように、日本農業はアジア農業と同枠であり、土地条件や精神性から言っても小規模型に収まりがちです。現に多数の小規模農業者が日本の食を支え続けてきたという事実から考えても、耕地の大規模化を唯一解とする考え方では可能性を狭めるだけです。
注意すべきは、所得状況のところで挙げた「大規模農家」という言葉は、必ずしも経営耕地面積の規模を表すものではないということです。儲かっている所はそれ相応の創意工夫をしており、決して「広い土地で省力化」のような単純な経営をしているわけではありません。他産業とは異なる特性があるのが農業という世界ですが、技術も含めた経営努力が必要であるという点では同じ土俵に立っているのです。
そう考えると、もっと日本の風土に合った農業の可能性が見えてこないでしょうか?
つまり、状況に応じた「適正規模」による多種多様な農業経営を展開することが日本農業の可能性なのです。「儲からない」「大規模化しかない」という固定観念さえ捨てれば、その実現基盤は現状にたくさん眠っていることが分かってきます。
実は、農業に関する法律もそのような多様性を認める方向に進み始めています。
そこで次回、今後の日本農業にとっての重要な基盤である法制度がどのように変わってきているかを追求していきます。
お楽しみに☆
投稿者 staff : 2010年11月09日 TweetList
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コメント
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